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問題概要   一問一答   平成25年8月改訂3版                                                                                 藤原岳の自然を守る会 編                                

《問い》 
今回の鉱区拡張計画とは、どのような内容なのですか?
《答え》 
これまで太平洋セメント株式会社は、藤原岳の東面と多志田谷の西面を石灰採取のために80年間掘ってきました。 今回の計画は、東面・北面の山頂部(三等三角点周辺)と多志田谷の孫太尾根中腹をさらに50年間掘削してゆこうというものです。
会社は、それぞれを、「山頂鉱区」と「治田鉱区」と呼んでいます。
治田鉱区の場合、孫太尾根じたいが掘られるために登山道は迂回され、景観も当然ながら激変します。 
こちらは、イヌワシの営巣への配慮のため(あるいは会社の資金事情か?)計画はいま中断中です。  
山頂鉱区拡張の場所は、今ハゲ山の東斜面の奥と右側(北面)が対象になり、右奥に禿げ山が広い範囲にのび、上部の尾根は削られ近接の谷が埋まるというイメージか、あるいは標高600mまでがごっそり抉り取られるということか不明ですが、大貝戸集落側から見上げると広大な掘削で恐ろしいほどです。 
近年、御在所山スカイライン、青川峡、藤原・御池岳での、山地性集中豪雨による谷筋の被害と地形変貌は凄まじい。 
土石流はほんとうに防げるのだろうか?

《問い》 
以前は小野田セメントだったと思いますが、会社名が変わったのですか?  
《答え》
そうです。 小野田セメント、浅野セメント、秩父セメントなど従来のいくつかのセメント会社が度々合同合併して平成10年に今の太平洋セメント株式会社が生まれました。 いなべ市にあるのは同社の藤原工場です。 セメント製造、産業廃棄物処理業、運送業、三岐鉄道など営業は多岐にわたります。 なお埼玉県では粘土採掘跡地で高級ゴルフ場を経営しています。 「50年後、藤原山頂でもゴルフ!」。 冗談ですが、山の所有者として可能かもしれません。近年、下の写真のとおり、山頂部は荒廃の一途をたどり、次第に裸地と帰化植物とでおおわれてきており、この惨状を見ると、芝草を植えて冷涼なゴルフ場にでもするしかないとの諦めもちらつきます。
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セメント産業が閉山や離合集散を繰り返してきた背景には、厳しいコスト競争と景気に左右され易い業態、山元鉱山特有の収益圧迫などがあり、山がある限り地域の雇用と経済が保証されるという期待は幻想でしかありません。  ちょうど電源交付金と寄付金に依存する原発立地自治体が突然の原発停止で財政難と雇用の問題に直面したのと似て、予期せぬ閉山による町の停滞を嘆く市町村は全国にいくつも例があり、藤原町の将来も決して楽観的予断を許しません。
その場合、荒廃した山の姿とツタが覆う巨大な工場施設の残骸のみが残ります。 ネット上では全国のセメント工場廃墟めぐりツアーのフィーバーがあり、各地の写真集でにぎわっていますが、関係者の胸のうちを思うと残酷な映像で違和感をおぼえます。
ちなみに、日本のセメント生産量は1996年1億トン弱が2010年約5000万トンへと落ち込み、その2割の1000万トンを毎年海外に輸出しているがその量は今後の東北大震災復興に要される必需総量に匹敵する数字です。(2009年度の世界の生産量は28億トン、藤原工場は約200万トン)
阪神・淡路大震災の例から推算された復興に要するセメント1000万トンが今後5年間に使用されると仮定すると年間ではわずかに200万トン、その間、関係するミキサー車などは東北に集中するために他県では使えず手薄になるために、結局復興需要による生産増加は多くを見込めないようです。

《問い》 
山の掘削拡張によって、どのような問題が発生すると予想されますか?
《答え》
様々な問題が懸念されます。 大まかにまとめますと、
土地改変と自然災害による山麓集落への土石流、洪水被害
騒音と風塵、土中の有害物質(カドミウムなど)の流失と地下水への影響、CO2の増加、
鈴鹿国定公園に隣接する美しい山の景観の喪失
貴重種が多数生息する全国屈指の山の自然生態系が根こそぎ破壊されること
産業廃棄物処理がもたらす環境汚染と住民への健康被害
地下に眠る、鍾乳洞、温泉源の可能性

《問い》 
順をおってお尋ねします。 まず、自然災害の心配とはどうしてですか?
《答え》
山頂の木を切り尾根を削り、石や土を谷に投げすてることにより、気象と山の保水力の激変により、山地性集中豪雨や地震災害で土石流が一気に下部の集落に押し寄せる危険が懸念されます。 また、治水用の遊水池じたいが決壊し大洪水の原因にもなりかねません。 いなべ市長および三重県知事の意見書はこの問題に一切ふれていません。 下の写真は大貝戸道の東谷斜面の崩壊の一部です。 山全体がもろくなっています。
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《問い》 
土石流災害にたいして会社はどのような対策を考えていますか?
《答え》
谷の中腹に、巨大な遊水池(溜め池)を作ることで、豪雨時の流水は充分にくい止められると回答しています。 しかし、地球規模で、あるいは日本列島自体が災害多発の時代周期に入ったとする専門家の指摘や、ここ最近の、異常高温、大型台風や山地集中型豪雨の頻発をみると、必ず「想定外でした」と会社が弁解するような大災害が起きてしまう可能性は非常に高いと心配です。 いま藤原岳山麓では谷に堰堤をさかんに作っていますがすぐに土砂で埋まっている感じです。 谷中腹の崩壊も進行中で、国道306号から現場を見上げてください。 素人でも鳥肌が立ちます。

