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              ヤマビル 雑記

          見下して蛭をさげすむことは易し  山口誓子
                                 藤原昧々  2008.06.30(記)

はじめに
 いわゆる血吸いビルと人間とのつきあいは、人類文明の変遷興隆とともに何千年もの間につちかわれてきた長い歴史をもつ。 たしかに、「ヒルみたいな」という言葉は、今も昔も「しつこくまとわりつく」、「たかって他人を食いものにする」、「強欲な高利貸し」といった最低のイメージをもつ「魅力ある」形容語であることは洋の東西をとわず否定できない。 しかし、ヒルはそのひとつの語源が「お医者さん」であるように、人間の肩こり、うっ血、腫れ物などの治療に欠かせない有益生物として採集、飼育され、大事に扱われてきた歴史ももっている。 日本でも事情は同様であり、医療用生物として瀉血用にさかんに用いられてきており、近世まで、山間部では雑貨屋で売られ、町なかでもヒル売りの行商人がいて俳句にも登場している。  
 そうした、医療用に用いられたヒルの歴史がある一方で、いま話題の困ったヤマビルの存在があり、その被害は最近ほとんど全国にわたり、かなり広範かつ深刻なものになってきた。
 その原因は、里山の荒廃、野生動物の増加と進出、地球の温暖化などによるといわれている。   
ヤマビルに関する知識、情報はネットなどをつうじて今は多方面から豊富な収集が可能である。 ご承知の方も多くおられるとおり、ネットのホームページ、ヤマビル研究会(以下、ヒル研さんと略称)の情報は圧倒的に多彩、豊富で、ヒルに関心のある方はまずそのページをご覧いただけるといいだろう。 ふつうはこれで十分になっとくし満腹なされるはずだ。
 私はこれまで、そういったネット上の巨大な情報世界にまったく疎く、井の中の蛙のまま図鑑類や実地試験をつうじて知識の蓄積につとめてきたひとりだったが、今度、同研究会の記事を拝見して、これまでの自分のうすっぺらな知見などあわれ木っ端微塵に吹き飛ぶのを痛感した。 
 そこで、私の駄文が屋上屋を重ねる愚に陥らないか、まことに心落着かぬ次第だ。

 とはいえ、「ぬめぬめ、ぐねぐね」して、ちっちゃいくせに、血なまぐさくて凶猛であり人騒がせなヒルはやはりこだわってしまう動物だ。  ヒル様は、ハイカー、登山者、生物・植物愛好者や研究者たちのつねに忌み愛してやまぬ、興奮をよぶ話題の提供者にまちがいなく、ヒルを語るそれら善男善女の方々は国境をこえ皆がみな表情が若返り生き生きするようだ。 私としても、そのような楽しい談論の輪にもぐりこまないわけにはいかない。 超然としてはおられない。   
 そこで、同研究会の記事をいろいろ参考、借用させていただきながらも、私なりに今回勉強してまとめた、あるいは脱線した、さまざまな山のヒル情報を報告させていただきたい。
                   (拙文中、誤りについては忌憚ないご教示を乞います。)

ヒル類 とは
環形動物門(ミミズの仲間)、ヒル綱(または亜綱)Hirudinea の動物。
科の系統、分類は再検討を要するとされ、種数や特徴もそれによって動くので深くはふれない。 海中、淡水、陸上に生息。  水中の有機堆積物や水生の無脊椎動物を食べたり、魚から人間までをふくむ脊椎動物の体や口腔内に寄生して養分をえる。
ふつう体の前端(口周辺)と後端(肛門の下側)に吸盤をもち、吸盤を離したり接着して上下に動き尺取虫のように移動する。
ふつう34体節からなり、剛毛、疣足はない。 皮膚呼吸をし、心臓は2個ある。
ふつう雌雄同体で、腹面に雌雄の生殖孔を開く。
体の前方に光の強弱を感じるセンサーである眼点をいくつかもつ。 
各国で、湖沼の消滅、乾燥化や公害のために分布域と生息数は激減しており、今日、西欧では医療用ヒルの保護と飼育への取り組みは活発である。
各種のヒルが何千年も前から医療用に利用されてきた。 一方、そのような吸血性ヒル以外の大部分のヒルは歯がなく、ミミズなどの無脊椎小動物を丸呑みして養分をえる。

ヒルの各種 
 ヒルといっても多士済々。 毛虫と同じで、ヒトに害悪をあたえるものばかりとは限らない。 詳しくは先ほどのネットの説明などを見ていただきたいが、ただちょっと、2種にだけはふれておく。 

 かつて河川や田んぼ、湖沼に多くいたチスイビル(ヒル綱ヒルド科)Hirudo nipponica は、農薬のために現在は激減している。 体長約8cm。背面の体色は緑灰色、縦に5本の黄色の線が走る。内面の側盲嚢は膨張し体重の十倍の血液を一時保蓄できる。
瀉血用としてヒルに血を吸わせる治療にも使われた。 吸血すると4~5ヶ月間は絶食できる。つまり年に2~3回血を吸えば楽にくらしてゆけるしくみ。
口、鼻、耳、肛門、性器、まれに眼球など、人体の開口部に侵入してくることもある。 数や部位によっては、ヒルの膨張による気道の閉塞や出血など危険であり注意を要する。                                           
 一方、山里、庭や公園で、顔の側面がえらのようにはりだした扁平な大型のヒルをよく見かける。 これはミミズなどを食べるコウガイビルで、人畜の吸血はせず、ヒルといってもまったく別類(扁形動物門)の動物だ。 女性がむかし髪飾り用に髷に挿した櫛の笄(こうがい)にその横張りが似ていることからついた名である。

ヤマビル  
環形動物門 ヒル綱 顎ビル目 ヤマビル科
学名 Haemadipsa zeylanica var. japonica
鈴鹿山系ほか日本の山で今問題になっている種

特徴 (ヤマビル)
体は紡錘形、円柱状で、体色は帯黄赤褐色。 背面に多数の小さいイボ状の突起をもち、3本の黒っぽい縦すじがはしる。
口には管状器官である吻(ふん)がなく、前吸盤の奥にY字形の3個のノコギリ状の顎があり、それぞれに細かい歯が90個近くある。 ヤマビルは呼気、体温、振動を感じて移動、接近し、この歯を前後に移動して吸着した動物の皮膚を裂き破り、血管に傷をつけて血液を吸う。 だから例えば、蚊が針を刺して吸血する仕方などとはまるきり方法が異なる。 刺すのではなく、噛みちぎるのである。 
単眼は5対、つまり10個あり、明暗の判断をしている。
また頭部にはセンサーがあって、熱、風、二酸化炭素などを感知する。

