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     藤原岳孫太尾根・三重RDB改訂版に記載された種
                             山脇和也


<はじめに> 藤原岳孫太尾根は太平洋セメントの開発からは野鳥の会の努力によりさけられたが、地元の土建業者による採石が進み、2015年までに標高500mまで西側斜面が削り取られることになっている。
それから先はまだ未定であるが、いなべ市は何らかの理由をつけて、許可をする可能性がある。
稜線の標高は600~800mなので以下の植物が大変な危機にさらされている。

CR種(10種)
 フキヤミツバ
 オオキヌタソウ
 ステゴビル(新)
 セリモドキ(新)
 シコクフクジュソウ(新)(alt600~700mに生育)
 アオスズラン(新)
 ヤセホタルサイコ(フジワラサイコ:芹沢仮称)(新)
 キンキマメザクラ
 ミノコバイモ
 チョウセンキンミズヒキ

EN種(8種)
 イチョウシダ
 ビッチュウヒカゲスゲ(新)
 イワツクバネウツギ
 ヒロハノアマナ
 イワタケソウ
 セツブンソウ
 ミスミソウ
 マルバサンキライ

VU種(12種)
 エダウチフクジュソウ(alt1000m以上に生育)  
 キクザキイチゲ
 シギンカラマツ
 ルイヨウボタン
 ヤマシャクヤク
 ヤブサンザシ
 イブキシモツケ
 ビワコエビラフジ
 ヒメフウロ
 トウゴクミツバツツジ
 イワザクラ
 アズマスゲ    
 ハシドイ   
 ツルガシワ

 以上、絶滅危惧種30種が孫太尾根の狭い地域に生育する。 CR種が10種も生育している特異な場所である。シカの食害や登山者の踏みつけにより多くの種が絶滅の危機にさらされている。一番の危機はいうまでもなく土建業者による採石であるが、この地域は是非とも特別保護区か特別地域に指定されなければならない。 しかし、地元いなべ市は全くの無関心。当の教育長は、藤原岳の自然のすばらしさを子供たちに伝えることもなく、「シカの食害や登山者の踏みつけを防ぐことは不可能だ。」という、よそごとのような回答しかしてこなかった。

 他に、孫太尾根にはイヌワシが営巣している。 また、日本で藤原岳南東部にしか生息していないカナマルマイマイという県指定の希少野生動植物種のカタツムリの仲間もいる。


 以下に孫太尾根を除いた藤原岳に生育する絶滅危惧種をあげておく。

CR種
ギョウジャニンニク、キバナノアマナ、ササバギンラン

EN種
アサダ、オヒョウ、タチハコベ、ヤマブキソウ(ホソバヤマブキソウ・セリバヤマブキを含めて)
 ヤマブキショウマ、コフウロ、マルミノウルシ、メグスリノキ、ヤマトグサ、カンボク、ホソバ
 ノアマナ、ヒロハテンナンショウ、ツクシイワヘゴ(いなべ市の低地、亀山市には群落あり)
 ヒメニラ(新)、ミヤマザクラ(新)、ミヤマチョウジザクラ(新)、サナギイチゴ(新)

VU種
エダウチフクジュソウ、アズマイチゲ、ミツバフウロ、テツカエデ、イワウチワ、サラサドウダン、タニジャコウソウ?、マネキグサ、レンプクソウ、タイミンガサ、ニシノヤマタイミンガサ、
 ムカゴツヅリ、ミヤマジュズスゲ、キヨズミオオクジャク(藤原町で記録あり)


                               2015.04.04 記











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by mamorefujiwaraMT | 2015-10-02 15:22 | 会員 各種論稿
シコクフクジュソウAdonis sikokuensis Nishikawa et Koji Ito
三重県鈴鹿山系にて2カ所で記録
                                                                                      山脇和也