《問い》 
土中の有害物質流出の可能性とは?
《答え》
鉱区予定地では地下にカドミウムなどの有害物質が存在しており、掘削によってそれらが地下水脈をつうじて予想もされない地域に現れ、農業や住民の健康に影響を及ぼさないとは言い切れません。 
地下水脈は複雑であり、その調査はきわめて困難で時間もかかるため、予定鉱区での調査は充分にはなされていません。カドミウム汚染の危険性は、アセスの審議でも指摘されながら、結局、識者からも行政からも看過され無視された形になりましたが、じつは重大かつ深刻な問題であり、将来、地域に襲いかかってくる危険性が非常に大きい。今春の植物調査でも分類学会の重鎮の方が終始口にされた危惧がこのカドミウムでした。
CO2に関しては、セメント産業は鉄鋼に次ぐ高排出産業であり、日本が国際的な厳しい削減目標にさらされている現状を企業は今後どう受けとめていくのか・・・

《問い》 
会社は生物への影響にたいしてどのような対策を講じる予定ですか?
《答え》
国指定特別天然記念物のイヌワシは現在では県下最後の一つがい*が藤原岳に営巣するに過ぎません。 会社は山頂予定鉱区周辺の木を切ってエサ場となるノウサギ繁殖用の草原を創出すると言います。 
(* 三重野鳥の会の最新報告では3つがいに変わったが、藤原岳の一つがいが最も繁殖成績が優れているそうです。)    また、レッドデータ記載の稀少種の植物や陸貝などは、すべて他の場所への移植で解決できると断言しています。  

《問い》 
その対策で、ほんとうに、イヌワシや貴重な植物、生物が生きのびられるのでしょうか?
《答え》
当該稀少種の生物が特殊圃園に存続さえできたらそれで問題解決かといえば、それは逆転した考えです。   なぜならば、もともとあった、豊かで比類のない恵まれた自然があってこそ、これらの貴重種が多数生息してこられたのですから、一番大事なのは基礎になる周辺の土、水、空気と生態系全体です。 
それらの自然を回復不可能なまでに破壊し尽くしておいて、稀少種のみを人工的な移植で保存できても自然環境上、なんの意味もありませんし、逆に遺伝子上の悪影響が生じ弊害ははかりしれません。
それに、エサ場を人工的に作ったり、特殊な環境にのみ育つ草花の移植を試みても、専門家たちはいずれも失敗するだろうと断言しています。 また、ダンプが埃をまきあげて疾駆する作業現場の近辺で、イヌワシが安心して子育てをするなどとはとても想像できません。  知事意見は貴重種の保全について事業者に厳しい注文をつけました。 県の指導が問われます。

《問い》 
風、空気、水なども心配ですが、自然豊かな表土さえ残せれば何とかなりませんか?
《答え》
そうなのです。 そこで、石灰採掘を表土の破壊なしに進められる坑内掘削にしてくれないかとの質問や要望は多いのです。 しかし、坑内採掘の石炭とは異なり、石灰岩はすべて露天掘りとなり、山の外観そのものが消失することをまず知っておく必要があります。 「黒いダイヤ」の石炭は日本では表土が残りますが、「白いダイヤ」の石灰岩は地形そのものをもぎとり消し去ります。

下の写真は、かつて太平洋セメント等が掘削した北九州の香春岳の現在の景観です。  三つ子山であった右端の山(一の岳)が標高492mから270mまで抉り取られました。 テーブル状の箇所です。
左の三の岳だけで植物は1200種にのぼるそうです。 信仰や伝承の山です。


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《問い》 
会社は、最後には緑化と復元を必ずやりますと回答しておりますが?
《答え》
80年間、掘り続けてきて、藤原岳のどこかで緑の復元がなされていますか? 一部クロマツの植栽があるそうです。 クロマツです。 多志田の谷を荒れるにまかせ、川は少しの雨でも濁水が渦巻き増水します。 東の三角斜面は御覧のとおりの禿げ山のままです。 努力のかけらもうかがえません。 全国の同社のセメント山の姿はネットの写真などで見えます。
太平洋セメントは例外でしょうが、一般に日本の一部上場企業の平均存続年数がどれほどかご存知ですか? ましてや今は激動の日本です。 仮に会社が存続できても50年も経てば、企業の内容も陣容も理念もまったく変わっています。 過去20年間でも、セメント産業は、構造不況、バブル景気、公共事業の縮小と、もっとも景気に左右される不安定産業で、譲渡・閉鎖・解散と合併に明け暮れてきました。 会社の実態そのものが消滅・激変しています。 それに、企業の収益に反するだけの緑化事業をどこまで真剣にやってくれるのか。 掘れるだけ掘ってあとは不況や採算面の理由などで放置されるだけではないでしょうか。  上の香春岳もコスト高の理由から太平洋セメントは鉱業権をあの麻生グループに譲渡して関係を切りました。  
他社とは言え、近くの白石鉱山跡の何十年も放置されたままの工場施設をご覧ください。 錆びた有刺鉄線とツタが這いまわり、荒れるがまま見捨てられてきました。 (ただ、近年、PCB流出による土壌汚染で大問題になり施設撤去の計画がやっと出ています。)
また、一般大手産廃会社の環境配慮や施策に対する社会的信頼はまだ確立しておりません。

