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   藤原岳山頂及び孫太尾根の再開発と重要希少植物                            
                                                     会員 K.Y
 前回は、太平洋セメント藤原鉱山の開発によってか否か、イヌワシはいなくなり、一方、カナマルマイマイ、フキヤミツバなどの動植物が依然として絶滅の危機にさらされているということを書いた。 
この2月には準備工事着工、資材運搬・トンネル発破・坑道堀削などの工事が始められている。しかし、重要動植物の移植の情報は未だに全く発表されていない。藤原岳自然科学館を中心にしっかり監視しモニタリングしないと、鉱山側にはアセスでの約束を忘却されてしまう恐れがある。 一般に企業は金のかかることにはなるべく手抜きをしがちな傾向があるからだ。 とくに山頂鉱区の1009m三角点付近には、ヒメニラ、ミノコバイモ、ヒロハノアマナ、フクジュソウ、セツブンソウ、チョウセンナニワズなど重要植物の群落が存在する。そういう所が、まず、真っ先に破壊されていく。続いて、その北斜面が予定の開発により破壊され、フキヤミツバの生育地の消滅に至る。フキヤミツバについては移植を前提としているが、この3年間、全く何の試植の報告もなされていない。カナマルマイマイについても同様である。

 今回孫太尾根は、太平洋セメントによる開発を免れたが、現在、地元の土建会社が土砂を削り取っている。これも大きな問題で、ここにも重要植物が多く、水分変化によって植生などに変化をきたし、多くの三重のレッドデータブック2005に記載されている植物が絶滅の危機にさらされたり、絶滅する可能性が高い。孫太尾根は藤原岳の南端から南東に延びる標高900mから600mに延びる尾根で、重要希少植物としてはフキヤミツバ、イワザクラ、マルバサンキライ、ステゴビル、オオキヌタソウ、イワツクバネウツギ、キンキマメザクラ、イワタケソウなどがあり、ほかに藤原岳には結構普通に生育するミスミソウ、ケスハマソウ、セツブンソウ、ヒロハノアマナ、ミノコバイモ、フクジュソウ、カノツメソウなどが見られる。

 しかし、最近2008年加田勝敏(四日市市)、清水義孝(いなべ市)によって発見されたヤセホタルサイコは全国でもここだけにしか存在しないものである。ただし、加田は、2008年にミシマサイコとして近畿植物同好会会誌第35号2012に発表している。藤原鉱山環境アセスメントの報告ではホタルサイコとして記載されている。
 1964年8月の植物研究雑誌第39巻第8号には、次のような記載がなされている。一部引用すると
「三重県産ミシマサイコ属の一新種 牧野標本舘に、三重県産の他と違ったホタルサイコ類の標本が2点納められている。トカチサイコに似た所もあるが、こまかい点では異なっている。根茎は水平に伸び、茎は単立し、枝は少なく、葉は細長くて基部は半ば茎を抱き、複散形花序は貧弱で、散梗は4本のものが最も多く、極めて不等長であり、小総苞は5個あり、小さい。ホタルサイコとは可なり隔たった別種と考えられるので、新学名を与え、ヤセホタルサイコとする。Bupleurum(sect.Longiforia)quadriradiatum Kitagawa,sp.nov.」
 ところが、大場秀章は1999セリ科in Flora of Japan 2C においてヤセホタルサイコをオオホタルサイコに組み込んだが、その理由は、よくわからない。