 きっかけは、2013年4月17日、藤原岳でフロラの調査をしていたときT.M氏(宮崎植物研究会)から、ここのフクジュソウは普通のフクジュソウ(エダウチフクジュソウ)とは違うのではないかという指摘を受けた。これはシコクフクジュソウですよと言われた。まず、見かけが違う。葉の色が濃くつやがある。葉の裏面にはほとんど毛がない。
 また、〈藤原岳の自然を守る会〉の会員でもある地元いなべ市藤原町のM.S氏や彼のグループも普通のフクジュソウ(エダウチフクジュソウ)とはちがうのではないか、シコクフクジュソウではないかという疑問を持っていたようで、M.S氏はそれをフクジュソウの研究家である元北海道教育大学の西川恒彦氏に同定に出したところ、それはシコクフクジュソウですという返事をいただいた(西川私信:2013)。 
これまでフクジュソウといわれるものの生育地は、三重県では鈴鹿山系北部のいなべ市と南部の鈴鹿市、伊賀市、大台町の4カ所が知られている。
 フクジュソウ属Adonis は日本に4種あり、その内2種が固有である。
エダウチフクジュソウ(フクジュソウ)Adonis ramosaは本州と北海道に分布し、染色体数が2n=32で、1本の茎に1~4個の花をつけ、萼片は花弁とほぼ等長で、托葉があり、葉の裏面と花托が有毛に対して、シコクフクジュソウは四国の高知県と九州の宮崎県と熊本県に分布し、染色体数が2n=16で葉の裏面と花托は無毛で、高知県大豊町南大王を基準産地として記載された( Nisikawa&Ito 2001)。 高知県産のものは従来、フクジュソウ[Adonis amurensis Regel et Radde]とされていた。シコクフクジュソウが日本固有種であるかどうかという点についてはさらに検討を要する(日本の固有植物:2011国立科学博物館)。 シコクフクジュソウの分布については、高知県植物誌(2009)、日本の固有植物(2011)においては本文章中では本州、四国、九州と記述されているが、日本固有植物分布図(国立科学博物館2011)では本州のどこにもプロットされておらず、高知県植物誌では、愛媛県、徳島県との県境付近4カ所がプロットされているのみであった。本州では奈良県の西吉野のものがそうである(西川私信:2014)ということであった。三重県での発見が追加されたわけである。
 他の2種はミチノクフクジュソウA.multifloraと キタミフクジュソウA. amurensisであるが、ミチノクフクジュソウは日本では本州(青森、岩手、宮城、千葉、神奈川、福井、長野、岐阜)と九州(熊本、大分、宮崎、鹿児島)に分布する。1本の茎に3~8個の花をつけ、萼片は菱形で、花弁の長さの2分の1から3分の2と明らかに短い。葉の裏面は無毛。茎の断面は中空(葉鞘付近で比較)などの特徴から区別できる。キタミフクジュソウは日本では北海道の北部と東部にだけ分布する。花は茎の先に1個だけつける。葉鞘からでる茎につく葉は対生で托葉をつけない。とりわけ開花初期の充分のびていない葉の裏面には毛が密生している。いずれも染色体数は2n=16(以上2種:レッドデータプランツ2003山と渓谷社より)。神奈川県植物誌2001では、県内には1種あり、フクジュソウAdonis ramosa Franch.としてあげられているが、萼片は花弁より短いとなっているので2003のレッドデータプランツにはミチノクフクジュソウとしてあげられたのであろう。 西川氏の研究も記載されており、シコクフクジュソウは2001年に新種発表された。
 さて、藤原岳のものは宮崎県のT.M氏によると葉の毛の様子が少し変だ、シコクフクジュソウの変種ぐらいに当たるのではないかというコメントがあった。それで、高知県の基準産地の長岡郡大豊町南大王の福寿草の里を訪ねた。土讃線JR豊永駅からはいる。ここでは毎年1ヶ月間フクジュソウ祭りが行われていて、今回は第26回目ということであった。現地に着くと畑や果樹園の土手(石灰岩地ではない)一面にフクジュソウが咲いていた。一見すると普通のフクジュソウ(エダウチフクジュソウ)のように見える。葉の裏の毛の様子を観察すると何もない。明らかにシコクフクジュソウである。すべてそうであった。管理人の方に聞いたら西川恒彦氏は4~5回来られて新種発表されたそうである。実生から花が咲くまで7年はかかる。地元の小学生も見学に来るそうだが、葉の裏に毛がない特徴がありここだけのものだと説明しているとのことであった。三重県の他の場所のフクジュソウの種類を調べるために京都大学総合博物館(KYO)、大阪自然史博物館(OSA)の標本庫を調査したが、ミチノクフクジュソウは存在したが、シコクフクジュソウは両館とも存在しなかった。OSAには伊賀市の標本が1枚だけあり、それはエダウチフクジュソウであった。KYOにもOSAにも1枚もシコクフクジュソウの標本がなかったので、事情を説明して福寿草の里の管理人の許可を得て数本いただき標本にしてKYOとOSAに納めた。

下の写真2枚が2014年3月5日に基準産地で撮影したシコクフクジュソウである。
a0253180_13524176.jpga0253180_1354818.jpg

三重県立博物館(MPMと仮称する)には、何とフクジュソウの標本は1枚もないということであった。三重の他の場所のフクジュソウの種類がわからないので、先日(2014.4)、フクジュソウがあるといわれている鈴鹿市へと調査に出かけた。標高700m程の所の石灰岩地に数十株のフクジュソウが生育していたが、花は終わっていたので、萼片の長さで区別はできなかったが、葉の緑の色は濃く裏面には全く毛がなかったし、集合果は大きく,果実の毛も短いようであったのでシコクフクジュソウであると判断した。後日、再度行き採取し、西川氏に送ったところ「シコクフクジュソウで良いと思います」という返事をいただいた(西川私信:2014)。 三重県で2カ所目の発見である。周りには、ミノコバイモもかなり生育していた。 
さらに数日後、奈良県の西吉野産のフクジュソウはシコクフクジュソウではないかと推測し、奈良市のK.K氏に案内していただいて、現地を訪れた。一見、普通のフクジュソウ(エダウチフクジュソウ)と見かけは同じであった。ルーペでよく見ると葉裏に毛はない。シコクフクジュソウと判断した。早速、数株西川氏に送ったところ、そこのものは10年ほど前にシコクフクジュソウと認識していたということであった。
下の写真は2014年5月6日に鈴鹿市で撮影したものであり、葉裏は無毛であった。
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 以上より、以下のようなことを考察してみた。
1.4種のフクジュソウは一見しただけでは、ほとんど同じに見える。そのため今まではすべて同一種と考えられてきたのであろう。
2.よく観察してみると藤原岳のように両種が生育しているところがあるため、丁寧に生育地を見直して見る必要があるだろう。藤原岳の場合、同一尾根の標高1000m以上の所にはエダウチフクジュソウが、標高600-700mの所にはシコクフクジュソウが生育しているからだ。
3.三重県北部は積雪量も多く、日本海側の要素も多く含まれるが、おおむね太平洋側の要素もかなり入っている。シコクフクジュソウは九州や四国や本州の太平洋側に分布するので、そはやき系要素とは考えられないだろうか。
4.三重県の2カ所と高知県の大豊町の共通点が1つだけある。気候の違いはあるが、いずれも標高が600~700mであることから何かいえないだろうか。
5.日本固有植物分布図(国立科学博物館2011)で、奈良県南部に1カ所エダウチフクジュソウのプロットがあるが、三重県大台町(プロットはない)のフクジュソウとともに再調査してみる必要があるのではないか。
6.将来、DNA分析でもなされれば、フクジュソウのはっきりした系統がわかるかもしれない。