《問い》 
セメント製造と産業廃棄物処理とは、なぜ関係があるのですか?
《答え》
セメントは石灰を主原料にして製造されますが、石灰が成分のすべてではなくて或るパーセントまでは混入物の使用が必要です。 そこで、高炉スラグや下水処理汚泥をセメントに一部混ぜることで産業廃棄物の減量が可能になります。 また、セメントは石灰を高温度で焼いて製造するので、有害物質や重金属などの廃棄物でも高温で焼却でき、都合がいいのです。 また焼却用燃料に廃油や廃タイヤなどを利用できます。 埼玉の武甲山を掘る秩父工場でも、三重県の藤原工場でも、営業の中心はセメントから産廃処理に移行していると言われています。 貢献事業ではありますが、県外からも続々持ち込まれる産廃量は膨大であり一部住民からは健康不安の声が上がっています。

《問い》 
一企業が営利目的で、自然豊かな山を自由に破壊することが許されるのでしょうか?
《答え》
できます。 先にも述べた鉱業法という法律が生きています。 太平洋セメントは山の所有権も持っているのだそうですが、仮に所有していなくても鉱業権さえあれば、所有者に通告なしに自由に掘ることができるそうです。 鉱業権は隣接する御池岳にも及んでいます。 鉱業法によって、山そのものが消えたり、上半分がちょん切られたりしますが、なによりも不幸なことは、日本全国の石灰山のほとんどが学術上超貴重な動植物生態系に恵まれていたり、歴史的な民俗・信仰の対象となってきたことです。(香春岳三の岳だけで植物が1200種)。 
そうした山の無惨な姿は、必要産業に依存する私たちの心に刺さるトゲだとも思えます。

《問い》 
自然保護が尊重される時代となったのになぜそのような鉱業法がまかり通っているのですか?
《答え》
鉱業法は戦後の我が国経済復興の国家的要請から、石炭採掘を最優先するために生まれた法律です。 
地域の公共の福祉(生活、災害、自然)よりも資源を強制的に確保する国益が優先された時代の法律です。 ですから自然環境の保全を重視する現代の国民の要請とはすっかり乖離したままで改正されることもなく生き続け強権をふるっている時代遅れの法律といえましょう。 この法律のおかげで、森林法、公園法、地方自治体の要請などを無視した一企業の独占的な山の破壊が許されるのです。 鉱業法の改正を要望する地方議会の声は三重県下でも起こっています。
こんな例もありました。 世界遺産の今帰仁城跡近くでの採掘権設定を、沖縄県外のセメント会社が国に申請した時(2003年)に、地元住民4000名の反対署名を前にして、沖縄事務局経済産業部環境資源課課長は、「鉱業権に関しては出願者の利益を確保するようにとの国の通達がある。 行政としては法律に基づき、適正かつ公正に対処するしかない」と突っぱねたそうです(「琉球新報」)。
聖地、古里、天然記念物生息地、遺跡、信仰よりも鉱業権が優位にあるわけです。
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《問い》 
地元の住民はどう思い、どんな態度を表明していますか?
《答え》
残念ながら組織だった反対表明はほとんどありません。  これまで藤原工場の存在と歴史は、北勢町や藤原町の地元経済にふかく関与し、関連する下請けをふくめ少なからぬ地元社員がいて、雇用、商業、地方行政に大きな影響を与えてきました。近年は、閉鎖された他工場の社員の流入や税収貢献の低下などその影響力は往時より著しく落ちたとはいえ、その存在と意義は決して軽々に論じられません。  一方で、山が荒れ、放置されたことで、山林業・農業・果樹などの一次産業が衰退して、自然と共存し自然を生かす従来の町の生活スタイルは失われました。
セメント産業の場合、資源は無尽蔵なわけですが、燃料高障害、安価な中国製品の影響や、セメント産業自体が経済動向に左右されやすい体質から、突然に工場が閉鎖され地域の経済が途端に行き詰まる例が全国各地にあります。 
景観の荒廃、産廃による健康被害も憂慮され、土砂災害などの心配も尽きません。 地域の将来への共存のあり方として難しく複雑な側面があります。
住民の間には地域の融和を最優先する美風が残っていて、一部に疑問とする意見があっても表面化をはばかる空気があります。 公開の署名運動には協力できないという住民の声もあります。

