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太陽を見て方位を知る                藤原昧々
                                    (桑名山歩会HPより転載)    
                             
 
野外にいて、晴天の時、東西南北の方位を知ろうとして、まず太陽の方向を探す経験をされたことは多いのではないでしょうか。それがもし早朝なら、昇り始める太陽を見て東の方向と思い、正午の頃なら、太陽の方向を真南と判断し、夕刻ならば沈む太陽の方向を西とみて疑わない、そんな経験は誰にもあるだろう。 さらに、もし山中で時刻が午前9時頃なら、太陽の方向はほぼ南東であり、午後の3時頃なら、ほぼ南西だなと判断する。
いっぽう、太陽の位置による方位測定を、時計の短針と日影の角度から、より実用化させる方法はずいぶん昔から繰りかえし説かれてきたことはご存知でしょう。
登山や野外活動、アウトドア関係の私の手近な本のなかから、その方法を記した説明文を2,3紹介してみよう:

その1:「腕時計で方角を知る:たとえコンパスを持っていなくても、夜であれば北極星の位置から、昼間であれば腕時計(アナログ)を使って方角を知ることができる。まず腕時計を地面に水平に置き中心にマッチ棒をたてる。時計をまわしてマッチ棒の影と短針とを重ね合わせると、文字盤の12時と短針の中間が、北にあたり、反対が南にあたる。
最も一般的な方法は、腕時計の短針を太陽に向けるというものだ。この場合は、文字盤の12時と短針の中間が南にあたる。」

その2:「森の中で迷子にならない方法:アナログ時計と太陽があれば、おおよそ南の方角がわかるよ。 まず腕時計の12時の方向と、現在の短針の方向を二分する方向に、現在の太陽の位置を合わせる。その時の12時の方向が、おおよその南。」

その3:「短針式指南法」:短針式指南法とは、アナログ表示の腕時計の短針を太陽の方向に向けた時、短針と12時の中間の方向が南を指すことを利用した方法です。この方法は腕時計を使う方法としてよく知られていますが、「短針指南法」と呼ぶことにします。
この方法で正確に方位を計測するには、短針の延長上の文字盤の端に棒を立てるか、紐を吊るして、その影が短針と重なるように時計を向けるのです。  時計の短針が1時間に30度移動することに対して、太陽が1時間に、360度÷24=15度 だけ移動するのを利用しています。だから12時からの短針移動角度を半分にしているのです。」云々。

 これらの方法の基本にある考え方は、太陽はふつう朝6時に真東から昇り、正午に真南の位置にあって、午後は次第に西の方向に沈んで夕刻6時に真西の地平線に消える。その間、時刻の変化に対して、太陽は一定の角度(1時間に15度ずつ)で東~南~西へと移動する、という前提である。このような判断は、一般に、私たちが生活の中で実感し経験してきた法則としてかなり受け入れられてきた事実ではないだろうか。

 私自身は、これまでの山歩きのなかで、この腕時計とマッチ棒というやり方にはいささか違和感と疑問をいだいてきました。地面に時計を置いてマッチ棒とか爪楊枝を立てて太陽の影を読み取るなどということをこれらの筆者たちは日ごろ山の中でちょっとでも実行したことがあるのだろうか。 精密な方向の確定ではないのだし、草木生い茂る山中での実践なのだ。歩行を中断し地面にしゃがみこんで時計を置いたりするものだろうか、、、? 

 そこで私が実際に行っている方法(両腕開平指南法)を紹介したい。 「指南」とは教授の意ではなく中国古代の指南車のとおり「南を指す」の意です。
午前10時だとすると、時計の午前10時の長針と短針の角度の関係を、太陽に向かって自分の両手で自分が時計になりきった気持ちになり、10時の角度で開くのである。 午前なら左手(短針)を太陽の方向に向け、そのとき両腕がつくる10時の角度の真中の方向が真南であると判断する。午後4時であるとすると、時計の4時の長針、短針の関係を、自分の両手でイメージして再現する。 午後は、右手(短針)を太陽の方向に向けて、開いた両腕のちょうど真中の方向を真南と判断するのです。 場所によっては逆に自分の影を相手にして北の方角を求めたりもする。  山歩きでおおざっぱに進行方向の確認をしたい際、晴天時や、雲を透してでも日が射す時には、私はいつもこの方法で真南を推測しておおいに実地活用してきた。 正確な方向を知りたい時はシルバーコンパスを取りだし、アバウトに方向を確かめたい時にはこの両腕開平法を実践してきた。そして所属する登山団体のなかまの方たちにも紹介したりしてきた。
 これまでの山行でこの両腕開平指南法はずいぶん方向の把握に役立ってきたのであった、が実はときおりこの方法で得た方位が実際の正しい方位とはなにか異なる、というか、妙に大きくずれているような疑念をもつことも何度か経験した。夏の沢登りなどで、コンパスの示す南と大きくずれているのに狼狽することがあった。もとより、太陽方位法はおおよその推定法であり、ある程度のずれは当然存在するとは思っていた。しかし、時と場所によってこうも正確さに違いがでるのには正直閉口することもあった。これは一度、実地に調べてみる必要があると思い続けてきた。

