藤原岳の2種のフクジュソウ
シコクフクジュソウAdonis sikokuensis Nishikawa et Koji Itoを
三重県鈴鹿山系にて2カ所で記録 山脇和也
きっかけは、2013年4月17日、藤原岳でフロラの調査をしていたときT.M氏(宮崎植物研究会)から、ここのフクジュソウは普通のフクジュソウ(エダウチフクジュソウ)とは違うのではないかという指摘を受けた。これはシコクフクジュソウですよと言われた。まず、見かけが違う。葉の色が濃くつやがある。葉の裏面にはほとんど毛がない。
また、〈藤原岳の自然を守る会〉の会員でもある地元いなべ市藤原町のM.S氏や彼のグループも普通のフクジュソウ(エダウチフクジュソウ)とはちがうのではないか、シコクフクジュソウではないかという疑問を持っていたようで、M.S氏はそれをフクジュソウの研究家である元北海道教育大学の西川恒彦氏に同定に出したところ、それはシコクフクジュソウですという返事をいただいた(西川私信:2013)。
これまでフクジュソウといわれるものの生育地は、三重県では鈴鹿山系北部のいなべ市と南部の鈴鹿市、伊賀市、大台町の4カ所が知られている。
フクジュソウ属Adonis は日本に4種あり、その内2種が固有である。
エダウチフクジュソウ(フクジュソウ)Adonis ramosaは本州と北海道に分布し、染色体数が2n=32で、1本の茎に1~4個の花をつけ、萼片は花弁とほぼ等長で、托葉があり、葉の裏面と花托が有毛に対して、シコクフクジュソウは四国の高知県と九州の宮崎県と熊本県に分布し、染色体数が2n=16で葉の裏面と花托は無毛で、高知県大豊町南大王を基準産地として記載された( Nisikawa&Ito 2001)。 高知県産のものは従来、フクジュソウ[Adonis amurensis Regel et Radde]とされていた。シコクフクジュソウが日本固有種であるかどうかという点についてはさらに検討を要する(日本の固有植物:2011国立科学博物館)。 シコクフクジュソウの分布については、高知県植物誌(2009)、日本の固有植物(2011)においては本文章中では本州、四国、九州と記述されているが、日本固有植物分布図(国立科学博物館2011)では本州のどこにもプロットされておらず、高知県植物誌では、愛媛県、徳島県との県境付近4カ所がプロットされているのみであった。本州では奈良県の西吉野のものがそうである(西川私信:2014)ということであった。三重県での発見が追加されたわけである。
他の2種はミチノクフクジュソウA.multifloraと キタミフクジュソウA. amurensisであるが、ミチノクフクジュソウは日本では本州(青森、岩手、宮城、千葉、神奈川、福井、長野、岐阜)と九州(熊本、大分、宮崎、鹿児島)に分布する。1本の茎に3~8個の花をつけ、萼片は菱形で、花弁の長さの2分の1から3分の2と明らかに短い。葉の裏面は無毛。茎の断面は中空(葉鞘付近で比較)などの特徴から区別できる。キタミフクジュソウは日本では北海道の北部と東部にだけ分布する。花は茎の先に1個だけつける。葉鞘からでる茎につく葉は対生で托葉をつけない。とりわけ開花初期の充分のびていない葉の裏面には毛が密生している。いずれも染色体数は2n=16(以上2種:レッドデータプランツ2003山と渓谷社より)。神奈川県植物誌2001では、県内には1種あり、フクジュソウAdonis ramosa Franch.としてあげられているが、萼片は花弁より短いとなっているので2003のレッドデータプランツにはミチノクフクジュソウとしてあげられたのであろう。 西川氏の研究も記載されており、シコクフクジュソウは2001年に新種発表された。
さて、藤原岳のものは宮崎県のT.M氏によると葉の毛の様子が少し変だ、シコクフクジュソウの変種ぐらいに当たるのではないかというコメントがあった。それで、高知県の基準産地の長岡郡大豊町南大王の福寿草の里を訪ねた。土讃線JR豊永駅からはいる。ここでは毎年1ヶ月間フクジュソウ祭りが行われていて、今回は第26回目ということであった。現地に着くと畑や果樹園の土手(石灰岩地ではない)一面にフクジュソウが咲いていた。一見すると普通のフクジュソウ(エダウチフクジュソウ)のように見える。葉の裏の毛の様子を観察すると何もない。明らかにシコクフクジュソウである。すべてそうであった。管理人の方に聞いたら西川恒彦氏は4~5回来られて新種発表されたそうである。実生から花が咲くまで7年はかかる。地元の小学生も見学に来るそうだが、葉の裏に毛がない特徴がありここだけのものだと説明しているとのことであった。三重県の他の場所のフクジュソウの種類を調べるために京都大学総合博物館(KYO)、大阪自然史博物館(OSA)の標本庫を調査したが、ミチノクフクジュソウは存在したが、シコクフクジュソウは両館とも存在しなかった。OSAには伊賀市の標本が1枚だけあり、それはエダウチフクジュソウであった。KYOにもOSAにも1枚もシコクフクジュソウの標本がなかったので、事情を説明して福寿草の里の管理人の許可を得て数本いただき標本にしてKYOとOSAに納めた。