《問い》 
開発する側にとって、最も障害になり恐れることは何でしょうか?
《答え》
それはなによりも《地元の反対表明》が一番ですが、次はおそらく、イヌワシ、鍾乳洞、温泉の3つでしょうか。   今回、イヌワシ以外の希少生物への対処も難問です。
イヌワシは国指定特別天然記念物であり、現在、藤原岳の一つがいが県下最後の絶滅危惧種として生息しています。 生息地は全国のどこであれ開発は困難になります。 また、自然保護運動に果たす日本野鳥の会の実績は目覚ましいものがあり、藤前干潟につづき、今回も野鳥の会三重支部の活動は治田鉱山区の中止に大きな影響を与えました。
次に、鍾乳洞は石灰岩の山の地下に多くあり、生物・地質研究と国民の観光自然資源として重視され、発見されると様々な規制のために採掘はストップします。 会社は他の鉱山でも鍾乳洞発見の例はなかったとし、今回のアセスでも鍾乳洞調査は困難としています。 ところが、あるゼネコンの現場監督だった方の証言では、県下の工事現場で文化遺跡類が発見されると、工事の規制を避けるために逆に隠して急いで掘り進めたとのことで、そんな建設会社は多いそうです。(例外の話)  
藤原岳は代表的な石灰岩カルスト地形の山ですから鍾乳洞は存在するでしょう。  
温泉は、国民の重要な健康・公園資源として、発見されると開発がストップされることがあります。 
じつは治田鉱区内にその可能性が指摘されています。  青川峡から孫太尾根(治田鉱区)に突き上げる支谷のひとつに、「ユノタニ」があり、遡行登山をすると途中に大岩が浴槽のかたちをした滝壺が確かにあり、昔、坑夫たちがそこで汗を流したという話が伝わっています。 さらに多志田谷には硫化水素泉が出て、お不動尊があり湯屋が使われていたそうです。 埋没しているにしろ湧出の可能性があります。 冬期の積雪斜面から上がる湯気を目撃した猟師の証言もあり、藤原岳周辺には温泉の泉源が眠っている可能性があり、鍾乳洞の存在と併せて会社はしっかりと調査をする必要があります。

《問い》 
現在、アセスメントなど、開発問題はどうなっていますか
《答え》
アセスメントについては〈三重県環境影響評価委員会〉という会合があり、事業者側と県の関係者らとともに質疑応答をして環境への影響を何年間も審議してきました。 委員は、動植物、騒音、気象、水質、地形、化学工学、景観、などの様々な分野の専門家20名で構成されました。 審議経過の概要等は、当会のブログや県の広報をご覧ください。 議論は百出しました。

平成24年1月に委員会の答申があり、1月26日に県知事による意見書がネットにも公表されました。
その内容は〈藤原岳の自然を守る会〉のブログでも全文が掲載されています。
県は事実上のゴーサインを出しましたが、事業者に対してさまざまな環境保全上の厳しい条件を課しました。
「美しい藤原岳の保全」に向けた私たちの運動は、いま序盤を終え、いよいよ長い本番に入りました。 県には、事業者に課した条件が全うされるよう指導等頑張ってほしいし、審議会の先生方にも、答申に向け注がれた大変なご努力の成果を最後まで見届けるべく現場のモニターや事業者への働きかけを切に望みます。

なお、県への意見、要望は下記まで
〒514-8570 三重県津市広明町13 
県環境森林部自然環境課(059-224-2627) か、 
県環境森林部水質改善室(059-224-3070)

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例によって、花のないものも含めて、藤原岳で写した樹木と草花の写真を紹介します。
中には、貴重なものもふくまれています。

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クモノスシダ                         ヤセホタルサイコ

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ウスギナツノタムラソウ                  キヌタソウ

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ツルガシワ                          エゾスズラン

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クモキリソウ                         ツルニガクサ

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ギンレイカ(ミヤマタゴボウ)                アキノタムラソウ
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by mamorefujiwaraMT | 2013-08-07 15:40 | 花だより
野外での簡易測定  野外測定あそび (全7話)    藤原 昧々 (桑名山歩会HPより転載)
この木の高さはどのくらい?

〈野外測定あそび その1〉 
高さを測る
このスギの木は高さ17m、あの滝は高さ24m、このビルは高さ60mなどと、ものの高さに興味をもつことは少なくない。 偉大なものを見上げるのは気持ちがいい。 山などを歩いていて、出会う大きな樹木やりっぱな滝を見て感動し、高さはいったい何メートルあるのだろうかと、私なんかは俄然知りたくなる方である。 
ところが、である。 出会ったブナの木が高さ23mとか無名滝が16mだと仮にわかったとして、それがいったいどれだけ、私の実感や他の知識とに幾たりか深くつながるかと自問すると、なあんにもないのであり、ただ、無機質な数字を知った抽象的な事象だけが私の自己満足を充たしてくれるに過ぎないことが多い。 「大人は数字が大好きだ。」(サンテグジュペリ)の見本みたい。 「その子はどんな遊びが好き?」と聞くよりも、「その子、何人兄弟? 歳いくつ?」と尋ねたりするようなものか。 
この、数字を知りたがって判ればそれで満足という性癖は、女性よりも男性に多いそうです。 いつも山に同行してくれる妻は、まるきり数字に無関心です。

高さを具体的に実感し比較するものといったら、自宅の屋根、電柱、マンションの階数などになろうか。 桑名市市街の高めの電柱は高さ13m前後、マンションの階高は約3m、高層オフィスビルの階高は4m余が多いと言われているので、15mの津波はマンション5階ていどまで来る。 50階建てのビルなら高さは約200mとなる。 きちんと決まっている訳ではないが。