 機会をえて、2005年3月から1年間、桑名市内の自宅と勤務先の周辺を基点にして、春分、夏至、秋分、冬至を中心に、太陽の方角と実際の方位とを実地に調べてみた。その結果を次ページに、表とコメントのかたちで紹介させていただきたい。

 方位の測定であらためて認識したのは、コンパスが、いかにその場の条件に左右されやすい不安定な機器であるかということだった。 驚くほどデリケートな機器なのだ。
だから、登山の利用にあたっては、示された方角の数値を鵜呑みにせず、場を変えて測り変え、たえず総合的に修正判断する必要があるだろう。着衣のまわりにある磁性体、谷筋ならば鉱石の影響を意識したいものだ。街なかの歩きなどでは車は絶対にいけない。車は磁石の塊であり数メートルは離れるべきである。 舗装、コンクリートの建物、電線など市街地は気を遣うべきものだらけである。 それに、中空にある太陽をコンパスで方位測定する方法がけっこう厄介なのである。 私は、森田のプリズムで横から覗く方式のコンパスを使用し、直立する線状物(例えば、遠く離れた電信棒)の日影の延長線上に立ってその線状物の方位を測定する方法をとった。 しかし磁気の影響がなくしかも適当な目指す線状物が存在するような場所を、自宅や勤務先の近辺に求めるのは一苦労であった。 同時に、屋上の洗濯干し場で、糸に錘をつけて垂らし、敷いた紙に映る日影を記録し、時間毎の角度の変化を後で分度器で測って補強資料にした。 休日はまる一日をあてて30分ごとに近くの現場に飛んでゆき測定と記録をやったが1時間の経過の速いことには心底驚いた。 こんな学童の理科しらべもどきを夢中でやらずとも、天文台あたりの専門の正確な数値が岩波理科年表などにちゃんとあるはずで、これについては識者の御教示をぜひ戴きたいものだ。 
                 
私の観察結果・・・・・ 桑名市および鈴鹿山系での太陽の方位
* 春分前後(3,4月)と、秋分前後(9,10月)の太陽の方向の動き方は、非常に相似である。
  どちらも、午前中は、モデル曲線に非常に近似の曲線を描く、が、午後は、モデル曲線より西に早く傾
  き、午後3時ころ最大20°くらい西にずれる。
  ただ、日没時には、午後6時に正確に真西に沈み、モデルどおりにもどる。
* 太陽の向きがモデル曲線に最も近い季節は、午前中は、秋、次いで春と冬であり、午後は、冬が最も近
  接し、春と秋はやや西へずれる。
* 太陽の向きがモデル曲線と極端に離反する季節は夏(といっても、6,7月)である。 午前8時の初
  っぱなからもう30°も遅れていて、モデル曲線が午前6時に真東にあるのに対して、こちらは、2時
  間遅れの8時に真東に位置する。 その後も後追いは変わらず、ずれっぱなしである。 正午に至って
  ようやくほぼ真南を指し正常となる。他の季節が、午前11時には皆が真南にだいぶん近づくのに対し
  て、こちらは、その時刻にやっと南東にあり、太陽はわずか40分の間に45°も駈抜けて11時40
  分ころ真南に位置する。 これでは、短針指南法どころではない。夏の沢登りで私が狼狽し動転した
  はずだ。
  午後も夏は同様にずれっぱなし。0時45分にはもう南西に達し、午後3時には早々と真西に鎮座なさ
  る。午後6時には西北西に沈む。   
  夏殿の御乱行ぶりの跡曲線をしっかり頭に叩き込んでおけば短針指南法も無益とはいえないかもしれな
  い。しかし、まあ、とりあえず夏は敬遠だな・・・私は。
* 夏に対して、冬はどうか。 これが、冬は、けっこういけるのだ。午前9時ころから夕方の5時まで、
  かなり理想どおりのいい曲線を描いてくれる。 いわゆる短針指南法の精度は高いといえる。
* 鈴鹿山系近辺で太陽が真南に位置する時刻は、季節を問わず、正午より10分から20分早く、11時
  45分前後であるようだ。これも記憶しておいて悪くない。
* 結論として、午前中は、夏以外は、ほぼOK.。 午後は、冬が完璧で、春と秋は西へややずれるが日没
  時には真西を指す。   夏は、諦めること
     