下の写真2枚が2014年3月5日に基準産地で撮影したシコクフクジュソウである。
三重県立博物館(MPMと仮称する)には、何とフクジュソウの標本は1枚もないということであった。三重の他の場所のフクジュソウの種類がわからないので、先日(2014.4)、フクジュソウがあるといわれている鈴鹿市へと調査に出かけた。標高700m程の所の石灰岩地に数十株のフクジュソウが生育していたが、花は終わっていたので、萼片の長さで区別はできなかったが、葉の緑の色は濃く裏面には全く毛がなかったし、集合果は大きく,果実の毛も短いようであったのでシコクフクジュソウであると判断した。後日、再度行き採取し、西川氏に送ったところ「シコクフクジュソウで良いと思います」という返事をいただいた(西川私信:2014)。 三重県で2カ所目の発見である。周りには、ミノコバイモもかなり生育していた。
さらに数日後、奈良県の西吉野産のフクジュソウはシコクフクジュソウではないかと推測し、奈良市のK.K氏に案内していただいて、現地を訪れた。一見、普通のフクジュソウ(エダウチフクジュソウ)と見かけは同じであった。ルーペでよく見ると葉裏に毛はない。シコクフクジュソウと判断した。早速、数株西川氏に送ったところ、そこのものは10年ほど前にシコクフクジュソウと認識していたということであった。
下の写真は2014年5月6日に鈴鹿市で撮影したものであり、葉裏は無毛であった。
以上より、以下のようなことを考察してみた。
1.4種のフクジュソウは一見しただけでは、ほとんど同じに見える。そのため今まではすべて同一種と考えられてきたのであろう。
2.よく観察してみると藤原岳のように両種が生育しているところがあるため、丁寧に生育地を見直して見る必要があるだろう。藤原岳の場合、同一尾根の標高1000m以上の所にはエダウチフクジュソウが、標高600-700mの所にはシコクフクジュソウが生育しているからだ。
3.三重県北部は積雪量も多く、日本海側の要素も多く含まれるが、おおむね太平洋側の要素もかなり入っている。シコクフクジュソウは九州や四国や本州の太平洋側に分布するので、そはやき系要素とは考えられないだろうか。
4.三重県の2カ所と高知県の大豊町の共通点が1つだけある。気候の違いはあるが、いずれも標高が600~700mであることから何かいえないだろうか。
5.日本固有植物分布図(国立科学博物館2011)で、奈良県南部に1カ所エダウチフクジュソウのプロットがあるが、三重県大台町(プロットはない)のフクジュソウとともに再調査してみる必要があるのではないか。
6.将来、DNA分析でもなされれば、フクジュソウのはっきりした系統がわかるかもしれない。
以下に、「レッドデータプランツ2003山と渓谷社」をもとにして表に違いをまとめてみた。
レッドデータプランツでは花、葉、集合花では写真でも比較されている。
和名 エダウチ シコク キタミ ミチノク
フクジュソウ フクジュソウ フクジュソウ フクジュソウ
学名 Adonis ramosa A.sikokuensisu A. amurensis A.multiflora
分布 北海道・本州 本州・四国・九州 北海道 本州・九州
環境省2007よりランク外 環境省VU ランクなし 環境省NT
2n=32 2n=16 2n=16 2n=16
花 萼片は花弁の長さとほぼ等しいか,または短い 萼片は花弁の長さの
花弁の裏面先端は黄色、時に淡緑褐色を帯びる 1/2~2/3、花弁の裏面 先端は赤褐色を帯びる
葉 裏面にまばらに 裏面は無毛 裏面に毛が密生 裏面は無毛
毛がある
集 大きく楕円形 小さく球形 大きく楕円形 小さく球形
合 ~球形。そう果 毛は短い ~球形。毛は長い 毛は短い
果 の毛は長い
茎断面 中実 中実 中実 中空
葉鞘付近で比較
・近県のレッドデータブックに記載されているフクジュソウについて学名を調べてみると、 Adonis amurensis と記載されているものは静岡2004、三重2005、和歌山2012改訂版。Adonis ramosaと記載されているものは環境庁2000、和歌山2001、奈良2008となっている。