 ヒルジンという抗血液凝結成分を唾液からだす。 このため、吸血後もしばらく出血がとまらないし、入浴時にまた出血することがある。 ただ、出血の量は問題にならない。
ヒルジンには痛みをとめる麻酔成分もあり、噛まれた時も、吸血中にも痛みがなく気がつかないことが多い。
* 蚊やアブはあわただしく用を済ますが、ヒルはじっくり吸血できる進化したしくみをもっている。
* たしかに登山中、夢中になっていると気がつかないが、実際の経験では、咬まれた瞬間には軽い痛みが       あり、その時点で点検して処置すると被害は軽微ですむ。

 体重の10~20倍の血を吸血するが、それは、体内に摂取した血液のうち不要な水分を吸血中に体外へと滲出させ、必要な養分だけを内部に留保する機能もあずかって可能だという。
 ヒルの消化管には、寄生した動物からのバクテリア、ウィルス、寄生生物などが長期に生きていて、吸血の際などに吐出すると人間に移される可能性はあるかもしれない。 ただ、ヒルの媒介による注目すべき感染については例はみられないとの論もある。

生息地・条件
 「南日本(今では北海道、四国をのぞくほとんど全国各地)の湿気の多い山林(今では、哺乳動物が立ち寄る、都心部をのぞく住宅地の草地でも)の樹間や落ち葉の間にすみ、哺乳類やヒトの血液を吸う。 本種の存在によって山林での野生の哺乳類の棲息が逆に推測される。」 以上が、15年前の或る動物図鑑の内容であり、括弧内の訂正は筆写の記述であり、これをみても現今のヤマビルの拡散ぶりは甚だしい。
 私たちの経験では、山中で平均的に散在して生息していることはなく、生息数の多少は場所によって極端に偏る。 1匹(頭、が正しいか)いたら周辺にはおびただしくいると判断して、すばやくその場を去る努力をしよう。 とはいえ滝の高まきなどで進退きわまっているときに襲われたりすると、これこそ「泣き面に蛭」である。
 ヒル研さんの報告では、ヤマビルは水中に2~3日は楽に生息する。 我が家でも知らずに衣類とともに洗濯機で洗ったのが一ヶ月後にも生きていたことがある。
水に強いわけで、落ち葉や土砂などと共に雨に流されてその生息範囲を広げる。 鈴鹿の登山道でも、道を雨水が横切り寸断するような箇所の両側にヒルが多いのもそのせいであろう。 駆け足で通過しょう。
 最適気温は20~25°Cで、低温には強く、酷暑に弱い。  ヒル研さんの実験では、-5°Cで3時間は生息。一方、35°Cでは24時間で全滅したという。 酷暑の続いたいつぞやの夏に、ヒルが鈴鹿の山からすっかり姿を消したのもそういうことだったのだ。
近年、山の落ち葉の分解が進まず、土壌の乾燥化とあいまってか、キノコの発生が驚異的に減っている(キノコ同好会での感想)。 落ち葉の堆積によって冬期の地表への日射が妨げられ、ますますヤマビルは越冬環境がよくなっているという。 里山の落ち葉掻きがヒルの発生を抑えるという。 里山の荒廃もヒル増加の一因だ。  (以上、ヒル研さんより)
 哺乳類、とくにシカの足にしっかり喰らいつき、シカの移動にともなって確実に生息域を広げている。 里山から人里へとシカが侵入してくるとヒルも身近な生活圏に殖えてくることになる。

シカ増加の影響
 シカの増加、進出によるヤマビル被害の増大は看過できない深刻な問題になりつつある。
筆者の居住地にちかい鈴鹿山系のヤマビルは1990年ころ以前は、北部山岳地の石灰岩質の山には居ても、それより南部に位置する花崗岩質などの御在所山、鎌ヶ岳以南の山では出ない、とされていた。 また北部の山でも、標高が700mあたり以上になると見られなくなるとされてきた。 ところが、現在はそうとはまったく言えなくなり、南部の山系にもいるし標高が高くても現れる場合がある。 御池岳でもヤマビルの生息は標高790mの長命水あたりまでであったが、今は標高1200mの奥の平あたりでも、ササ(イワヒメワラビに変じつつある)が踏み荒らされているところでは猛烈なヤマビルにとりつかれることがある。 イノシシやシカなど、哺乳動物によって運ばれているのである。
 これまたヒル研さんの各種記事が詳細でとても参考になったが、その教示によると、吸血したヤマビルの血液をDNA鑑定すると、シカ、カモシカ、サル、ウサギなどの血液が多くみられ、特にシカが著しく多いという。  ヤマビルはシカの蹄の間の柔かい肉を好んで吸血するが、繰りかえして吸血されるとシカのその肉部には穴があき、いっそう住みつきやすくなったヒルはその穴を拠点にして自由、安全に吸血と生息範囲の移動、拡大を図ることができるという。 シカの足にできるこの穴はしだいに固くなってコブ状になり、それは「有穴腫瘤」と呼ばれる。 かなりの数のシカに有穴腫瘤がみられ、そこで半寄性状態となるヤマビルはシカとともに、その生息範囲を広げてゆく。 シカから落ちても、シカの行動範囲なのでまたシカにとり付くことが可能である、という。 (千葉、房総半島、浅田氏ら、1995年)

被害と対策
 私がヒルに喰われた最初の体験は、休憩中に足に違和感をもち、靴を脱いでみたときだった。
太く丸まったヒルがこぼれ落ち、白地の靴下の3分の1ほどが血で赤く染まっていて、これなんや!と驚いた。その日の晩、風呂で再度出血した。 その後しだいにやられる機会は減っていったが、やはり神出鬼没であり、思わぬうちに思わぬ部位に侵入され狼狽することがある。 
 被害がこと他人、しかも親しい人やベテランに発生し、その「あーっ」とか「きゃー」とかの悲鳴、絶叫を耳にするときほど、同情をつくろいながら内心からこみあげる抑えがたい喜びと優越感はないと告白する友人もいる。他人のヒル被害は自分の幸せであり、ヒルほど微笑ましい動物はいないらしい。

 ヒル忌避材の実験のために私などもヒルの収集をさかんにやった口だが、万全の準備をおこたりなく済まして出陣したはずが、戻ってから点検すると、長靴のなかや首筋にいくつかたかられていて震撼したことは何度もあり、ヒルとの攻防はさほどに奥が深いと感心する。
 対策法になるが、人間の暮しと旅行があるかぎりヒル対策は世界中の関心事であり、真偽とりまぜ星の数ほどの情報が地球上にとびかっている。 いずれも完璧な防御法はないとなげいている。 おちつくところは、平凡な対処法になってしまう。 地球や自然は人間の独占物ではなく、ヒルにはヒルの言い分があるのだから折りあって我慢するしかない。