 以下に、「レッドデータプランツ2003山と渓谷社」をもとにして表に違いをまとめてみた。
レッドデータプランツでは花、葉、集合花では写真でも比較されている。

和名    エダウチ      シコク          キタミ       ミチノク        
       フクジュソウ    フクジュソウ      フクジュソウ    フクジュソウ
学名    Adonis ramosa  A.sikokuensisu   A. amurensis    A.multiflora
分布    北海道・本州     本州・四国・九州     北海道       本州・九州
環境省2007よりランク外    環境省VU        ランクなし      環境省NT
       2n=32      2n=16      2n=16      2n=16

花   萼片は花弁の長さとほぼ等しいか,または短い         萼片は花弁の長さの
  花弁の裏面先端は黄色、時に淡緑褐色を帯びる          1/2~2/3、花弁の裏面                                                                     先端は赤褐色を帯びる

葉    裏面にまばらに     裏面は無毛       裏面に毛が密生      裏面は無毛
     毛がある

集   大きく楕円形        小さく球形      大きく楕円形       小さく球形
合   ~球形。そう果       毛は短い      ~球形。毛は長い     毛は短い
果   の毛は長い

茎断面     中実         中実            中実           中空
葉鞘付近で比較

・近県のレッドデータブックに記載されているフクジュソウについて学名を調べてみると、 Adonis amurensis と記載されているものは静岡2004、三重2005、和歌山2012改訂版。Adonis ramosaと記載されているものは環境庁2000、和歌山2001、奈良2008となっている。
 和歌山県では2001ではA.ramosa、2012ではA.amurensisとしている。2008奈良ではA.ramosaとしているが、分布は北海道・本州・四国・九州 国外(朝鮮半島・サハリン・東シベリア・中国東北部)となっている。静岡県では、レッドデータプランツ2003を文献として用いているにもかかわらず、上記の学名を使用し、分布も日本全土、国外では朝鮮、中国、シベリア東部としている。これらを見ても、4種類のフクジュソウ類は区別されず学名・和名・分布など混乱していることがよくわかる。
このことから、近畿地方のフクジュソウ類はすべて再検討する必要があるのではないかと考える。因みに、平凡社の日本の野生植物Ⅱ1982では、フクジュソウ属AdonisL.の所に「日本にはフクジュソウ1種しかない」と書かれている。そして、フクジュソウAdonis amurensis Regel et Raddeの説明が書かれている。三重県の2005のRDBもこの説明に基づいている。

下の写真2枚は、藤原岳産のシコクフクジュソウを2014年3月19日に撮影したものである。
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・最後に保護について
分布地が非公開の県もある。特に、数少ない貴重種となると盗掘など園芸採取されやすい。三重県の場合、いなべ市藤原岳では地元土建業者の土砂の採掘で山は荒れ、盗掘もあり、最近個体数が激減して、絶滅寸前の状態である。この場所には、他に絶滅危惧種ⅠA類(CR)が5種も存在する特異な所である。いなべ市教育長に生態系の保護の質問をすると、その回答は「太平洋セメント(株)のアセスも終わっているし、人による踏み荒らしや盗掘が目立つので、保護することは難しい」という、とんでもない回答しか返ってこなかった。シカの食害も甚だしい。保護柵を作るなり、立ち入り禁止にするなり方法はいくらでもある。この地域を、特別保護区にするか天然記念物にでも指定しないと近い将来、これらのものは確実になくなってしまう。

 標本の閲覧に関して、京都大学総合博物館と大阪自然史博物館に大変お世話になりました。 ふかく感謝の意を表します。

西川氏の諸論稿など引用文献の詳細は、後日の再拙稿に記載いたします。今回は簡単な報告として掲載いたします。



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by mamorefujiwaraMT | 2014-08-08 12:40 | 会員 各種論稿
 桑名市五反田・丘陵地の植生(三重県RDB掲載の絶滅危惧種とその候補種)
                       前桑名市自然保護推進委員 M.I
                                  

 ここは桑名市大山田の西方、県道142号線から北へ100mほど入った、中部電力西変電所の南側に位置する標高約60m、約0,5haの丘陵地です。 地中浅くに不透水層(粘土層)があるためか、いつもは半乾燥状態で、低湿地性とまではいかないまでも、湿った様相を呈しています。 土壌は浅く貧弱で、常に貧栄養状態が保たれています。 このような環境下では植物遷移は進まず、それ相応のクライマックスを維持していきます。 やせた土地を好み、種間競争に負けそうな種には最適な環境といえるでしょう。 伊賀地域にも似た所が多く見られます。

かつてこの土地周辺部には同じような環境がいくつも見られたのではないかと想像しますが、土地造成・宅地開発等が進んだ現状では不明であり、この土地の植生と比較のしようもありません。 五反田のこの土地・環境・植物相は、唯一この地域に残された丘陵地帯を代表する貴重な宝物であり、保護し、維持管理をしていくに値すると考えています。 幸い?上空には高圧電線が走っていることでもあり、開発されないことを願うばかりです。