和歌山県では2001ではA.ramosa、2012ではA.amurensisとしている。2008奈良ではA.ramosaとしているが、分布は北海道・本州・四国・九州 国外(朝鮮半島・サハリン・東シベリア・中国東北部)となっている。静岡県では、レッドデータプランツ2003を文献として用いているにもかかわらず、上記の学名を使用し、分布も日本全土、国外では朝鮮、中国、シベリア東部としている。これらを見ても、4種類のフクジュソウ類は区別されず学名・和名・分布など混乱していることがよくわかる。
このことから、近畿地方のフクジュソウ類はすべて再検討する必要があるのではないかと考える。因みに、平凡社の日本の野生植物Ⅱ1982では、フクジュソウ属AdonisL.の所に「日本にはフクジュソウ1種しかない」と書かれている。そして、フクジュソウAdonis amurensis Regel et Raddeの説明が書かれている。三重県の2005のRDBもこの説明に基づいている。
下の写真2枚は、藤原岳産のシコクフクジュソウを2014年3月19日に撮影したものである。
・最後に保護について
分布地が非公開の県もある。特に、数少ない貴重種となると盗掘など園芸採取されやすい。三重県の場合、いなべ市藤原岳では地元土建業者の土砂の採掘で山は荒れ、盗掘もあり、最近個体数が激減して、絶滅寸前の状態である。この場所には、他に絶滅危惧種ⅠA類(CR)が5種も存在する特異な所である。いなべ市教育長に生態系の保護の質問をすると、その回答は「太平洋セメント(株)のアセスも終わっているし、人による踏み荒らしや盗掘が目立つので、保護することは難しい」という、とんでもない回答しか返ってこなかった。シカの食害も甚だしい。保護柵を作るなり、立ち入り禁止にするなり方法はいくらでもある。この地域を、特別保護区にするか天然記念物にでも指定しないと近い将来、これらのものは確実になくなってしまう。
標本の閲覧に関して、京都大学総合博物館と大阪自然史博物館に大変お世話になりました。 ふかく感謝の意を表します。
西川氏の諸論稿など引用文献の詳細は、後日の再拙稿に記載いたします。今回は簡単な報告として掲載いたします。
三重県鈴鹿山系にて2カ所で記録 山脇和也
きっかけは、2013年4月17日、藤原岳でフロラの調査をしていたときT.M氏(宮崎植物研究会)から、ここのフクジュソウは普通のフクジュソウ(エダウチフクジュソウ)とは違うのではないかという指摘を受けた。これはシコクフクジュソウですよと言われた。まず、見かけが違う。葉の色が濃くつやがある。葉の裏面にはほとんど毛がない。
また、〈藤原岳の自然を守る会〉の会員でもある地元いなべ市藤原町のM.S氏や彼のグループも普通のフクジュソウ(エダウチフクジュソウ)とはちがうのではないか、シコクフクジュソウではないかという疑問を持っていたようで、M.S氏はそれをフクジュソウの研究家である元北海道教育大学の西川恒彦氏に同定に出したところ、それはシコクフクジュソウですという返事をいただいた(西川私信:2013)。
これまでフクジュソウといわれるものの生育地は、三重県では鈴鹿山系北部のいなべ市と南部の鈴鹿市、伊賀市、大台町の4カ所が知られている。
フクジュソウ属Adonis は日本に4種あり、その内2種が固有である。
エダウチフクジュソウ(フクジュソウ)Adonis ramosaは本州と北海道に分布し、染色体数が2n=32で、1本の茎に1~4個の花をつけ、萼片は花弁とほぼ等長で、托葉があり、葉の裏面と花托が有毛に対して、シコクフクジュソウは四国の高知県と九州の宮崎県と熊本県に分布し、染色体数が2n=16で葉の裏面と花托は無毛で、高知県大豊町南大王を基準産地として記載された( Nisikawa&Ito 2001)。 高知県産のものは従来、フクジュソウ[Adonis amurensis Regel et Radde]とされていた。シコクフクジュソウが日本固有種であるかどうかという点についてはさらに検討を要する(日本の固有植物:2011国立科学博物館)。 シコクフクジュソウの分布については、高知県植物誌(2009)、日本の固有植物(2011)においては本文章中では本州、四国、九州と記述されているが、日本固有植物分布図(国立科学博物館2011)では本州のどこにもプロットされておらず、高知県植物誌では、愛媛県、徳島県との県境付近4カ所がプロットされているのみであった。本州では奈良県の西吉野のものがそうである(西川私信:2014)ということであった。三重県での発見が追加されたわけである。