 さて、居そうな場所を知ることが第一だが、それは徐々に身につくとして、まずは準備である。
対処法だが、一長一短、人それぞれの価値観、考えかたもありこれがベストとは一概にいえない。 まずは先輩、ベテランの方々の経験と叡智に学ぼう、そして同時に新しい知見をも試み採用する柔軟さがほしい。

忌避物質を考える  多士済々だ
 専門の忌避剤が開発、商品化され販売されている。 そちらはネットでゆっくりご覧になられてじゅうぶんに検討しご活用なさってください。
それらとは関連したり離れたりしたところでの、私の経験と感想を以下に。 

 木炭酢、竹炭酢は、ネットによると非常に有効だという人がいるが、私の実験ではそうでもなく、近辺のヤマビルにはあまり効果はないようだった。 炭焼きの歴史が長かった鈴鹿山系のヤマビルには木酢に順応するDNAが備わっているのだろうか。 マサカ。

 2002年6月?日の朝日新聞夕刊に、カフェインの成分がヤマビルに絶大な殺虫効果があるというアメリカの研究報告の記事が載っており、さっそく長距離運転手さんが愛用するという強力カフェイン剤を2種類購入してそれらを砕き濃厚な液にしたものを長靴に塗布して実験してみたが、驚いたことにこれは連中まったく平気の平左だった。 私の実験のどこが誤っていたのかいまだにわからない。 

 よく知られるとおり、サロンパス、ハッカ油は、忌避効果が確実にある。 ヒルは頭部先端を靴の塗布面に当ててみては引き、また当ててみては引きを5回以上は繰り返したのち他方に移動した。 嫌なのだ。 ハッカ油は値段も安くかさばらず、たしかにおすすめだ。 とくにヤマビルより被害の症状が激甚であるブユ(ブヨ、ブト)対策には効果があり、釣り、キャンプ、沢遊びなどには非常に役立ち欠かせないだろう。   
 こうした強い匂い系の忌避剤にメンソレタームのラブがあり、沢歩きの際に地下足袋の周囲に塗りつけて効果をあげている先輩がおられる。 この先輩は独歩、独自の登山スタイルを構築された超実力派の山愛好家であり、氏の推薦の言はふかく傾聴すべきであり、即お薦めである。
 氏からお聞きしたが、中国は四川省山間の裸足の住民たちは、足にじかに石鹸を塗りつけてヒルに備えているということだ。 納得できる対処法だ。 
 以上はすべていわゆる自然にやさしいタイプ系といえよう。 その点はじつに好ましいのだが、ただ、ここからは好みの問題で小声でつぶやくが、私はできれば「無臭」のものを選びたい。 
それは、山間の大気、わたる風、しめった落ち葉、樹々や草花などのかぐわしい自然の匂いの贈り物をそのまま直に感じとりながら歩きたいが為で、強くて場違いな人工の匂いの発散はちょっと敬遠したいのだ。 おなじ理由で、熊さんが出ようが出まいが鈴鹿の山をチリンチリンと傍若無人に鈴を響かせて歩く登山者も私は敬遠する次第。

 両面接着テープやガムテープの接着面を長靴に帯状に貼りつけてみた。 ヒルは存外に接着面は平気で、くっつきもせず移動できる。 ただ接着剤の揮発成分が気にいらないのか、動きをとめてじっとしている。 この方法は、歩行中に接着面に土や塵や草などが付着してすぐに接着効果がなくなってしまいどちらにしても駄目である。

 ある時期、塩をもっぱら愛用した。 これは台所から入手でき、安価で携帯にもよく、効果はもちろん絶大だった。 長靴との併用だと下からのヒルは完全に防除でき、一昨年の夏、発光キノコをもとめて夜間に御池岳コグルミ谷を歩いたときも、はいあがるヒルなぞ全くへいちゃらだった。 長靴の上部に塩水で濡らした手ぬぐいを巻いて歩いた。 無数のヒルがつぎつぎと表敬訪問してきたが、すぐに退散なさられた。
 ただ、登山靴での山行の場合、塩はやはりまずい。 中の厚手の靴下に濃い塩水を染ませて乾かしたものを着用し、それなりの効果はたしかにあった。 が、革靴のいたみはやはり問題多く、靴ひもの止め具の金属が錆びてぼろぼろになり、革にも悪影響をおよぼしたと思う。 しかし、「蛭に塩」の言いまわしがあるとおり、塩は今もこれからも費用、安全、環境、手軽さなど、永遠の忌避剤、殺蛭剤でありつづけるだろう。

 パンティーストッキングの着用の話も聞くが、夏の暑さや小用の時をおもうと、確実だろうがやはり敬遠してしまう。 外国では、ズボンの上まであげてはく〈ヒルソックス〉なる商品があり、ライトカラーなので這い上がってくるのに気づいて除去するのに役立つという。

 山の畏友の一人は、長靴をはいて上部をズボンといっしょにガムテープでぐるぐる巻きにしておられる。 これもほとんど完璧のようだ。
長靴派はだんぜん有利である。

 ナメクジ殺虫剤は強力な忌避効果を発揮する。 ただ、高価であり、人体、環境への影響が不安である。

 現在、ホームセンターやドラッグストアで蚊やブユなどの虫除け剤としてさまざまなスプレー、塗布液、粉剤の商品が販売されている。 それらの成分の名を容器や箱の裏でひとつひとつお読みになられたことはありますか。 それらの主たる成分の名の100%近くがディートと記されているのをご存じでしょうか。

ディート DEETとは
 ジエチルトルアミドという化学名の省略形。
 1940年代、アメリカ陸軍が蚊、ブユ、サシバエ、ダニ、南京虫など戦地の虫よけ対策のために数々の実験を繰りかえした薬剤のなかで、効果が高く、しかも皮膚に対する刺激性や安全性が最も優れているものとして軍で採用され、今日、虫よけ剤の成分として世界中で広く使われているもの。 人の着衣や皮膚に噴霧して使用される。
ディートが10%以上入っている製品(医薬品)と、10%以下の製品(医薬部外品)の2つに分類され(厚生省が認可)、医薬部外品に関しては製品に「ディート」と表示する義務はない。    
どういうメカニズムで、例えば蚊を混乱させているかは解明されていないが、ディートを肌に塗ると蚊に刺されないことが実験により証明されている。 効き目に違いがあるとすれば、配合、濃度などによって左右されるようである。
アルコール類に溶かしたスプレー式の商品が主で、ディートの含有量は2~10%がほとんどであるが、それ以上の商品もある。 忌避剤の作用を強めるために共力剤(サイネピリン)を加える。  ディートは急性の経口摂取や、慢性的な皮膚適用の場合にはさまざまな中毒症状(主に中枢神経系に作用)を呈する。 対策は接触部分を水と石鹸でよく洗浄することである。
                    (以上、2004年段階、某大手雑貨メーカーの資料から)