 米倉浩司「日本維管束植物目録(2012)」の記載もこの大場の考え方に基づいているものと思われる。大場の検索表に基づくとオオホタルサイコの小花柄は6-7(-15)mm、ホタルサイコの小花柄は4-5mmとなっているが藤原岳孫太尾根の個体は小花柄が5mmに満たずホタルサイコに属してしまう。他にこの藤原産品の顕著な特徴は糸状の走出枝を出すことである。走出枝を出すものにはハクサンサイコが存在する。ホタルサイコは根茎は太く短く匍匐枝はない。小苞葉はふつう小花柄より短いとなっている。ハクサンサイコは、根茎は細長く、走出枝は糸状。小苞葉は4-5mmで小花柄より長い。となっており、藤原のものは、小苞葉は小花柄より明らかに短く、ハクサンサイコにも該当しないしオオハクサンサイコもあるがこれも小苞葉は小花柄より長いとあり該当しない。ホタルサイコにも該当しない。画像の様に、葉と花を一見すると、ミシマサイコのように思われるが葉はよく見ると平行脈ではないし、葉質もうすくて柔らかい。茎下部から糸状の走出枝を出している。走出枝から見るとハクサンサイコに極めて近いように思われるが、以上のようなことを考察すると、新種発表されたヤセホタルサイコの記載と非常に近く、ヤセホタルサイコと言う名称が一番適するのではないかと筆者は考える。ただし、個体数が極めて少なく私のもっている2枚の標本のみであるので、何ともいえないところがあるが、いずれにせよ三重県では初記録となる。
 過去のヤセホタルサイコの標本はないかと京都大学総合博物館と大阪市立自然史博物館の収蔵庫を調べたが存在を確認できなかった。首都大学東京の牧野標本館のBupleurum quadriradiatumのカバーの中に1926年7月25日(員弁郡治田村)採集の右左見直八のホロタイプ標本と1904年6月(三重郡保々村)採集の川崎のパラタイプ標本のこの2点の標本だけが納められていた。
調査を進めれば、まだまだ、藤原岳では他の貴重な植物が発見される可能性は十分ある。

 先日3月初めの藤原岳自然科学館の運営委員会の場でいなべ市教育長から「いなべ市の自然は市の大きなブランドだ」と市長が自慢しているという報告があった。いなべ市にはカナマルマイマイなども含め全国でいなべ市にだけしか存在しない生物がいる。我々藤原岳自然科学館の運営委員たちといなべ市は藤原岳の保護に関して過去にどれだけの努力を注いできただろうか。多いに反省して責任をとらなければならないと痛感している。山の破壊を招くこれ以上の開発は絶対阻止しなければならないし、同時に、荒れた登山道の整備、希少植物をシカの食害から守ることによって「花の百名山」藤原岳の自然を守ることこそが、藤原岳自然科学館・いなべ市の一番の責務である。 
Bupleurum quadriradiatum は孫太尾根上に点々と数カ所存在するが、いづれも個体は貧弱な消えそうなものばかりであった。市川正人氏をはじめ地元いなべ市や他の多くの人たちと同行し、現地の生存を確認した。

この原稿を書くにあたり、標本閲覧等でお世話になった首都大学東京の牧野標本館の村上哲明氏、京都大学総合博物館の永益英敏氏、大阪市立自然史博物館の長谷川匡弘氏、貴重な資料を提供していただいた名古屋の吉田國二氏と京都大学総合博物館の織田二郎氏に深謝の意を表する。画像を一部提供していただいたいなべ市の清水義孝氏にも感謝する。 なお、ヤセホタルサイコは、「Buleurum quadriradiatum (セリ科)の再発見」と言う題目で、日本植物分類学会第12回大会(千葉大学)において、愛知教育大学生物の芹沢俊介氏等のグループによるDNA分析も含めたポスター発表によってフジワラサイコ(芹沢仮称)という名称にて全国にアピールされた。国でも県でもこれはCRに相当するものである。

                              藤原岳自然科学館運営委員 山脇和也


図(写真)の説明 牧野標本館のHOLO TYPEの標本
第12回日本植物分類学会で芹沢グループによって発表された仮称フジワラサイコ

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by mamorefujiwaraMT | 2013-05-18 23:26 | 会員 各種論稿
4月の草花

藤原岳の今春の草花をつたない写真ではありますが、ご紹介します。
例によって、生育地の場所の特定はさけております。  草花の名前は、藤原岳自然科学館運営委員で、当会会員の K.Y氏の指導をえて記していますが、なかには筆者の聞きまちがえがあるかもしれません。

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     ニシキゴロモ                   ヒロハノアマナ

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   エダウチフクジュソウ                キバナノアマナ
藤原岳には、シコクフクジュソウという新しい種のフクジュソウの生育が判明しました。そこで、従来の「フクジュソウ」を、学名どおりに、エダウチフクジュソウと記しました。

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   キクザキイチリンソウ                ナガバノスミレサイシン

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   ヒトリシズカ                      コタチツボスミレ

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   ウグイスカグラ                    イワザクラ

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   フキヤミツバ                      フデリンドウ

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   ヤマルリソウ                      イカリソウ

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   ツクバネソウ                      ミヤマハコベ

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   トサノミツバツツジ                   ウスバサイシン







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by mamorefujiwaraMT | 2013-05-06 06:50 | 花だより