他の2種はミチノクフクジュソウA.multifloraと キタミフクジュソウA. amurensisであるが、ミチノクフクジュソウは日本では本州(青森、岩手、宮城、千葉、神奈川、福井、長野、岐阜)と九州(熊本、大分、宮崎、鹿児島)に分布する。1本の茎に3~8個の花をつけ、萼片は菱形で、花弁の長さの2分の1から3分の2と明らかに短い。葉の裏面は無毛。茎の断面は中空(葉鞘付近で比較)などの特徴から区別できる。キタミフクジュソウは日本では北海道の北部と東部にだけ分布する。花は茎の先に1個だけつける。葉鞘からでる茎につく葉は対生で托葉をつけない。とりわけ開花初期の充分のびていない葉の裏面には毛が密生している。いずれも染色体数は2n=16(以上2種:レッドデータプランツ2003山と渓谷社より)。神奈川県植物誌2001では、県内には1種あり、フクジュソウAdonis ramosa Franch.としてあげられているが、萼片は花弁より短いとなっているので2003のレッドデータプランツにはミチノクフクジュソウとしてあげられたのであろう。 西川氏の研究も記載されており、シコクフクジュソウは2001年に新種発表された。
さて、藤原岳のものは宮崎県のT.M氏によると葉の毛の様子が少し変だ、シコクフクジュソウの変種ぐらいに当たるのではないかというコメントがあった。それで、高知県の基準産地の長岡郡大豊町南大王の福寿草の里を訪ねた。土讃線JR豊永駅からはいる。ここでは毎年1ヶ月間フクジュソウ祭りが行われていて、今回は第26回目ということであった。現地に着くと畑や果樹園の土手(石灰岩地ではない)一面にフクジュソウが咲いていた。一見すると普通のフクジュソウ(エダウチフクジュソウ)のように見える。葉の裏の毛の様子を観察すると何もない。明らかにシコクフクジュソウである。すべてそうであった。管理人の方に聞いたら西川恒彦氏は4~5回来られて新種発表されたそうである。実生から花が咲くまで7年はかかる。地元の小学生も見学に来るそうだが、葉の裏に毛がない特徴がありここだけのものだと説明しているとのことであった。三重県の他の場所のフクジュソウの種類を調べるために京都大学総合博物館(KYO)、大阪自然史博物館(OSA)の標本庫を調査したが、ミチノクフクジュソウは存在したが、シコクフクジュソウは両館とも存在しなかった。OSAには伊賀市の標本が1枚だけあり、それはエダウチフクジュソウであった。KYOにもOSAにも1枚もシコクフクジュソウの標本がなかったので、事情を説明して福寿草の里の管理人の許可を得て数本いただき標本にしてKYOとOSAに納めた。
下の写真2枚が2014年3月5日に基準産地で撮影したシコクフクジュソウである。
三重県立博物館(MPMと仮称する)には、何とフクジュソウの標本は1枚もないということであった。三重の他の場所のフクジュソウの種類がわからないので、先日(2014.4)、フクジュソウがあるといわれている鈴鹿市へと調査に出かけた。標高700m程の所の石灰岩地に数十株のフクジュソウが生育していたが、花は終わっていたので、萼片の長さで区別はできなかったが、葉の緑の色は濃く裏面には全く毛がなかったし、集合果は大きく,果実の毛も短いようであったのでシコクフクジュソウであると判断した。後日、再度行き採取し、西川氏に送ったところ「シコクフクジュソウで良いと思います」という返事をいただいた(西川私信:2014)。 三重県で2カ所目の発見である。周りには、ミノコバイモもかなり生育していた。
さらに数日後、奈良県の西吉野産のフクジュソウはシコクフクジュソウではないかと推測し、奈良市のK.K氏に案内していただいて、現地を訪れた。一見、普通のフクジュソウ(エダウチフクジュソウ)と見かけは同じであった。ルーペでよく見ると葉裏に毛はない。シコクフクジュソウと判断した。早速、数株西川氏に送ったところ、そこのものは10年ほど前にシコクフクジュソウと認識していたということであった。
下の写真は2014年5月6日に鈴鹿市で撮影したものであり、葉裏は無毛であった。
以上より、以下のようなことを考察してみた。
1.4種のフクジュソウは一見しただけでは、ほとんど同じに見える。そのため今まではすべて同一種と考えられてきたのであろう。
2.よく観察してみると藤原岳のように両種が生育しているところがあるため、丁寧に生育地を見直して見る必要があるだろう。藤原岳の場合、同一尾根の標高1000m以上の所にはエダウチフクジュソウが、標高600-700mの所にはシコクフクジュソウが生育しているからだ。