樹木の高さの測定は、ふつう、自然の生態を科学的に研究したり、森林管理や山林業のため樹木の総体積などの実態調査をするために行なわれるものであり、測定器具も精密な機器が多種開発されている。
私の場合、それらとは異なり、山野を歩いていて見上げるものの高さが知りたいという単なる気まぐれと自己満足のためのものである。 知ってどうなるものでもない。でも知りたいのである。 
測定器具は、安く簡単に自作でき、携行しやすいものでなければならない。 どうしたらいいのかを考えることがじつに楽しい。 以下、全七話にわたってながながと書いていきたい。
さて、測高には、距離と角度が関係する。 まず、距離を測る、という意味で、歩測にふれてみたい。

      
歩測
歩測は、複歩で数える。 たとえば、左足を出し右足を出して両足で1複歩とする。
自分の足で、10mは何複歩か、100mは何複歩か知っていると便利です。 複数回ためしてみて平均値をだす。 距離を出すときに巻尺があれば助かりますが、私は規則正しい歩道のタイルやレンガの敷石、あるいは石杭などを利用して距離を知るようにしている。

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左の写真をごらんください。 道路の車道に一部、長さ60cmの舗石が敷いてあり、歩道は30cm正方のレンガになっており、車道との境に灰色のコンクリート杭が3mおきにあり、奥には茶色の杭が1.2mおきにあるのがわかります。 杭の間隔は舗石の数で容易にわかります。 


この舗道では、灰色コンクリート杭17本から1mを引いた位置が距離50mになる。
歩いてみると私は36複歩弱を要した。 倍にして100mが71複歩です。

私のばあい、むかしは約66複歩が100mでした。 そのように脚に憶えさせたのです。
66複歩(1複歩1.5m)が100mにあたると、66の半分の33を足すと99m(≒100m)となり、40複歩なら 40+20=60mと、半分を足すと実際の距離になり便利です。   
100mが66複歩ならば、 複歩数+1/2複歩数=距離

しかし私の場合、歩幅も人格も、加齢と性格のゆがみのために萎縮し狭まる一方で、現在は100mに71複歩(1複歩1.41m)が必要になりました。 練習をして66複歩に戻るよう体に憶えさせるといいのでしょうがそれは困難です。  まあ、71複歩で歩測すると、1歩が70cm、1複歩が1.4m、逆に1mは0.7複歩、10mは7複歩と憶えやすいのは助かります。 私の場合、複歩の数を倍にして(単歩数)、それを7倍すればよろしいのです。
なお、ふつうの人なら練習で66複歩は習得できます。やってみてください。 価値ありです。

本文を記すにあたって、念のためネットの「歩測」記事を参照させていただいた。
驚いたことに、歩測はゴルフで日常的に使われているのだ。 ボールの位置からカップまで歩いて歩測することでパッティングの振り巾を決めるといいます。
1単歩幅が1ヤード(91.44cm)になるようにがんばっている日本人ゴルファーもいるようです。 長身のタイガーウッズなら楽勝でしょう。
ヤード歩き〉だと1複歩が183cmになり、100mを54~55複歩で、10mを5複歩半で歩かなければなりません。 小柄な日本人の私でも歩けるものでしょうか? 
京都へ行ったとき、平安神宮まえの歩道が縦横30cmの舗石で貼られていました。 舗石3個分を1歩にして歩けばいいわけで、やってみましたが、すこし無理すれば歩けないことはありません。 ただしこれを正確に体に憶えこませるのは私のばあい無理でしょう。
30cmの舗石の道や広場などは街の周辺でけっこう目につくものです。 いちど「ヤード歩き」を試されてはいかがですか?

こんな自衛隊の記事も目についた。
隊員たちに100mが何複歩にあたるかを各人に把握させた上で、平地の徒歩訓練を行なうという。 長い靴ひもを腰にくくりつけておいて、100m歩くごとにひもに結び目をつけさせていくのです。 目的地に着いて、その結び目の数を数えれば歩いた距離が正確にわかります。
まさに、井上やすし著「四千万歩の男」にも出てきますが、伊能忠敬が地図測量に使用した方法と同じですね。 

歩測は、あくまで平地にかぎられることが、山地での利用を妨げる原因になっています。 実際、登りと下りの勾配を歩く場合は、歩幅は大きく異なります。 また、薮のなかや湿地、凹凸の状態、疲労によっても大きく変化する。 林道とか登降の少ない平坦な山地以外の土地では適切に修正してつかう必要があります。 

地図の等高線をながめて、登りと下りでどのような差が生じるのか試してみてその結果を地図上で測った距離と比較し、自分の誤差の程度をおおよそ知っておくといいのでしょうが、そこまでやるか、です。
そんなとき、安価な歩数計を利用してみてはいかがですか。

人の歩幅は、「身長(cm)-100cm=歩幅(cm)が目安」との記事も目につきました。 この公式は、私の経験ではあまり正確、有用とはおもえません。
むしろ、身長と歩幅の関係について琉球大学農学部に在籍の男女学生を調査した興味ふかい研究結果がありました。 それによると
男子 : 歩幅(m)=0.38×身長(m)+0.09
女子 : 歩幅(m)=0.36×身長(m)+0.16
全体 : 歩幅(m)=0.26×身長(m)+0.3  〈従来の一般式〉
と、あります。 いずれにしろ、歩幅は個人差が大きいので参考までに。