それでは以下に主な貴重種をあげます。
フモトミズナラ(三重県RDB記載候補種、成木2本・幼木数十本)、ウンヌケ(同絶滅危惧種IA類)、イシモチソウ(同絶滅危惧種Ⅱ類)、ハルリンドウ(同準絶滅危惧種)、他にイガクサやサルマメ、近くにはオミナエシやイソノキ、ズミも生育しています。 また、この地のヤマツツジは、東海丘陵地域に共通していることですが、花色の変化に富んでいます(ムラサキヤマツツジを含む)。 ちなみに、上記の中でフモトミズナラとウンヌケは東海丘陵要素植物にあげられている植物です。
なお、フモトミズナラ、ウンヌケがこの地に生育することを、それぞれ東員町の大谷勝治氏、名古屋市の吉田國二氏に紹介していただきました。
                  (三重自然誌の会会報「自然誌だより」に掲載)

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by mamorefujiwaraMT | 2013-07-12 18:53 | 会員 各種論稿
   藤原岳山頂及び孫太尾根の再開発と重要希少植物                            
                                                     会員 K.Y
 前回は、太平洋セメント藤原鉱山の開発によってか否か、イヌワシはいなくなり、一方、カナマルマイマイ、フキヤミツバなどの動植物が依然として絶滅の危機にさらされているということを書いた。 
この2月には準備工事着工、資材運搬・トンネル発破・坑道堀削などの工事が始められている。しかし、重要動植物の移植の情報は未だに全く発表されていない。藤原岳自然科学館を中心にしっかり監視しモニタリングしないと、鉱山側にはアセスでの約束を忘却されてしまう恐れがある。 一般に企業は金のかかることにはなるべく手抜きをしがちな傾向があるからだ。 とくに山頂鉱区の1009m三角点付近には、ヒメニラ、ミノコバイモ、ヒロハノアマナ、フクジュソウ、セツブンソウ、チョウセンナニワズなど重要植物の群落が存在する。そういう所が、まず、真っ先に破壊されていく。続いて、その北斜面が予定の開発により破壊され、フキヤミツバの生育地の消滅に至る。フキヤミツバについては移植を前提としているが、この3年間、全く何の試植の報告もなされていない。カナマルマイマイについても同様である。

 今回孫太尾根は、太平洋セメントによる開発を免れたが、現在、地元の土建会社が土砂を削り取っている。これも大きな問題で、ここにも重要植物が多く、水分変化によって植生などに変化をきたし、多くの三重のレッドデータブック2005に記載されている植物が絶滅の危機にさらされたり、絶滅する可能性が高い。孫太尾根は藤原岳の南端から南東に延びる標高900mから600mに延びる尾根で、重要希少植物としてはフキヤミツバ、イワザクラ、マルバサンキライ、ステゴビル、オオキヌタソウ、イワツクバネウツギ、キンキマメザクラ、イワタケソウなどがあり、ほかに藤原岳には結構普通に生育するミスミソウ、ケスハマソウ、セツブンソウ、ヒロハノアマナ、ミノコバイモ、フクジュソウ、カノツメソウなどが見られる。

 しかし、最近2008年加田勝敏(四日市市)、清水義孝(いなべ市)によって発見されたヤセホタルサイコは全国でもここだけにしか存在しないものである。ただし、加田は、2008年にミシマサイコとして近畿植物同好会会誌第35号2012に発表している。藤原鉱山環境アセスメントの報告ではホタルサイコとして記載されている。
 1964年8月の植物研究雑誌第39巻第8号には、次のような記載がなされている。一部引用すると
「三重県産ミシマサイコ属の一新種 牧野標本舘に、三重県産の他と違ったホタルサイコ類の標本が2点納められている。トカチサイコに似た所もあるが、こまかい点では異なっている。根茎は水平に伸び、茎は単立し、枝は少なく、葉は細長くて基部は半ば茎を抱き、複散形花序は貧弱で、散梗は4本のものが最も多く、極めて不等長であり、小総苞は5個あり、小さい。ホタルサイコとは可なり隔たった別種と考えられるので、新学名を与え、ヤセホタルサイコとする。Bupleurum(sect.Longiforia)quadriradiatum Kitagawa,sp.nov.」
 ところが、大場秀章は1999セリ科in Flora of Japan 2C においてヤセホタルサイコをオオホタルサイコに組み込んだが、その理由は、よくわからない。

 米倉浩司「日本維管束植物目録(2012)」の記載もこの大場の考え方に基づいているものと思われる。大場の検索表に基づくとオオホタルサイコの小花柄は6-7(-15)mm、ホタルサイコの小花柄は4-5mmとなっているが藤原岳孫太尾根の個体は小花柄が5mmに満たずホタルサイコに属してしまう。他にこの藤原産品の顕著な特徴は糸状の走出枝を出すことである。走出枝を出すものにはハクサンサイコが存在する。ホタルサイコは根茎は太く短く匍匐枝はない。小苞葉はふつう小花柄より短いとなっている。ハクサンサイコは、根茎は細長く、走出枝は糸状。小苞葉は4-5mmで小花柄より長い。となっており、藤原のものは、小苞葉は小花柄より明らかに短く、ハクサンサイコにも該当しないしオオハクサンサイコもあるがこれも小苞葉は小花柄より長いとあり該当しない。ホタルサイコにも該当しない。画像の様に、葉と花を一見すると、ミシマサイコのように思われるが葉はよく見ると平行脈ではないし、葉質もうすくて柔らかい。茎下部から糸状の走出枝を出している。走出枝から見るとハクサンサイコに極めて近いように思われるが、以上のようなことを考察すると、新種発表されたヤセホタルサイコの記載と非常に近く、ヤセホタルサイコと言う名称が一番適するのではないかと筆者は考える。ただし、個体数が極めて少なく私のもっている2枚の標本のみであるので、何ともいえないところがあるが、いずれにせよ三重県では初記録となる。
 過去のヤセホタルサイコの標本はないかと京都大学総合博物館と大阪市立自然史博物館の収蔵庫を調べたが存在を確認できなかった。首都大学東京の牧野標本館のBupleurum quadriradiatumのカバーの中に1926年7月25日(員弁郡治田村)採集の右左見直八のホロタイプ標本と1904年6月(三重郡保々村)採集の川崎のパラタイプ標本のこの2点の標本だけが納められていた。
調査を進めれば、まだまだ、藤原岳では他の貴重な植物が発見される可能性は十分ある。