3.三重県北部は積雪量も多く、日本海側の要素も多く含まれるが、おおむね太平洋側の要素もかなり入っている。シコクフクジュソウは九州や四国や本州の太平洋側に分布するので、そはやき系要素とは考えられないだろうか。
4.三重県の2カ所と高知県の大豊町の共通点が1つだけある。気候の違いはあるが、いずれも標高が600~700mであることから何かいえないだろうか。
5.日本固有植物分布図(国立科学博物館2011)で、奈良県南部に1カ所エダウチフクジュソウのプロットがあるが、三重県大台町(プロットはない)のフクジュソウとともに再調査してみる必要があるのではないか。
6.将来、DNA分析でもなされれば、フクジュソウのはっきりした系統がわかるかもしれない。
以下に、「レッドデータプランツ2003山と渓谷社」をもとにして表に違いをまとめてみた。
レッドデータプランツでは花、葉、集合花では写真でも比較されている。
和名 エダウチ シコク キタミ ミチノク
フクジュソウ フクジュソウ フクジュソウ フクジュソウ
学名 Adonis ramosa A.sikokuensisu A. amurensis A.multiflora
分布 北海道・本州 本州・四国・九州 北海道 本州・九州
環境省2007よりランク外 環境省VU ランクなし 環境省NT
2n=32 2n=16 2n=16 2n=16
花 萼片は花弁の長さとほぼ等しいか,または短い 萼片は花弁の長さの
花弁の裏面先端は黄色、時に淡緑褐色を帯びる 1/2~2/3、花弁の裏面 先端は赤褐色を帯びる
葉 裏面にまばらに 裏面は無毛 裏面に毛が密生 裏面は無毛
毛がある
集 大きく楕円形 小さく球形 大きく楕円形 小さく球形
合 ~球形。そう果 毛は短い ~球形。毛は長い 毛は短い
果 の毛は長い
茎断面 中実 中実 中実 中空
葉鞘付近で比較
・近県のレッドデータブックに記載されているフクジュソウについて学名を調べてみると、 Adonis amurensis と記載されているものは静岡2004、三重2005、和歌山2012改訂版。Adonis ramosaと記載されているものは環境庁2000、和歌山2001、奈良2008となっている。
和歌山県では2001ではA.ramosa、2012ではA.amurensisとしている。2008奈良ではA.ramosaとしているが、分布は北海道・本州・四国・九州 国外(朝鮮半島・サハリン・東シベリア・中国東北部)となっている。静岡県では、レッドデータプランツ2003を文献として用いているにもかかわらず、上記の学名を使用し、分布も日本全土、国外では朝鮮、中国、シベリア東部としている。これらを見ても、4種類のフクジュソウ類は区別されず学名・和名・分布など混乱していることがよくわかる。
このことから、近畿地方のフクジュソウ類はすべて再検討する必要があるのではないかと考える。因みに、平凡社の日本の野生植物Ⅱ1982では、フクジュソウ属AdonisL.の所に「日本にはフクジュソウ1種しかない」と書かれている。そして、フクジュソウAdonis amurensis Regel et Raddeの説明が書かれている。三重県の2005のRDBもこの説明に基づいている。
下の写真2枚は、藤原岳産のシコクフクジュソウを2014年3月19日に撮影したものである。
・最後に保護について
分布地が非公開の県もある。特に、数少ない貴重種となると盗掘など園芸採取されやすい。三重県の場合、いなべ市藤原岳では地元土建業者の土砂の採掘で山は荒れ、盗掘もあり、最近個体数が激減して、絶滅寸前の状態である。この場所には、他に絶滅危惧種ⅠA類(CR)が5種も存在する特異な所である。いなべ市教育長に生態系の保護の質問をすると、その回答は「太平洋セメント(株)のアセスも終わっているし、人による踏み荒らしや盗掘が目立つので、保護することは難しい」という、とんでもない回答しか返ってこなかった。シカの食害も甚だしい。保護柵を作るなり、立ち入り禁止にするなり方法はいくらでもある。この地域を、特別保護区にするか天然記念物にでも指定しないと近い将来、これらのものは確実になくなってしまう。
標本の閲覧に関して、京都大学総合博物館と大阪自然史博物館に大変お世話になりました。 ふかく感謝の意を表します。
西川氏の諸論稿など引用文献の詳細は、後日の再拙稿に記載いたします。今回は簡単な報告として掲載いたします。
by mamorefujiwaraMT
| 2014-08-08 12:40
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