歩測の精度を補うもの
20mていどの距離ならば巻尺があれば済みますが、高価だし、重い上にかさばります。 そこで細ひもを用意したらどうでしょう。 
ナイロン製のテント用 細ひも3mm×10m を器具といっしょに携行するのです。 この10mというのは利点があり、樹高をだすときに、計算器をつかわずともすぐに結果がわかることです。  たとえば、木から10mの距離でtan37°ならば、関数表の0.75から樹高は10×0.75+1.5(眼高)で9mだと、暗算でだせます。 
この細ひもに1mごとのマークをマジックなどでつけておくと更に便利でしょう。

余談ですが、私はこれまでの山歩きで、未知のルートや沢がからんだ地形に入りそうなときは、その日の状況に応じて、径4mm×15m(300g)か、径6mm×15m(500g)のナイロンひもをザックにしのばせていました。 悪場や急傾斜地を通過しなければならないときの安全確保の補助具のためですが、かさばらず軽くて、携行上まったく負担になりません。 (そのほか、超軽量ツエルトやゴアテックスのシュラフカバーも万一のときのお助け品です。)
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巻き尺がわりのこの3mmの細ひも。 掌に収まる大きさ。二重、三重で使用すれば悪場での支えやバランスの確保用に、そうとうな威力を発揮するし、なにかと重宝なこともあり、携行の邪魔にもなりません(10mでわずか65g)。

先ほどふれたとおり、市街地で役だつものが、舗道の舗石やレンガ、装飾用の杭です。 一定の長さを保って配置されているので、その数を数えることで、正確な長さや距離を知ることができます。

つぎに、目測があります。
弓道や射撃スポーツの関係者からの興味ふかい記事があります。
彼らは日頃から、目測の正確化を訓練されているようです。 1/25000地形図の読図でも、図測と目測が一致せず困る経験がありますが、目測を歩測の結果と照合して、目測の精度を上げる努力をすると良いと感じました。
参考の記事では、目測 は6分の1、歩測は30分の1程度の誤差があり、そのため、距離100mに対しては、目測で約17m、歩測では約3mの誤差があるそうです。
道を歩いている時、電柱など適当に目標を定め距離を目測し、実際に歩いて歩測で確認するといった方法になるが、繰り返すことでかなり精度を上げることができる、という。 練習次第では30m以内ならほぼ正確に読めるようになるそうだ!

対象を見たときに自分との中間点をとりそこまでの距離を2倍に、距離が長いときはさらにその中間点をとって4倍して、全体の距離を予想する方法も有効だ。 電柱の高さでも、上までの半分、そのまた半分、半分と分割して、背丈に近くなった数値を決めて4倍とか8倍にする方法であり、滝の高さなど、滝つぼが前にはだかって距離が測れないときによく使う手である。

本稿のテーマは樹高の測定です。 ローテク、簡便な樹高測定といえばやはり「目測」にかなうものはありますまい。 長い測高ポールを持たずに目測をする場合,2メートルポールや同行者の身長などを比較基準にすることと思います。 しかしこの際,例えば2メートルポールを樹木の根元に立てて,根元から梢端に向かって「2・4・6・8・・・nメートル」と数えていくのは誤差が大きくなってしまう方法だと書かれています。 それよりも,樹木全体をじっくりと眺めまわし「樹高の1/2・1/4・1/8・1/16・・・1/n」の要領で適当な大きさまで順次2分割したうえで,分割後の長さを比較目測し,その値をn倍にして元の長さに戻すほうがよい」ようです。 これだけでも随分とましな目測ができるようになるそうです。                    (以下、全文は、その2 から その7 まであります。)

            《 全文の参考資料 》

五百沢智也「新版・登山者のための地形図読本」山と渓谷社 S49.4
伊藤幸司「地図を歩く手帳」山と渓谷社 S55.8
田代・藤本他「山の地図と地形」ヤマケイ登山学校⑮ H8.1
田代博他「パソコンで楽しむ山と地図」実業の日本社1997.10
田代博「『富士見』の謎」祥伝社新書2011
平塚晶人「マップブック」Be-Palアウトドアブックレット⑪ 1996.12
地図測量たいけん教室3 おもしろ地図と測量 2005.
(財)日本地図センター 月刊「地図中心」 各部
(以下 Netより)
(財)日本地図センター 週刊「メール地図中心」 各部
琉球大学農学部紀要「身長と歩幅の相関に関する一考察」 1998.12
「パッティングの歩測 +72ゴルフレッスン」
「もと自衛官のつぶやき」
(財)日本地図センター 地図の散歩道 2009.10.01
「オットとツマのArchery日記」
群馬県林業試験場  子ども森林科学講座 樹高測定編
鈴鹿川流域森林の健康診断実行委員 伊藤
鈴鹿式樹高測定器 緑茶式 オレオレ式改良型
NPOパソコンサポート亀山 伊藤幸一
巨樹巨木探索シリーズ 金袋山  小川武 H21.10.11記
GI Supply 株式会社 HP   タンジェントハイトゲージ
有限会社山口商店 樹高測定器
高教組2002年教科研究会 カクシリ器を作ろう 伊藤潤一先生
奥多摩サポレン・ブログ  2006.5.3 樹高測定器を自作
patent jp. com  鈴木哲三 特許 樹高測定器 H4.4.10
経営研究室 細田和男
(第1話 おわり)