 含有率が高いほど効果は大きい。 大半の商品が含有率10%以下である。 唯一、ムシペールα、ムシペールPSが含有率12%であるが、800円内外と高価である。 乳幼児むけの商品は含有率3~5%が多い。 10%含有の購入をお奨めする。 自衛隊はおそらく高含有率のディート品を使用していると思われる。
 
 現在のところ私は山でふだん、この虫よけ剤(強展着力で200mlが450円の品、あるいは180mlで250円の廉価品)を最も多く使用している。 というか、本卦環えりしてしまったというべきかもしれない。
理由は、手に入りやすい、使いやすい、匂いがすぐ消える、特売品があり安い、忌避効果もかなりあり、完全な侵入を許すまでに気がついて排除する時間が得られるからである。
ヒルが嫌がって、玄関先で逡巡、思案している間にこちらが先に気づいてどいてもらえるからである。 欠点は水で流れてしまうことだ。 汗、降雨、沢歩きには無力である。 そして、ディートの安全性に不明な点が残ることであろう。
実際、乳幼児のいる家庭では、近年、ディートを塗布した衣類をいっしょに洗濯することへの不安、抵抗感があると指摘し、一種のディート離れの傾向があるのではとの一部発言もみられる。 それも至極もっともなことであろう。 ただ、老夫婦ふたりきりになった私たちの場合、将来の副作用や家族への影響の心配もあるまいと居直って使用している。 

 登山まえに、靴下と登山靴、時には首や首にまく手ぬぐい、それらにスプレーする。 以上それだけ。
それが今のところ、私の準備である。  最善とは確言できない。
液が乾くと革靴が白くなるのが美観上ちょっとよろしくない。 また、アセテートやウレタン類への塗布は避けたほうがよい、とある。
あとは行動中に時おり目で点検して、いらっしゃったら棒の先や手でどいてもらう。
公益のためにか中にはていねいに殺戮なさる方もおられるが、私は浜の真砂の一粒くらいをどうこうしても意味ないと無殺生をきめこんでいる。

たかがヒル、されどヒル
 被害にあっても、まったく無頓着で、痛痒を感じない大先輩もいれば、むしろ献血奉仕した気分の動物愛護者?もいる。 その境地にはとても達せられない私だが、これまでたまにやられても比較的軽微でおわってきた。 しかし中には、処置がまずかったり体質などで、細菌感染やアレルギーのため、長びいたり重症になるケースもないではない。 完治に2ヶ月とか半年を要した友人もいた。  要は患部を清潔にし、汚れた手で掻いたりしないことだろう。 早いうちに傷口から血と唾液をつよく押し出し、水でよく洗い流す。そして抗ヒスタミン軟膏を塗る。 腫れに対しては患部を冷やす。 以上が基本の処置だとされる。

 喰われた箇所にあてがって、体液を吸いとる器具にポイズンリムーバーとかエクストラクターという商品があり、ハチ、ブユ、ヘビの咬傷に対して一定の効能があるようだ。 ムカデ、ハチ、ブユなどの痛痒のキツサはそうとうなもので、子ども会のキャンプなどではリーダー必携の品かもしれない。 もちろん、ヤマビルにも使用できる。 値段は850円から3000円くらいで、各種製品が販売されている。

剥がし方
 喰われたときの剥がし方だが、ヒルにかぎらずエレガントな「別れ方」はむつかしいようだ。 (心の)傷口が広がり、こじれるとヤッカイなのだ。 つまんでむりに剥がすとアゴ部がちぎれたり(それはないと思う)、咬み傷を広げる可能性があるという。 さきほどの塩ひとふりでヒルさんはあっさり未練もなくすぐ離れてくれる。 虫よけスプレーも即、効く。煙草の火を近づける話は禁煙社会ではいまや古典的方法となった。

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by mamorefujiwaraMT | 2012-02-22 20:32 | いっぷく亭
辺野古保全は「不可能」 アセス、知事意見提出

 仲井真弘多知事は20日午後、防衛省・沖縄防衛局が米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向け県に提出した環境影響評価(アセスメント)の評価書に対する意見書を、県環境影響評価条例に基づき沖縄防衛局に提出した。
意見書は、辺野古に新たな基地を造る現在の計画に対し「環境の保全上、重大な問題がある」と厳しく指摘。同省が示す保全措置では「事業実施区域周辺域の生活環境および自然環境の保全を図ることは不可能」と結論付けた。前文の冒頭、普天間飛行場の県外移設と早期返還を政府に再三求めている県の立場も明記した。
 辺野古移設について「地元の理解が得られない移設案を実現することは事実上、不可能であり、日本国内の他の地域への移設が、合理的かつ早期に課題を解決できる」との県の立場を強調した。
 意見書は、米軍が沖縄に夏以降に配備予定の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイや絶滅危惧種ジュゴンなど、25分野で175件の問題点を挙げた。 評価書で、代替基地での運用機種にオスプレイを追記。別の機種も含め飛行経路の変更があり、周辺住宅地への騒音影響も軒並み変わった。意見書は「手続きの最終段階に至って重要な環境情報が提示・変更されたことが、環境影響評価制度における前例となることに大きな懸念を抱いている」と強い不満を示した。 県の下地寛環境生活部長は記者会見で「科学的根拠に基づくデータで予測しないと、(政府から)環境保全上、問題がないと言われても理解し難い」と述べ、環境保全は不可能とした理由を説明した。
 県は環境影響評価法に係る埋め立て事業対象の知事意見は3月27日までに防衛局に提出する。
 政府は知事意見を踏まえて評価書を補正できるが、大幅な補正に応じれば移設計画に大きな影響が出る。補正の後、公告・縦覧にかければアセス手続きは完了する。
 辺野古沿岸部の埋め立てに向け、政府による公有水面埋め立て承認申請が6月にも県に提出される可能性が指摘されていた。 だが、玄葉光一郎外相は今年秋以降に先送りされるとの認識を示している。