 先日3月初めの藤原岳自然科学館の運営委員会の場でいなべ市教育長から「いなべ市の自然は市の大きなブランドだ」と市長が自慢しているという報告があった。いなべ市にはカナマルマイマイなども含め全国でいなべ市にだけしか存在しない生物がいる。我々藤原岳自然科学館の運営委員たちといなべ市は藤原岳の保護に関して過去にどれだけの努力を注いできただろうか。多いに反省して責任をとらなければならないと痛感している。山の破壊を招くこれ以上の開発は絶対阻止しなければならないし、同時に、荒れた登山道の整備、希少植物をシカの食害から守ることによって「花の百名山」藤原岳の自然を守ることこそが、藤原岳自然科学館・いなべ市の一番の責務である。 
Bupleurum quadriradiatum は孫太尾根上に点々と数カ所存在するが、いづれも個体は貧弱な消えそうなものばかりであった。市川正人氏をはじめ地元いなべ市や他の多くの人たちと同行し、現地の生存を確認した。

この原稿を書くにあたり、標本閲覧等でお世話になった首都大学東京の牧野標本館の村上哲明氏、京都大学総合博物館の永益英敏氏、大阪市立自然史博物館の長谷川匡弘氏、貴重な資料を提供していただいた名古屋の吉田國二氏と京都大学総合博物館の織田二郎氏に深謝の意を表する。画像を一部提供していただいたいなべ市の清水義孝氏にも感謝する。 なお、ヤセホタルサイコは、「Buleurum quadriradiatum (セリ科)の再発見」と言う題目で、日本植物分類学会第12回大会(千葉大学)において、愛知教育大学生物の芹沢俊介氏等のグループによるDNA分析も含めたポスター発表によってフジワラサイコ(芹沢仮称)という名称にて全国にアピールされた。国でも県でもこれはCRに相当するものである。

                              藤原岳自然科学館運営委員 山脇和也


図(写真)の説明 牧野標本館のHOLO TYPEの標本
第12回日本植物分類学会で芹沢グループによって発表された仮称フジワラサイコ

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by mamorefujiwaraMT | 2013-05-18 23:26 | 会員 各種論稿
   藤原鉱山およびその周辺次期原料山開発事業に係わる環境影響評価について
                                 2012.6.30 記  会員 KY
                                                       三重県鈴鹿山系の最北部に位置する石灰岩からなる藤原岳は鈴鹿国定公園内にあり、地形・地質の特殊性と多気候区の境に位置する条件をもつ。植物は、日本海要素と太平洋要素との共存が見られる地域ゆえに多様性に富む。特にフクジュソウ・セッブンソウ・キクザキイチゲ・ミスミソウ・カタクリ・ミノコバイモ・ヒロハノアマナ・マルミノウルシなどの早春植物は有名であり、「花の百名山」にもあげられ全国的にもよく知られている。
今回の環境アセスメントは藤原岳山頂鉱区と治田鉱区で行われたもので、山頂鉱区(面積約59ha)の場合、採掘50年後の将来的採掘計画は、今回の本工事が完了すると最終的に藤原岳展望丘標高1120mから500m東の地点まで採掘されることになり、同時に標高600mまで下げられる。以下、重要植物種を中心に取り上げ、環境影響評価準備書・評価書などにある問題点・疑問点を取り上げて考察してみたい。

植物の重要種選定基準(以下のⅠ~Ⅵ)
Ⅰ.「文化財保護法」に基づく天然記念物に指定されている種
Ⅱ.「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」
Ⅲ.「維管束植物レッドリスト」(環境省、平成19年)の掲載種
Ⅳ.『三重県レッドデータブック 2005「植物・キノコ編」』の掲載種(三重県 2005年)
Ⅴ.「改訂・近畿地方の保護上重要な植物-レッドデータブック近畿 2001-」(レッドデータブック近畿研究会、平成13年)
Ⅵ.「国立・国定公園特別地域内指定植物図鑑 南関東・東海・北近畿編」(環境庁 昭和58年)の鈴鹿国定公園指定植物

以上に該当する重要種は86種(環境アセスメント重要植物リスト参照)もある。
 そのうち藤原岳で特に重要と思われる種としてイチョウシダ・アサダ・オヒョウ・ミスミソウ・セツブンソウ・タキミチャルメルソウ・キンキマメザクラ・ビワコエビラフジ・コフウロ・マルミノウルシ・イワウメヅル・チョウセンナニワズ・ホタルサイコ・フキヤミツバ・イワザクラ・ハシドイ・オオキヌタソウ・マネキグサ・イワツクバネウツギ・ヒメニラ・ミノコバイモ・マルバサンキライ・ヒロハノアマナ・イワタケソウ・ヒロハノハネガヤ・シロテンマなどが生育している。このうち治田鉱区の孫太尾根でのセリ科のホタルサイコは確認できず、そこでは重要種であるミシマサイコが確認されている。記載されているチョウセンナニワズについては3月の標高600m付近の稜線で葉も花もつけているのでオニシバリの可能性もあり検討を要する。しかし、山頂鉱区の1009m三角点付近には4月中頃で花のみをつけている明らかにチョウセンナニワズと思われる個体が存在している。そこにはヒメニラ、ヒロハノアマナ、セツブンソウ、ミノコバイモなどの重要植物も集中して生育している。また、他の重要植物としてクロヒナスゲ・ステゴビルがリストにあがっていない。