〈野外測定あそび その2〉 視・地平距離
視・地平距離 を知る   ・・・・ ちょっと道草。 脱線編。

波打ち際にたって、海の水平線を見ます。 水平線までの距離はどれほどでしょうか。
計算する公式があります。
   視・地平距離(km)=3.85√海面からの視る高さ(m)
   
私の場合、身長が163cmですから、目の高さは145cmだとすると、
   視・地平距離=3.85√1.45 m=3.85×1.204=4.63 km で、約4.5km です。

身長は個人差がありますから、測るときに、子供になった気持ちで、目の高さをおおよそ1mの位置にもってきて水平線を視ることにすれば、√1=1ですから、常に3.85kmとなり、 約4km=1里、となります。 
子供や大人が立って、海の遠くの水平線を眺めるとき、その地平線までの距離は4~5kmであります。
「シェーン」や「大高原の小さな家」の映画シーンで広大な平原が現れますがアメリカ人の視線は平地でなら地平線まで約5kmとなります。

では、海抜36mの岬の灯台から見おろしたとしますと、その場合の水平線までの距離はどうでしょうか。
    3.85×√36=3.85×6=23 で、23 km であることがわかります。

次に、標高1000 mの鈴鹿の山の頂上から伊勢湾の湾口を見わたして水平線が見られたと仮定した場合はどうでしょうか。
    3.85√1000=3.85×31.623=121.75 km となります。 
小説「塩騒」で有名な伊良湖水道・神島の港からは藤原岳の雪の山頂が見えます。 両者の距離を地図で読みとると約83㎞ですので、藤原岳からならば、おそらく伊勢湾口をそうとう越え出た外洋あたりになります。

とにかく、3.85という数字を憶えておくことがたいせつです。 
語呂合わせは、「都(ミヤコ、3.85)は遥か地平線」とでもなりましょうか。 大雑把な計算なら、4×√ でもよろしいでしょう。
都(ミヤコ、385)にルーツ、メダカ(眼高)棲む」 は、ちょっと度をこしたこじつけか。

さて、岐阜県海津市南濃町の月見寺「行基寺」から桑名方面の伊勢湾海上を見た場合、寺の海抜を126mだとすると、見える海の地平線までの距離は、√126=11.2 なので 3.85×11.2=43 km となり、地形図で調べると、鈴鹿市沖合の中部国際空港の手前あたりだとわかります。

次はもう少し条件が複雑なことを調べます。
帆柱のトップが海からの高さ16mの高さである船が海の地平線に消えていくのが目で視えたとすると、海の地平線に帆柱の先端が消えた時の船までの距離はどうなるのでしょうか。

そのための公式は、視る側と視られる側の各 視・地平距離の和、で表されます。
即ち、3.85√H1+3.85√H2=3.85(√H1+√H2) となります。

さっきの船の場合は 3.85√1.45+3.85√16=4.63+15.4=20.03 で約20km となります。 
ずいぶん遠くまで離れて視えることがわかります。

では、応用問題をひとつ。 いま、標高1000mの鈴鹿の山から標高3776mの富士山の頂上が遮るものなく視認できたと仮定すれば、その両者の距離は理論上 何kmになるのでしょうか。
    3.85(√1000+√3776)=3.85×(31.6+61.45)=358.24 で、約360 kmとでました。

この計算で、仮に観察者が太平洋の海上に漂う筏の上に伏して富士山山頂部を見ることができたとすると、
    3.85(√0+√3776)=236 で、理論上、236km地点から徐々に、富士山の尖端から全貌が見えてくることになります。
なお、日本各地から見る実際の富士山は、途中に遮る山や障害があり、なかなか見通しがきかないでしょう。 
最遠望の地は、田代博氏の著作などによれば、和歌山県は色川富士見峠とのことで、その距離は
323kmであるといいます。

さらに二個、問題を解いてみます。
先ほどの帆柱の先端が16mの高さの船が太平洋を日本に向かって航海中だったとします。 
帆柱先端の見張りの船員が望遠鏡で海上に富士山の山頂を初めて視認できるのは、
    3.85×(4+61.45)=252 で、252kmの海上の地点です。

伊豆大島の三原山(764m)の場合は、
    3.85×(4+27.64)=121.8 で、122kmの地点となります。 
                                                (第2話 おわり) 


〈野外測定あそび その3〉 腕の角度計
   
腕を伸ばし、野外で角度を知る

はるか遠くのものの位置関係を角度で表現することは多い。
夜空を仰いで星を見ます。 仮にAの星とBの星とがあるとき、私たちは、Bの星の位置をAから真南に15cmとか北東方向に20cmのところにある、とは絶対に?言いません。 Aより真南に15° とか北東方向に20° 離れた位置にある、と言います(それも言わないかも..... )。  
星と星の角度は、腕をのばして手の巾や棒きれを使う方法で、おおざっぱに調べることができます。
ここで、眼から腕先までの距離を約60cmに保つことが、たいへん大事な意味をもってきます。 
すこし練習すれば、たいていの人は60cmの〈間隔〉の〈感覚〉がつかめると思います。