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by mamorefujiwaraMT | 2012-02-21 16:35 | 新聞 関係記事
藤原岳・平成23年度 第3回三重県環境影響評価委員会
藤原鉱山およびその周辺次期原料山開発事業に係る環境影響評価準備書議事概要
平成23年12月15日(木)13時00分~
水産会館4 階研修室
(景観)
委員:濃尾平野からは自然形態の中にある山肌が視覚的に目に入ります。 自然形態の中に人口形態が突如として現れ、それが果たして心地よい形態かどうかということです。 地域の人は、あまり感じないかもしれませんが、遠くに住む濃尾平野の人は小さい頃から山肌が段々とあのような形になっていく姿を見て痛々しさを感じています。
ある意味では人間の文化に寄与しており、出来たらよい方向に持っていけないかと考えています。景観とは、自然形態と人工形態の良い調和であり、自然の形だけでなく、人間の歴史文化の調和です。 京都の大文字焼きのように藤原の山をあのような形にまで持っていく方法はないものだろうかと考えています。 企業がやろうとしている追求は西洋文化思想であり、いわゆる科学的、物質的な過追及です。 それに対して、東洋文化思想は自然との共生です。 これからの高次元の未来文明は、よいところをチョイスすることであり、このような点にもっと力を入れるべきだと思います。
例えば、年に一度くらいはレーザーを用いて芸術にまで高めるようなアースアートを行うとか、広い空間があるのであれば、そこでイベントやコンサートを行うことで、このようなところにも目を向けてもらえればと思います。
三重県地区や北勢地区の人だけでなく、濃尾平野の人のことを考えると、愛知県地区の人にもいろいろな調査をして欲しいと思います。 自然を破壊しているとしか見られないと思います。  ですから、年に1 度はアースアートを行うとか、イベントを行うことで、自然と共存している姿を見せるべきです。
(水質)
委員:この委員会で発言したことが、評価書にどの程度反映されるのですか。 反映されなかったとしたら、つまり、水の流れの現状が評価書に出てこないとしたら、私が危ないと言えば事業が止められ、開発に関して歯止めをかけられるのですか。 調査が不足している場合には、評価書にこれだけは反映して欲しいということで、日程の変更はできるのですか。 それが出来なくて、評価書に反映されないのであれば、何のための発言なのですか。
事務局に説明して欲しいです。 条例に縛られるとなると、環境に影響を及ぼす可能性があるにもかかわらず、評価書にそれが反映されないままで、開発が始まってしまうのですか。
事務局:手順としては、まず評価書を作り、他法令の開発許可の手続きを経たうえで、事業が開始されることになると思います。 評価書は、知事意見が述べられた後に作られ、縦覧されますが、手続き上は委員会で再度審議されることはありません。 その後は、事後調査報告書に基づいてフォローされていくことになります。
委員:事後調査で行われていることに関しては、この委員会には戻ってきません。
準備書が出来てから、この準備書に対して意見を言っているわけですが、私は委員に今年なりましたので、準備書でこのような調査をして下さいということに絡んでおりません。
準備書が体をなしておらず、これ以上調査が出来ないということであれば、途中から委員になった私には、責任のある発言は出来ません。 手続きを変えて頂かないと、水質の部分は調査が体をなしていません。
事務局:方法書の段階と、委員の方の任期の関係から交代がありまして、方法書の議論に参加していただけなくて、準備書からの審議をお願いしている委員がたくさんいます。
準備書の指摘に対して、事後調査の対象になるものもあると思いますが、事後調査に対しても委員会の意見を聞く手続きは条例にもあります。 そのような機会に意見を頂くこともできます。 聴取会の意見にもありましたが、事業者側が、公開で色々な専門の有識者に入っていただいた会議を開催したうえで、検討を行い、事業を進めていくことも出来ますし、その中で意見を反映していくことも出来ると思います。 聴取会でも、この地域は、全国的にも生態系が貴重である地域と聞いております。
委員:水の流れの現状は、開発が行われ、状況が刻一刻と変わる中で、事業実施前の状況が押さえられていることが必要です。 それがないと、何をベースにして、何が変わったのかがわからなくなると思います。 その時に評価書は現状をきちんと正確に押さえることが重要であり、シミュレーションすることで、環境が開発によってどのように変化するのかを明らかにし、許容範囲内にあることを示したうえで、どのような措置が取れるのかといったことを反映してこそ、評価書だと思います 。評価書の段階である程度の形を委員会で求めていかないと、何のための評価書なのでしょうか。
事務局:事業者が評価書をいつ頃作るのかということもありますが、評価をするための調査がどれぐらいの規模で、どれくらいの期間を必要とするのかを、委員に教えてもらえないでしょうか。
委員:一つ一つの項目に対して、精査をして欲しいです。時間をかけてきちんとした評価書を出して欲しいです。
(動植物)
委員:イヌワシの採餌場所を創るために木を伐採し林冠ギャップを創ることと、移植をすることに対して、掘削をされる場所は詳しく調査がされているのに、林冠ギャップを創る場所とか移植先の場所の調査がされていないのが非常に気になります。 こんなに高い標高で、しかも積雪深度の深いところでは、森林化するのは非常に難しいと思います。 もう少し低いところに杉林があり、木の根元が曲がっている林業上困難な場所があります。 事業実施区域の中だけで調査が行われていて、外側の伐採であるとか移植先の調査が後回しになっている気がします。 このようなデータを出してもらわないと、妥当なのかどうかの判断ができません。
事業者:これからギャップを施工するときに前調査をするということが、事後調査計画書にも書かれております。 調査をしないというわけではありません。
林冠ギャップは10ha のうち1ha を伐採するもので、全体を伐採するものではありません。 狭いエリアで調査をし、問題がなければ、ギャップを作ります。後の調査でも対応できると思います。
イヌワシが狩りを行っている範囲は標高の高いところで、比較的木がまばらにしか生えていないところであり、そこに近いところで林間ギャップを創って餌場を設けることが狙いです。
半分ほどではないですが、調査した区域は林冠ギャップの施行区域にかかっております。 事業実施区域から200m 拡げて調査をしているので全くかかっていないわけではありません。 場所は所有権の問題もあり、永続的に保全対策地として確保できる土地を選んでいます。
委員:伐採した後に植物が生えてこないのはシカが食べることが原因ではないかとの以前の委員会での意見に対し、事業者は下層植生が無いのは林内が暗いからだと答えていました。 しかし、この地域は鹿の頭数密度が高いので、伐採するだけでは鹿が嫌う植物だけが残ってしまい、ウサギが増えることには繋がらないと思います。 ウサギが入れるくらいのシカの防護柵を作らないと、効果を期待するのは困難だと思います。 防護柵をセットすることも考えた方がよいと思います。冬にどのような対策をとるのかについても考えた方が良いと思います。
事業者:防護柵については、クマタカ等の他の鳥類が柵にぶつかって影響を受けることも考えられますので、今回は防護柵を考えていません。
(騒音)
委員:工事の実施時の発破の頻度は、時間帯が不定期で24 時間とあり、間隔が6~8 時間程度とありますが、これはある時に発破をしてその間隔が6~8 時間離れているということですか。
事業者:トンネルを掘り進めて行くうえで、爆薬を込め、発破をして、片付けてのサイクルがありますので、そのサイクルを連続して行うということで24 時間連続ということです。