① これらの中には鈴鹿山系のみならず藤原岳でも主に山頂鉱区だけに生育する種
 :ヒメニラ・コフウロ・イワウメヅル・ヒロハノハネガヤ
② 鈴鹿山系で藤原岳1カ所に限り分布し、特に山頂鉱区に個体数が集中して生育する種 :フキヤミツバ
③ 県内の他地域にも分布するが、藤原岳の石灰岩のこの鉱区に特に個体数の多い種
 :イワザクラ
④ 他地域にも分布するが個体数が特に少ない種
 :アサダ・オヒョウ
⑤ 藤原岳特有の植物でこの鉱区に特に集中してみられる種 
:マルミノウルシ・ミノコバイモ・ヒロハノアマナ・タキミチャルメルソウ・ハシドイ

今回の環境影響評価書を読んで
【論点】
1.下記の3つの視点・観点から改めて今回の事業を検討する必要がある。
 サスティナビリティ:持続可能な開発の視点
 デバシティ:生物多様性(種・遺伝子・生態系)の維持という視点
 再生可能な自然の保護・保全という観点
2.「想定外」は科学にはあり得ない。想定内とは仮説通りの実験結果が得られたことであり、想定外とは仮説に誤りがあることを示している。よって採掘は挿し木や移植した結果が成功してから始めるべきであろう。埼玉県秩父市の武甲山および藤原岳の現状は目に余るものがあり、これを復帰・回復の実証をしたうえで新たな事業に取りかかるべきである。 ただし、生態系にはわからない点も多く、「試行錯誤」はありうるが、採掘の結果として取り返しのつかないことになってはいけない。見通しを立てることが必要であるが、その点に関して評価書を読んでも全く見通しが立っていない。武甲山採掘の結果や藤原鉱山採掘80年の結果はよい例である。
3.生育地が消失する場合、その生育地の標本を植物の場合はさく葉標本として残し県立博物館に納めないといけない。

【問題点・疑問点】
① 挿し木・取り木・移植・組織培養について
アサダ・フキヤミツバについては、挿し木・取り木・移植・組織培養種となっている。種の多様性の観点と同時に遺伝子の多様性の維持が必要。評価書では組織培養には「自信がある」と記されている(組織培養の功罪.同一種内にも遺伝子の多様性がある.よって組織培養に伴う種の単純化が心配される.愛知県では組織培養して作ったある種の個体が異常増殖して後に駆除した例がある)。
② 生態系の多様性の維持の観点:動植物の保全の基本は、生息環境の保全であり、個体の保護ではない(狭い地域それぞれについて、微気候、特異な環境の中でそれぞれに成立した生態系である.フキヤミツバは山頂鉱区のごく狭い地域にしか生育していない.はたして移植は可能なのか?)。
③ 種の保護をするには環境の保全が必要。その他、採掘に当たっては現地での移植や橎種はもちろんのこと、同時に生育維持可能なしかるべき施設で育てていくことも必要である。
④ また、評価書には「事業活動による山頂鉱区周辺の山地の植物相への影響は小さいものと予想される」とあるが、重要種の移植等が、事業期間50年の中で、採掘と同時並行でなされるとすれば、いかにも対症療法的であり、種の保存・維持にとって危険である。移植地は近くとはいえ生育地は確実に消失するため事前の実験実証が必要である。
⑤ モニター期間について:採掘期間50年間であるのに対して、評価書では10年後までのモニターしか設定されていない。評価書では事業開始から25年前後に特に貴重種の多いクマシデ-ミズキ群落が採掘されるが、モニター期間の設定はこれでよいのか。評価書からは移植は採掘と同時進行とも読み取れ、おおいに問題が残るところである。
⑥ イヌワシ・クマタカについてその回避・低減:採餌場として林間にシカ防護柵を設置したギャップを設けると計画しているが植物遷移の進行を持続的に維持・管理していくことは可能なのか。これについても事前の実験実証が必要である。また、どのような重要植物があるかも調査しなければならないが、さらに大切なことは生態系がそのことによりさらに破壊されるということである。
⑦ カナマルマイマイについて:国内で三重県藤原岳南東部の採掘地域だけにしか生息しない(三重県特産)、動かしても触れてもいけない三重県指定希少野生動植物種20種(三重県自然環境保全条例指定種)であるがこれをいかに解除するか?
 環境評価委員会において専門の立場からはっきりと「移植は不可能、生息区域内の実態をまず知る必要がある」という説明があった。準備書にも「詳しい生態はよくわかっていない」とあったように特異な環境に生息するカナマルマイマイは移植不可能と思われる。
 また、事業者側は「種の保存のため」と称して準備書にも評価書にも生息ポイントは明示せず隠したかたちにしているが、実はこの山頂鉱区に生息が集中しているのである。
⑧ 評価書(作成:事業主)は事業を進める立場での内容だが、生物にとって環境条件の悪い所に長年月を経て成立した藤原岳の生態系を維持するためには、開発を縮小するか大幅な変更してもらう必要があると思われる。