                                   以上。

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by mamorefujiwaraMT | 2013-06-30 12:38 | いっぷく亭
5月の花

藤原岳で5月に写した木や草花を例によって冴えない写真でご紹介します。


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アセビ                             エビネ

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ヤマツツジ                          フタバアオイ

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イチリンソウ                          サギゴケ

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カテンソウ                            ムラサキケマン


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by mamorefujiwaraMT | 2013-06-05 16:40 | 花だより
黄禍が小屋まで迫ってきた! --- 帰化植物が蔓延               藤原昧々

前回の拙稿では、藤原岳で唯一残った大貝戸道登山コースの異様な荒れようを報告し、いずれこのコースも、危険を理由に通行禁止になり、藤原岳は入山禁止の山となりはしないかという私の杞憂を記しました。
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今回は、山頂部の異変にふれます。
アブラナ科の帰化植物「ハルザキヤマガラシ」が、鉱山区周辺から藤原岳本体の中心部へと迫ってきました。 キバナノアマナ、ミノコバイモ、キクザキイチリンソウ、アズマイチゲ、フクジュソウなど、在来の山の植物がその勢いに負けて、どんどん姿を消しています。 まるで琵琶湖が黄色のブラックバスで埋まっていくイメージです。

まさに「黄禍」です。
この黄色の花の席捲への私の不安(絶望?)は、けっしてあの黄禍論の「予断と偏見」に満ちたたぐいのものではありません。花はものすごく圧倒的な勢力でせまっており、在来の高山植物なんぞのとても共存・拮抗できるものではありません。 いずれは天狗岩のほうまで、全山に迫っていくでしょう。
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私はかつて、太平洋セメントの採掘鉱区に接する東側の尾根をなんども登ってみたことがあります。 
すでに歩かれた方ならご承知のとおり、鉱区の端にある車道脇や、針金と砕石で押さえてある斜面を通過するときに皆さんはおびただしいカラシナの類を目にされたでしょう。 オオバコ同様に、下界にある植物が工場関係の車のタイヤにくっついて山中に定着したものです。 あたり一面がカラシナの異様な海でした。 見たときは、山の乱開発はこんな副産物も生むのかと思っただけで忘れていました。  
忘れていたその帰化植物の種が、シカの食圧によって土地が荒れた周辺山頂部に鉱区から飛んできてどんどん住みつきだしたのでした。 

山頂の小屋周辺に散生するその草を害草だからと自然科学館の館長さんたちが抜去しに通っておられたのを耳にし感謝しました。 私たちも現場で目にするものは努めて抜いたりしてきました。

この5月25日、科学館主催の自然観察会のおり、山頂小屋から東の三角点方面への草原散策で私たちは一驚し打ちのめされました。 あの広大な山頂部の一面がハルザキヤマガラシで埋めつくされつつあるのです。

見方によってはその風景は、いま町中の土手をうめつくす帰化植物のオオキンケイギクにも似て、一面に広がる黄色の帯はそれはそれで美しいものでした(ただし枯れ残ったあとは醜いとしか言いようがありませんし、残骸は冬期まで残ります)。
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自然は生きものであり、有為転変は「自然」の習いなのでしょうか? 鉱区が広がり、シカは増え、一面の笹と潅木が完全に消滅し、今は裸土とハルザキヤマガラシが地表をおおう。 下の写真は、三角点から300メートルほど西の、無惨にも荒涼たる様になりはてた山頂部の一郭で、ドリーネには空洞も見られます(積雪期の独行は危険!)。 ここも将来は一面、黄色の帯でおおわれるでしょう。
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あの大台ケ原山は関係者の努力によって自然の回復が徐々に見られるようになってきたと聞きます。
まず、シカによる弊害への抜本的対策が第一歩なのではないでしょうか。

ハルザキヤマガラシ: 別名セイヨウヤマガラシ。 ヨーロッパ原産。根生葉は羽状に深裂。上部茎葉は濃緑色で光沢があり、柄はなく葉の基部は耳形で茎を抱く。直立した茎の先端に鮮黄色の4弁花をつける。 なお、在来種である「ヤマガラシ」は中部以北の高山帯に成育する。

                                  2013.06.05    

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