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藤原岳を大貝戸道で登ったが...               藤原昧々  2013.4.16

 いま「花の百名山」藤原岳は、鉱山会社によるセメント採掘、増殖する鹿による食害、行政による登山道整備放置という三つの大きな要因によって荒廃の一途をたどっている。
 今春の3,4月に藤原岳を登ってみて年々の山の荒れようが加速度的に進行していることに大きな脅威を感じた。  4月16日の朝、植物調査のため同行して下さった先生のお一人が大貝戸道4~5合目の長い直線道の折り返し点の手前で谷すじ側にリュックを置かれたところ、突然、リュックは岩石のようなすさまじい音を発しながら樹林の間を落下していった。 大貝戸道の東側の谷は樹木や草で隠れているが実態は予想以上の崩壊が進み谷は大きく抉られている。そこへリュックは転がり落ちていって谷底でとまった。マンションでいえば7~8階からくらいの落下で、もしリュックのかわりに人物であったら斜面とはいえ大きな事故につながったかも知れない。最も歩き易く、唯一残された登山道の大貝戸道。その路傍の穏やかそうな草・木の真下に急斜面と恐ろしい亀裂が口をあけていることをほとんどの登山者が気づかずに歩いていることを思うと慄然とする。
 なにかの人身事故が起これば大貝戸道も通行禁止になり、藤原岳は既存の3つの登山道すべてが鎖される「禁制の山」「入山禁止の山」となりかねない。
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 7合目から8合目への大きな亀裂も気になるが、8合目から9合目にかけての各処の雨裂は無数にあり山の荒廃ぶりをつよく印象づけた。 登山道が整備されていないため、登山者で混みあった時や雨で道がぬかるんでいると、近道をしたり歩きやすそうな斜面を通ったりして人が勝手に踏みまわし、いっそう斜面が荒れていく。 しかも増殖したシカが草も稚木も食べつくし斜面の土の保水力が失われているので、少しの雨でも表土が流れ落ち、豪雨となれば雨裂の増大は一気に増す。 おそらく手のうちようがないほどの悪化ぶりで、かつて一面のお花畑だった大斜面は赤土と岩石だけの荒廃した亀裂帯となるだろう。
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 今回、太平洋セメント会社はふたつの開発予定鉱区のうち、イヌワシの生息が確認された藤原岳の孫太尾根の掘削を断念したが、藤原岳頂上三角点付近から見ると、現行(他社)の孫太尾根北東斜面の掘削の規模と進行ぶりはすさまじい。 往時の名渓、多志田渓谷はこの孫太尾根北東斜面と藤原岳本峰南斜面の両側からの掘削により谷は埋まり荒れはてて凄まじい変貌ぶりをみせている。
孫太尾根は今回の調査でも数々の植物学上の新発見があり、先生のひとりは「日本有数の貴重な山」と賛嘆の声を惜しまれなかった。 日本の石灰山は社会の必要上、その蔵する多彩な希少種と貴重な生態系まるごとが破壊される宿命にあり、まことに残念としか言いようがない。 こんな言葉がふと胸に浮かんだ。「最後の川が汚染され、最後の魚が獲られたとき、初めて、我々は《お金を食べて生きていけない》ことに気づくのです。」
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 たくさんの登山者と出あった。フクジュソウ(鹿は食べない)やネコノメソウ類、スミレ類がお目当てなのだろうか。 それにしてもかつて感動したキンポウゲ科を中心にする美しい花の数は悲惨なほど減ってしまった。 大型のカメラと三脚を抱えた人たちに話かけてみると異口同音に「登山道がひどい」と言う。 「セメントは社会に必要だからなあ、地元の雇用もあるし」と言う方もいた。 セメントは東北震災の今も全国で過剰であり、各地で閉鎖された鉱山の社員がここで働いていて地元の雇用にはほとんど関係ないらしいが、コメントせず黙っていた。 写真を撮りにきて失望された方々にお願いしたいことは、セメントのことは置いても、シカへの過密対策や登山道整備の要求を地元自治体や県にぜひ伝えて欲しいということだ。
 今回、本稿にも藤原岳で増殖するシカの実態写真を紹介したかったが持ちあわせていないので、隣接する御池岳の過去の写真2枚を掲載した。 一帯に盤踞するシカ一族の一列行進の写真と、草を喰むシカの群れ及び左端で周囲を警戒するボス鹿?の写真だ。 とっさの手持ちで望遠の撮影のためにボケている。
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  いなべ市日沖市長は「いなべ市の自然は市の大きなブランドだ」と話されたと聞く。 その日沖市長の任期中に全国に知られるこの屈指の「花の百名山」が無策のなかで消滅したとすれば市長もきっと残念がられるだろう。 郷土の誇りである藤原岳だ。 その自然対策に日沖市長やいなべ市教育委員会が過去にどれほどの関心と努力を惜しまれなかったか、また今どのような施策を講じられるかが今後も問われている。
 シカ対策と登山道整備、鉱山区以外の山地の自然回復、これらをまず訴えない限り、太平洋セメントに対して再開発の問題や移植の実行をいま云々するのが私には正直はばかられる。 あまりにもひどい現状だ。 筆者は事情があって2年間藤原岳にご無沙汰していたとはいえ、今回、自分のあまりの不明を恥じる気持ちでいっぱいだった。
 花を撮りに来られた皆さんにお願いしたい。 いなべ市と三重県に対して、対策を要請する声をぜひ寄せてほしい。皆が動かなければ行政はなかなかやってくれない。