最後に:以上のような考察から筆者らはさらに1年から数年の再調査を要望したが、評価準備書に対する知事意見が出され、開発にはいろいろな厳しい条件がつけられてはいるが承認された形となった。 あとは、評価書に記載されているように事業者側がきちんと行うのか、我々も県も監視をしていくことが重要である。
さらに気になることが2つある。1つは近年豪雨などによる土砂崩れにより山は荒れ、フクジュソウの群落などが激減しているが、山頂鉱区周辺より崩れ落ちる土石流が自然破壊とともに下の大貝戸集落を直撃しているという点である。もう1つは、さらに山頂鉱区の開発が進めば、これでは孫太尾根で営巣しているイヌワシに大きな影響を与えることになるのではないかということである。つい先日(2012年3月末)、開発が延期された治田鉱区の孫太尾根(標高834m)に登ったが、発破の音と工事のダンプの走る音が頻繁に聞こえてきたからである。
                                                                                           以上

 《参考》
藤原鉱山およびその周辺次期原料山開発事業に係わる環境影響評価準備書(太平洋セメント:東京都港区)に対する知事意見
(総括的事項)
1.事業実施区域となる藤原岳は、石灰岩地特有の動植物が存在し、いなべ市においても誇るべき自然と位置づけられていることから、事業の実施にあたっては、十分な環境配慮を行うこと。
2.治田鉱区の事業の延期により、自然環境への影響が回避されたことは、環境保全の上で十分評価できる。山頂鉱区の事業の実施にあたっては、環境負荷の低減となる最新の技術、工法等を積極的に採用するとともに、新しい知見が得られた場合には、この知見に基づく環境保全措置を検討すること。
3.天然記念物であるイヌワシ、三重県指定希少野生動植物種のカナマルマイマイ及び希少な動植物の環境保全措置については、その効果が不明確であるため、有識者の意見を幅広く聞くとともに、事後調査結果の検証を行い、十分な環境保全措置を図ること。
4.事業計画の期間が50年と長いことから、この間に、三重レッドデータブック等の重要な種の選定に用いた文献が更新された場合には、有識者に意見を聞き、関係機関と協議したうえで、必要に応じて環境保全措置を図ること。

(個別的事項)6のみ抜粋
6.植物、動物、生態系        
(1)植物の移植にあたっては、石灰岩地で成功した事例や文献等を調査し、事前に十分な試行を行ったうえで適地に移植し、移植後も生育状況の確認を事後調査で行うこと。(誰が行うのか?)
(2)植物の移植は移植先の環境に大きく左右されることから、移植候補エリアの環境調査を移植前に行い、移植を行う植物の生育条件に適した場所に移植を行うこと。また、移植先の既存の植生に対する二次的な影響についても考慮すること。
(3)植物の重要な種の移植を行う株数についても、評価書に記載すること。
(4)住民意見等において、準備書に記載されていない動植物の重要種の確認の報告があることから、その報告について確認し、必要に応じて環境保全措置を行うこと。
(5)採掘後に行われるツゲによる緑化にあたっては、生育状況を確認し、十分な管理のもとに行うこと。
(6)供用開始時までに、適切な調査箇所でマレーズトラップ法及びフィット法による昆虫類の調査、予測及び評価を行い、必要に応じて環境保全措置を行うこと。
(7)陸産貝類の調査結果について、ヒメビロウドマイマイは過去の文献に生息の記録がなく、また、フトキセルガイモドキはキセルガイモドキと、オクガタギセルはハゲギセルとの誤同定、混同が疑われるため、有識者の意見を聞いたうえで、評価書に正確な記載をすること。
(8)陸産貝類については、狭い範囲でかつ陸産貝類相の多様性が低いと考えられている養老山地の標高の低い調査地点における調査結果と比較しても、発見された種数は少なく、かつ未同定種が多いことから、調査の時期、調査範囲、調査に費やした人数・日数、調査の手法及び参考文献についても評価書に詳細に記載すること。
(9)カナマルマイマイについては、その生態的な基礎情報が明らかではなく、これまで実際に行われた移植の研究事例もない。また、移植先への影響については、人為的な個体群の移入が元々のカナマルマイマイの個体群、他の陸産貝類相などへ多大な影響を与えることや、移動能力の少ない陸産貝類は個体群ごとに独特の分化を遂げている可能性が高く、遺伝子を攪乱することが考えられる。したがって、移植はきわめて困難であると考えられることから、移植を前提とせず、可能な限り、事業の影響を回避・低減する方法を検討すること。
(10)イヌワシの採餌環境の創出のために林冠ギャップの施工を予定しているが、その効果は現在不明確であり、施工場所に生育する動植物への影響も懸念されることから、ギャップを試験的に施工し、その効果を確認してから行うこと。
 なお、林冠ギャップの施工を行う場合には、施工前にギャップの施工箇所の動植物に対する調査、予測及び評価を行い、必要に応じて環境保全措置を行うこと。
(11)イヌワシ・クマタカについては、事業実施期間中は継続して、事後調査を行い、繁殖への影響の有無や林冠ギャップの効果の判断を行うにあたっては慎重に行うこと。
(12)事業実施区域にはカモシカ特別保護区が含まれており、カモシカの糞塊も確認されていることから、事業の実施にあたっては、三重県及びいなべ市の教育委員会と協議のうえ、保護・保全に努めること。


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by mamorefujiwaraMT | 2012-08-10 13:07 | 会員 各種論稿
《私の論点、疑問点》    今回の評価書を読んで
                                 2012.03.07  (会員 M,I)