委員:周期的には夜中になることもあるのですか。
事業者:そうですね。 しかし、防音扉を設置しますし、騒音測定を行いますので、それで問題が起こるのであれば、やり方を考えたいと思います。
(水質)
委員:住民意見の「表流水の回復をさせていただかないと」の意見に対する回答の中に水量の減少が確認されていないとの回答があります。 その答えの根拠は、ヒアリングによる意見を基にしているわけですが、両方とも人の見た目です。 この住民意見に対する回答の根拠は何件くらい調査をして、何件くらいの方から意見を頂いているのですか。
事業者:準備書p303 に記載があり、湧水のヒアリングを行ったのは3 名で、流量の変化がないと回答をしたのは1 名です。
委員:測定をしていないのに、たった1 名から聴取した意見を回答として用いるのですか。 科学的根拠に欠けると思います。
事業者:この河川ではないのですが、採掘を行っている地域の近くの河川では定量的に把握していまして、減少は確認しておりません。 しかし、多志田川については測定をしておりません。
委員:多志田川について測定していないのであれば、公的な答えとして用いてよいのですか。 多志田川については測定していないことを回答にしなければならないのではないですか。 住民意見に対する見解はこのままにするのですか。 修正後の見解を住民が目にすることは出来るのですか。
事業者:今後継続的にモニタリングし、住民の不安に対しては解消するような対策をとっていきたいと考えております。
評価書の中に正しく、記載します。評価書は縦覧されます。
委員:評価書の中に水量を測定して、データを載せて欲しいです。
事業者:今の流量は測定できますが、過去のデータはありませんので、流量が減っていることは言えないのではないですか 。今からデータを取ることは可能です。 過去のデータがないのは事実です。 今から測定して、将来の水量の変化は把握できると思います。
委員:本事業を開始したときに準備書p303 の湧水が減るかどうかがアセスでは問題であり、今の議論は実がないと思います。
この委員会は環境影響評価委員会であり、事業を停止するかどうかではありません。
治田鉱区についても、事業者が事業を山頂鉱区だけとした経過があります。 このような評価が出てきて始めて、委員がイヌワシ等に対して環境配慮をして欲しいとか、動植物がなくなるから事業者側に配慮をしなさいといった審議結果を出せるわけです。
ヒアリング自体は正しいと思います。 事業をする前に湧水がどれだけあるのかが問題なのです。事業後に湧水が減れば、これは委員会の審議とは別の問題です。 だから、事業による負の責任は、委員の責任ではありません。 評価委員会が出した案に対して、事業者側が訂正し、配慮をすることは、事業者側があくまでも考えることです。
事務局:環境影響評価条例は大規模に著しい影響を及ぼす事業について、事業者が事業を進めるにあたって、そこにある環境にどのような影響を与えるのかを評価して、事業を進めるべきであるという考えのもと、手続きとして、事業者が環境影響評価をして、どのような措置をするのがよいのかを事業者が考えたうえで、知事が意見を述べるという手続きを定めたものです。 そのために、知事がどのような意見を述べるべきかを、委員の皆さんに審議していただいているということです。
知事が述べた意見に事業者が全く従わない場合には問題ですが、条例上、名前の公表はありますが、罰則はありませんので、その事業を拘束する方法はありません。
県として評価書の内容が全く無視をされても困りますので、事後調査で確認していきます。
委員の方に責任が及ぶことはありません。 別の手続きの中で許認可が行われるかどうかはあります。  かといって、無責任な意見を述べることもできませんので、委員が納得できないような意見は言えないと思います。 ただ、過去にこのような調査をして、評価をして下さいといった意見を、過去に出した例はないと思います。
今回の委員の意見をどう反映していくのか、時間をいただいて、検討させてください。
委員:以前に審議が行われた風力発電事業では、委員会の意見を聞き、景観や自然環境に影響がないように事業者は一部の風車の設置を断念しました。 ですから、この委員会は機能しています。
自然環境に影響が大きいので治田鉱区の開発を延期したことも、委員会の意見に対して事業者は一歩引いたわけですので、この委員会は重要です。 この委員会は住民の意見を反映できる場として、どんどん発言して欲しいと思います。 委員の方は細かいことについても、発言して欲しいと思います。
委員:生物分布に関しては、個体数などいろいろ調べられていますが、水に関してはそれを判断するデータがありません。 この鉱区が水循環を壊すのでこちらに移した方がよいという議論が出来るようなデータはありません。 それが欲しいです。 この準備書では議論が出来ません。 先ほどの住民意見に対する回答で、最後に言った答えを正直に返せばよいと思います。
生物分布と同じ土俵で、水質関係を議論するのであれば、現在の水質分布に関するデータがないと議論は出来ないと思います。
前回の委員会の指摘事項に対する事業者の見解として、酸化還元電位を測っていますが、現在の鉱区の調査地点は、岩盤がむき出しの基部で採水していると思いますが、岩盤から直接出ているのか、それとも崩れた部分の下で採水しているのか、どちらですか。
事業者:岩盤から直接採水しています。
委員:酸化還元電位で明らかにしたかったのは、岩盤の地下水とその上の埴土層の地下水との酸化還元電位との差が出ないかどうかということではないのですか。 岩盤の酸化還元電位の値も表流水の酸化還元電位の値も同じですよね。 そうすると岩盤の水と表流水の水の違いは出てこないのではないですか。 浅いところを流れているという話は成り立たないことになります。
委員:話の途中ですが、追加の形で委員の求めているデータは、評価書に入れることが出来ると思います。
委員:準備書ですので、評価書を出す段階で追加のデータ、修正は出せると思います。 どのような内容の記述に評価書をすればよいのかを話し合うのがこの委員会ですので、それに基づいて評価書は作られます。
委員:先ほどの話の続きになりますが、岩盤から湧水が出てきて、どのような形で浸透し、どのような形で出ていくのかを議論するのであれば、井戸を掘るしかないと思います。
以前に浸透域から流出域まで何本か深度の違う井戸を掘って、流動を調べればそれがわかるのではないかという話をしたと思いますが、事業者は、事業実施までに時間が間に合わないと言ったと思います。 この結果を見てみると流れがどう繋がっているのかはわからないと思います。 これでは表土層がどれ位の深度で、どこまでが風化層で、どこからが新鮮な岩盤なのかがよくわかりませんので、それ位のことは示せないのでしょうか。 地質の情報を示すのは難しいのでしょうか。 そうしたデータを示して頂ければ、流動の管理に対して、意見が言えると思います。
表流水と岩盤の酸化還元電位の値が違わないので、これだけで水が浸透して、地下水となって出ていくのかどうかの判断は難しいと思います。
事業者:酸化還元電位の測定地点であるワサビ田は明らかに伏流水ではなく、地面から湧き出している状況の湧水で、八天宮についても同様に地下水のデータです。 同じ値となっていますのでわかりにくいのですが、浸透した水は表流部を流れてきていると思っています。