 最後に、今回の登山で目にした花の写真をいくつか紹介して 悲しい報告を終えたい。 
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  会社は「移植する」など、保護対策の約束を守るのか?          藤原昧々
                                                  
2010年12月に県環境影響評価審議委員会でのアセスメントが終了し、2011年の正月早々には委員会答申が出て、1月26日には知事意見による様々な条件のもとに事業ゴーサインの表明がなされた。
この2013年2月より、太平洋セメントはいよいよ準備工事の着工にとりかかり、今後、資材の運搬から、トンネル発破、坑道掘削などの工事にとりかかっていくという。
ところが、答申からまる2年が経過したが、会社側からは彼らがアセスメントで確約した重要動植物の移植について、関係者へのなんらかの相談や着手の報告は今のところいっさい無い模様である。鉱区予定地の植物再調査への協力依頼に対しても消極的な態度を示しており、このまま会社が移植にとりかからないまま工事が進めば、藤原岳の貴重生物はその遺伝子すら消えていくことになりかねず、由々しい事態となる。 
県やいなべ市の関係者は行政官庁として会社に対して移植事業の実施計画なり具体的日程表の作成と公表を指導・監督していただきたい。

県の環境影響評価審議委員会において事業者側の太平洋セメントが委員と行政および市民に対して約束した内容は、すでに本ブログ 2011年12月25日の記事で「付録:事業者側の回答 (抜粋)」として列記してあるが、再度確認のため、以下に整理して記載することにした。
貴重な動植物が鉱山開発によって消滅していく事態に対して会社には誠意ある実行をお願いしたい。ことは太平洋セメント株式会社という会社イメージにも直結する社会への約束事であり、この実施が無視されたら、今回のアセスメントも「アワスメント」になり、県民の税金が無駄づかいされたことにもなる。
マスコミの方々もこの問題を真剣に調査し報道して欲しい。

本ブログでは、ゴーサインにあたって県知事が公表した会社への要請項目についても、後日、再度、本ブログに掲載して県環境課の果たすべき指導・監督を行政に喚起しつよく迫っていく予定である。

        《 太平洋セメント株式会社の確約内容 》

※ 基本的・総括的な約束内容

会社:順応的管理を行い、色々な方策を今後も考えていきます。

会社:はい、フィードバックするような計画になっています。 植物の種類によっては、25 年後に消失する種もあります。 そのような種については、25年間試す期間があります。
25 年間に何度も移植を試し、成功するように努力していきます。

会社:今後は失敗事例の経験を活かしまして、土のことを考えて植栽をします。 

会社:基本的には石灰石の採掘が終了したところについては、緑化することにしている。

会社:現時点では、(開発をいつか完結するか否か)どちらの可能性もあるが、最終的には、緑化を行い完結する方針である。

※ 評価書提出後に着手する約束内容

会社:評価書を提出の後、調査を行います。 事後調査を行えば、1 年ごとに報告書を提出します。 結果の閲覧、公表も行われます。 ← いつ調査を?

会社:今後、事後調査においてキノコ、地衣生態類についても調査をしていきます。← いつ?

会社:食害がある現況で、より正確に把握できる手法を、専門家の意見を踏まえ反映し検討したい。 ← まず、シカの実態調査?

※ 移植に関する約束内容

会社:今回の事業でも、移植地まで道路をつけて車で移動し、移植が上手くいっているのかを確認するための事後のモニタリングを行っていきます。

会社:事業の進捗に応じて、移植を行っていきます。 50 年をかけて、改変が行われますので対策をとっていくこととなります。 それをしながらモニタリングをしていきます。 移植に関しては、有識者の意見に基づき行います。 万が一上手くいかなかった場合でも、上手くいく方法を模索していきます。

会社:ヒメニラについては、5~10 年後に改変され、それまでに色々な実験を行い取り木であったり、挿し木であったり、組織培養等の実験をして、より良い方策を試します。 安易な移植は考えていません。(筆者:ヒメニラの取り木、挿し木云々はテープ起こし間違い? ← 今春のヒメニラ調査に非協力だったのでは? )

※ その他、個別的・具体的な約束内容

会社:表土の部分の場所が、一番養分が多いと思う。 採掘部分がレベルダウンするごとに表土の部分が必ず地山との境界に出てくる。 使えるものは使っていく考えである。

会社:荒涼とした景観の観点からも考え、今日見て頂いた断壁は20m ごとに小段を作っており、1段当たりの高さが高い。次の場所は20mを10mにして小段を作るなど工夫してやっていきたい。

会社:他地区の事業では、保護植物園のようなものを作ったり、バイオテクノロジーにより培養したりしているので検討したい。 ← 検討結果は?

会社:事業者の研究施設で、組織培養を行いますので、種の保存だけは図られます。 生育地はなくなりますが、この種の遺伝子自体がなくなるわけではありません。← xxマイマイは?

会社:準備書 P.599 で重要種については、移植だけではなくて、例えばアサダ、xxxミツバについては挿し木、取り木、組織培養、ハイイヌガヤ、チャボガヤ等については挿し木、取り木、播種といった方法を考えています。

                                   2013.03.30 記            


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