論点

* 地形・地質の特殊性や多気候区の境で植物は多様性に富む。 特に早春植物は有名である。
* 藤原岳は鈴鹿国定公園内にあり、鈴鹿マウンテンの一つである。 また、花の百名山・新花の百名山(田中澄江 随筆)、日本の300名山(日本山岳会)、関西百名山(山と渓谷社)として全国的に有名である。 特に早春植物については種類数・個体数ともに豊富である。 
また本鉱区の採掘域には注目すべき種としてアサダ、オヒョウ、フキヤミツバ、ヒメニラ、イワザクラ、コフウロ、イワウメズル、チョウセンナニワズなど(環境アセスメント重要植物リスト参照)が生育し、
① これらの中には鈴鹿山系のみならず藤原岳でもこの山頂鉱区だけに生育するもの:アサダ、ヒメニラ、コフウロ、イワウメズル、チョウセンナニワズ 
② 鈴鹿山系で藤原岳に限り分布(1カ所)し、特にこの鉱区に個体数が多く生育するもの:フキヤミツバ 
③ 県内の他地域にも生育するが、鈴鹿山系では藤原岳だけに生育し、この鉱区に特に個体数の多いもの:イワザクラ 
④ 他地域にも生育するが個体数が特に少ないもの:オヒョウ 
⑤ ①②③④を含めて、採掘に伴う環境の変化により影響を受ける貴重種は計62種にのぼる(環境アセスメント重要植物リスト参照)。
* 山頂鉱区採掘後(50年後)の将来的採掘計画(今回の本工事が完了すると、最終的に藤原岳展望丘から500m東の地点まで採掘されることになり、同時に高さは標高600mまで下げられる)を県民は具体的に把握しているだろうか?
* 下記の各視点・観点から改めて今回の事業を検討しなおす必要がある。
  公益的機能……緑の価値はお金に換算できない(あえてお金に換算すると?)
  サスティナビリティ-----持続可能な開発の視点
  デバシティ------生物多様性(種・遺伝子・生態系)の維持という視点
  再生可能な自然の保護・保全という観点
* 「想定外」は科学にはありえない。 想定内とは仮説通りの実験結果が得られたことであり、想定外とは仮説に誤りがあることを指している。 よって採掘は挿し木や移植した結果が成功してから始めるべきであろう。 武甲山・藤原岳の現状は目に余るものがあり、これを復帰・回復の実証をしたうえで新たな事業にかかるべきである。  ただし、生態系にはわからない点も多く「試行錯誤」はありうるが、採掘の結果として取り返しのつかないことになってはいけない。見通しを立てることが必要である。 埼玉県武甲山採掘の結果や藤原岳採掘80年の結果はよい例である。
* 植物腊葉標本を残す(生育地域が消失する場合、その生育地の標本)。 最終的には県立博物館へ納めるべきであろう。


疑問点

* 挿し木、取り木、移植、組織培養についての疑問点。
① 種の多様性の観点と同時に遺伝子の多様性の維持が必要。 評価書では組織培養には「自信がある」と記されている(組織培養の功罪。 同一種内にも遺伝子の多様性がある。 よって組織培養に伴う種の遺伝子の単純化が心配される)。
② 生態系の多様性の維持の観点(狭い地域それぞれについて、微気候、微妙な環境の中でそれぞれに成立した生態系である。
③ 種の保護をするには環境の保全が必要。 その他、採掘に当たっては現地での移植や播種はもちろんのこと、同時に生育維持可能なしかるべき施設で育てていくことも必要である。
④ 評価書の(2)土地または工作物の存在および供用(事業活動による影響) ②予測結果(a)植物相等の変化の程度について 『事業の実施により、稜線部や斜面の草地や樹林は、段階的に伐採、改変され減少する。 しかし-----------重要種は移植等により保全を図る計画である。 また、-----------採集残壁の犬走りには在来種を基本として緑化、植栽し、樹林環境の復元に努める計画である。 以上のことから、事業活動による山頂鉱区周辺の山地の植物相への影響は小さいものと予想される。』とあるが、重要種の移植等が、事業期間50年の中で、採掘と同時並行的になされるとすれば、いかにも対症療法的であり、種の保存・維持にとって危険である。 移植地は近くとはいえ生育地は確実に消失するため事前の実験実証が必要である。
* モニター期間について: 採掘期間50年間であるのに対して、評価書では10年後までのモニターしか設定されていないことについての疑問点。 評価書では事業開始から25年前後に特に貴重種の多いクマシデ-ミズキ群落が採掘されるが、モニター期間の設定はこれで良いのか。 ましてや評価書からは移植は採掘と同時進行とも読み取れ、おおいに疑問である。
* イヌワシ、クマタカについてその回避・低減: 採餌場として林間にシカ防護柵を設置したギャップを設けると計画しているが植物遷移の進行を持続的に維持・管理していくことは可能なのか。 柵にウサギの入れる隙間はあるのか。
* カナマルマイマイについて: 国内で採掘地域だけに生息する三重県指定希少野生動植物(三重県自然環境保全条例指定種)であるが、これをいかに解除するか?
* 評価書には治田鉱区の事業は当面延期(イヌワシ生息域による回避?)とあるが今後の計画を把握しているか?
* 評価書(作成:事業主)は事業を進める立場での内容だが、当方は生物にとって環境条件の悪い所に長年月を経て成立した藤原岳の生態系を維持するためには開発をしてはならないという立場である。
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by mamorefujiwaraMT | 2012-03-07 14:20 | 会員 各種論稿