委員:この結果で何が議論できるかということですが、流動系が変わるということは、事業実施により出来る貯水池にどれほど表流水が溜まってきて、岩盤に浸透した地下水がどのような形で流れてきて、どこに溜まるのかということです。 表土層を流れ、岩盤に浸透しないで、流れていくのか、それとも、ある程度岩盤に浸透して、湧水として出てくるのか、流動経路が知りたいわけです。 酸化還元電位が河川水と地下水で同じ値を示していますが、それだけではいけません。岩盤を流れている地下水は、すごく長い時間をかけて流れてくるので、酸化還元電位は低いのかと思っていましたが、現状はそうではありませんでした。 新鮮な岩盤までボーリングをしたときにそこの酸化還元電位が低いのであれば、岩盤を流れる地下水と表層を流れる地下水は違うので、交わって流れているという議論が出来たかと思います。 表土層と風化層と新鮮な岩盤のところにボーリングをして、酸化還元電位を測ったり、他の水質を測ったりしたらどうですか。
今後評価書までにどのような調査を行い、事後調査までにどのような調査を行うのか、もう一度検討して欲しいです。
事業者:例えば地下の坑道の湧水をサンプリングして、ボーリングを掘ったときと同じような調査になるのですか。
委員:横穴を掘った場合には、流動系が斜面方向にあったものが横穴を掘った方向に引っ張られ、鉛直方向に流れが変わってしまう傾向があります。 横穴の部分と山頂の地下水の流動系が繋がっているとわかれば、横穴の湧水の調査は有効であると思います。
事業者:山腹から観測孔を設置し、水位を測定し、連続して調査をすれば、地下水のラインは分ると思いますが、今後開発が行われる区域の現状は、かなりの急傾斜で、しかも岩盤ですので、水位を測定することのできるところは少ないと思います。 地下水の下流となっているところでしか測定は出来ないと思います。
委員:このように水が浸透していない岩盤の調査結果は必要であると思います。
事業者:地下水の下流部では企業の敷地外となってしまいますので、ボーリングを掘ることは難しいです。
先ほどの酸化還元電位の調査結果により、浸透した水は浅いところを流れているということであり、流域面積に比例して流れていると仮定していますので、そこで多志田川で流量を測定し、流量の増加、減少を確認することを考えています。
委員:そのときに酸化還元電位の値から、水が現在の鉱区の岩盤から湧出していると言いましたが、地表水と値が同じなのであれば、岩盤から流出している水とそれ以外の水をどのように分けていくのか、今の説明だと気になります。
事業者:表面の空気に触れるような状態で浸透した水は流れていると考えています。
委員:その水が河川に入ったときには、他の水と混ざった状態になるわけですが、どこまでが地下水で、他がそうでないのかは分らないと思います。 流れの場の条件が分っていないとその議論は出来ないと思います。 地質のデータがありませんので議論が出来ません。
事業者:地質のデータに関しては、ある程度は分っていまして、水を通しにくい層がどこにあるのかも分っているのですが、公開の場に地質のデ-タを出して、議論をするのには難しい面があります。
委員:公に出せる限界で、表土層と風化層と岩盤のような区切りで出し、議論を出来ませんか。
事業者:検討します。
(地形・地質)
委員:先ほどの話ですが、ボーリングのデータを出すのが難しいのであれば、今露出している石灰岩の割れ目の走行傾斜を測れば、ある程度の傾向が見られると思います。
いなべ市長の意見に治田銀銅山跡についての意見があり、準備書p77 にその記載がありません。そのことについて、どのように対応しますか。
事業者:幹事からの意見にもありましたが、この遺跡の範囲を示した図を委員会に出しており、評価書にも反映します。 治田銀銅山跡地は、今回の事業実施計画地には含まれておりません。
委員:2009 年のいなべ市遺跡地図では、その範囲に含まれていると思います。
事業者:私共が確認した限りでは含まれていないと思いますが、確認します。
(動植物)
委員:移植が可能かどうか、移植が適切であるかどうかについては、現在データがなく疑わしい面もありますが、実際に事業に取り掛かる前に移植を試みて、その方法が適切であるかどうかを証明できてから、事業に取り掛かるべきだと考えています。 移植を行ってそれが適切であるかどうかを証明し、これで問題がないと確認できないと事業に取り掛かるべきではないと思います。移植が唯一の方法として挙がっていますが、これが失敗したら、何も残らないということになってしまいますので、慎重に判断すべきだと思います。 今どこにどの植物が存在しているのかについてはよく調べられていますが、事業を実施し、どのようなことを行えば、どのような結果になるのかの根拠を示して欲しいです。 事後調査ではなく、前もって、評価すべきだと考えています。
事業者:山頂鉱区の採掘を本格的に開始するのは、来年工事を開始し、順調にいっても今から10 年くらい先になります。 来年の秋に地面の下に穴を掘り始めて、掘り終わって、地下空間に設備を設置し終わるのが2016 年の春になります。 2016 年の春に、現在の鉱区から計画されている鉱区へと採掘場所を少しずつ広げながら掘っていきますので、計画されている鉱区がメインの採掘区域となるのは2021 年になります。 評価書が縦覧開始となると同時に様々な環境保全措置を試行し、半年後には工事にとりかかります。 移植が成功したかどうかを確認したうえで、事業を開始するということになるとそれまでずっと事業に取り掛かれないことになります。
委員:移植が可能かどうかの判断ができなければ、この工事に対しての適切な環境保全措置として移植という方法を採用するのはおかしいのではないですか。
事業者:地盤を削っていく事業ですので、移植の方法をとりました。
委員:2016 年から随時、地盤を削っていくと言いましたが、2016 年までの数年間で移植が適切であるかどうかについて確立しないうちに削られていきませんか。
事業者:この鉱山では実績はありませんが、弊社のグループ内で成功している事例もあります。石灰石の鉱山における希少植物の有効な保護として、移植が20 年も30 年も前から行われていますので、一番確実な方法であると考えています。
委員:移植は移植先の環境にも大きく影響しますので、他で成功しても、ここで成功するかどうかについてはわかりません。 表土を削る前に移植という方法を行って、データを取ってから事業を行って欲しいものです。
事業者:縦覧を開始してすぐに移植の試行を行いたいと思います。
委員:結果次第では、表土を削っていく計画は停止したりする仕組みになっているのですか。
事業者:移植の方法をより良い方向に変えていくことを考えています。
委員:移植そのものが上手くいかないことを危惧しており、削った場所の植物は何も残らないことになり、それは危険なのではないかと思います。
事業者:それでは、移植以外に方法はあるのですか。 また、移植が適切かどうかを事業実施前に行うのは事前の着手に当たらないのでしょうか。
事務局:他の事業であれば、今回の事業のような長期のスパンの事業は滅多になく、その長期のスパンの事業の中で試行を行える期間が多く取られているのかなと思います。 事前着手かどうかは、移植をするための試験であれば、問題はないと思います。
事業者:出来るだけ早い段階から移植を試し、色々な方法で良い方向に向かうように行います。
他の鉱山で移植を行っていましたが、100 パーセントに近い確率で移植は上手くいっているという自信はあります。
委員:いなべ市長の意見の中にも、いなべ市の誇るべき自然とあり、貴重な生態系が残っているところですので、可能な限り自然が残る方法を取って欲しいものです。
表土を削ってしまうときに、移植以外に他に方法があるのかは私自身にもわかりません。
事業も上手くいって、生態系の保全にも繋がるような方策を作っていくべきだと思います。 前回に聞いた表土を全て削って掘る方法ではなくても、地下を掘っていく方法もあると聞きましたので、それを検討するとか、全部その方法で行うと採算が合わないのであれば、部分的にでもその方法を実施できないのですか。
事業者:現実的にはその採掘方法は採算的にも、地形上物理的にも無理です。 市長意見に
ついては、我々も承知していまして、環境保全措置の予算措置も行っており、口約束だけでなく行っていくつもりです。

〈以下 つづく〉


More 以下つづく
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辺野古移設:「環境保全は不可能」 沖縄県審査会が答申

 沖縄県環境影響評価審査会(会長・宮城邦治沖縄国際大教授)は8日、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古への移設に向けた防衛省の環境影響評価(アセスメント)について「環境保全上重大な問題があり、生活環境や自然環境の保全は不可能」とする答申をまとめ、仲井真弘多(なかいま・ひろかず)知事あてに提出した。 防衛省は評価書で「環境保全上、特段の支障は生じない」と結論づけたが、真っ向から対立する答申となった。
 アセスは県条例と環境影響評価法に基づいており、知事は県条例に基づく意見を20日までに国に提出するが、知事は県外移設を求める考えを変えておらず、答申を反映して厳しい内容になる見込み。
 前段階の準備書提出後に配備が正式発表され、評価書に初めて盛り込まれた垂直離着陸機MV22オスプレイについて答申書は「関係市村長や住民意見が聴取されておらず、手続き上適切とは言い難い」と批判。騒音についても調査を不十分とし「予測結果は更に高い値になると考える」と生活環境への影響も指摘した。ジュゴンなど生態系への影響を「湾の一部が埋め立てられ予想を超えた影響が懸念される」と記した。
 提出後、記者会見した宮城会長は「委員の意見は(事業の)中止なり変更が望ましい、ということだ」と述べた。    【吉永康朗】

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by mamorefujiwaraMT | 2012-02-08 23:14 | 新聞 関係記事
          中日新聞 2012.02.06 朝刊 三重版
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希少種保護どう実現                    ニュース追跡
いなべ・藤原岳の鉱山開発計画

鈴鹿山系北部に位置するいなべ市の藤原岳の山頂付近で、大手セメント会社が新たな鉱山開発を計画している。 セメント原料の石灰石が戦前から採掘される藤原岳周辺は動植物が豊かで、天然記念物イヌワシの県内唯一の生息地。 県の環境アセスメントで現在最終手続きに入る会社側は、計画の修正や希少種の保全措置を打ち出しているが、実効性には課題が残る。 (加藤弘二)

 この鉱山開発は、太平洋セメント(東京)の藤原工場が計画。 山肌が大きく削り取られた山頂鉱区沿いの59ヘクタールが対象となる。 50年分の採掘量が見込まれ、今年中に地下坑道の工事に入り、2016年度からの採掘を目指す。
 当初の開発案には別の鉱区も含まれていたが、近くでイヌワシの営巣地やひなを確認。 巣から離れた山頂鉱区のみの開発へと縮小させている。  巣の保護を訴えてきた日本野鳥の会三重代表の平井正志さん(65)は、計画修正を評価しながらも「順調な繁殖を続けるつがいに影響を及ぼす恐れは依然ある」と指摘する。  平井さんが問題視するのは、イヌワシの餌狩り場。 イヌワシは高い木がない開けた地で、餌の小動物を捕まえる習性があり、採掘予定地でもたびたび捕獲していることが判明している。
会社側は、山頂鉱区近くの山林を帯状に間伐し、代替の餌狩り場を造る予定だ。 イヌワシ保護を目的とした間伐は、東北地方の北上山地で十年ほど前から普及。 しかし岩手県環境保健センターによると、間伐地では小動物が増えたものの、イヌワシの捕食が確認されたのは二例にとどまる。  センターの前田琢主任専門研究員は「生態系へのメリットは確かにあるが、実際に餌狩り場として機能するかはケース・バイ・ケース」と話す。
 藤原岳一帯には、カタツムリの地域固有種で、三重県希少野生動植物種のカナマルマイマイも生息。 環境アセスメントの手続きの中で会社側は、予定地のカナマルマイマイを藤原岳の別の場所へ移す案を示したが、県環境影響評価委員会では「カナマルマイマイは移植例や生息情報がほとんどない」と、効果や影響を測りかねる意見が相次いだ。
 こうした議論を踏まえ、先月25日に公表された知事意見も「イヌワシやカナマルマイマイ及び、希少な動植物の環境保全措置は、その効果が不明確」と指摘し、さらなる検証を求めている。
会社側は知事や住民の意見を踏まえ、着工前の最後のアセス手続きとなる環境影響評価書を作成中。 その中で、イヌワシ用の代替の餌狩り場を採掘開始前に造り、先行検証の実施を盛り込む方針だ。
太平洋セメントの担当者は「効果面で試行錯誤が続く措置もあるが、取りうる選択肢を最大限取入れていく。 今後も専門家との協議も重ね、モニタリングを続けていきたい」と話している。

《視線》
 昨秋、藤原岳周辺の山に初めて登った。 なだらかな台地に低木や草地が広がる山頂付近。 イヌワシの生態を知るにつれ、生息に適した地だと実感する。
 一方、この地の採掘には80年の歴史がある。 地場産業の担い手として、自然との共存を試みようとの社の姿勢が取材を通じて垣間見えた。
 環境問題の議論で難しいのは、影響を測る指標が多岐にわたることだ。 しかも生態系の変化は微妙で、影響の行方も複雑。 一過性の議論に終わらず、調査と検証の反復を期待したい。

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by mamorefujiwaraMT | 2012-02-06 19:44 | 新聞 関係記事