眼から腕先までを60cmに
やや小柄な日本人男性が腕を前に突き出したとき、眼から手・拳までの距離は 約60cmです。
この60cmという距離は、たいへん便利な意味をもっています。 なぜでしょうか?
その理由をある日突然考えついた私は有頂天になりました。 「おれはついに天才になった」(バルザック)。

理由を考えてみましょう。
半径60cmの円周の長さは 2πrで、2×3.14×60=376.8cm です。
そこで、円周は360°ですから、
1°=376.8cm÷360=1.047cm となり、かぎりなく1° が1cm に近づき、しごく単純明解になってくれます。
すなわち、逆に眼から60cm 離れた位置では、1cm=1°、2cm=2°、6cm=6°、
20cm=20° にあたります。
眼より60cmの位置では、Ncm = N° にだいたい相当する。
厳密には、20cmといってもこれは円弧の長さで、1.047cm×20=約21cm、が正しいのですが、 
21cm 〉20cm となり、かえって直線が20cm となる方が問題はすくなくなります。
さて、60cmよりも腕の距離が長くなる人は、ひじを曲げ加減にして60cmになる位置を調べ、そのひじの曲がる感覚をつかんでおいて下さい。 小柄な女性の場合は思いきり手を突きだす必要がありそうです。
腕をのばして、手甲を立てたとき、指と指がつくる巾が10cmの人は、その巾が10° を示すことになります。 5本の指を左右いっぱいに広げたとき親指と小指の先端の巾が20cmの人は、その広げた指の巾が20° を示すことになります。
このように、指の巾で、星と星の離れた位置の巾がわかれば、両者の位置のおおよその角度は簡単にわかります。 さらには、この原理を応用することで、野外で見る対象物の〈長さ〉や〈高さ〉を腕をのばして手や定規や棒で測ることもできます。 


身体定規
自分の体をつかって長さを知る方法は、野外では便利なことが多いものです。
私の場合、一般の成人男性よりも小さいサイズになりますが、地図上の距離や対象物の長さや高さを簡便に知りたいときによく利用しています。 
私の実例を写真でいくつか紹介いたします。  
a0253180_16534021.jpga0253180_1655159.jpga0253180_1657343.jpga0253180_16583387.jpg


1. 2cm  親指の横巾 (写真省略) 
2. 6cm  人差指と小指を平行に立てたときの横巾 (左ー1)
3. 10cm   〃  をいっぱいに拡げたときの、両指先端内側の巾 (左-2)
4. 15cm  親指と人差指をいっぱいに拡げたときの横巾 (左-3)
5. 20cm  親指と小指をいっぱいに拡げたときの横巾 (右端)
6. 60cm  片腕を伸ばしたときの拳と肩の距離 
7. 160cm 両手・両腕を左右にいっぱい伸ばしたときの指先端の距離 
これは、日本古来の慣用尺度で、5尺(1.5m)か主に6尺(1.8m)をさし、縄や釣り糸の長さ、水深に使われました。 長身の男性だと180cm(1間=6尺)となり便利ですが、私は小柄なので残念です。 ふつう身長と一致する、とされています。

国土地理院1/25000 地形図上では1cmが250mですので、2.の6cmは、1.5kmに相当し、実距離を知るのに私の場合とても重宝します。

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by mamorefujiwaraMT | 2013-08-05 14:56 | いっぷく亭
野外での簡易測定あそび  (全7話)                       藤原 昧々    
〈野外測定あそび その6〉 滝や対岸の木     
滝や、対岸の木を測る
高さの計測には、目的物までの距離の測定が必要です。 しかし、対象が、川の対岸の立木とか、滝壺の奥の滝となると、距離が調べられないので、高さの計測は不可能になります。
a0253180_11292122.jpg
私が10年ほど以前に、小遣いを貯め数万円を奮発して購入した〈距離計〉が右側の写真にある逸物です。 
現在地の確認のために向こう側の尾根のピークまでの距離を測ったり、御池岳平頂部の精細図の作成を志したりした折に欲しくなった計器です。 写真のとおり、双眼鏡形式になっており、目指す物に赤外線を発射して反射する時間で距離を計測します。 数百mの距離までを誤差1mていどで測ることができます。 

高台から、眼下の市庁舎や病院までの距離を測ったり、大河を行く船までの距離を即座に精確に測定してくれます。 ただし「親子関係」や「夫婦関係」の距離などはまったく計測できないらしい。 
更にこの距離計の弱点は、小さいもの、細いものへの照準がかなり困難なこと、茂った葉などに覆われた樹幹への距離が正確に測れないことです。 岩のような反射率の高い滝の場合、高さの測定などにはこの道具を持参して、距離測定の代用ができます。
仮に底部と最頂部までの各距離が測定できれば、じつは仰角や俯角の測定は不要になります。
下図にあるとおり、①のように、ピタゴラスの定理により、距離がだせれば、計算器だけで高さがわかります。
昨今、巷間では先に述べた最新のiPhoneがあり、無料か安価なアプリケーションを使用すれば、傾斜地など複雑な条件でも、測定が解決できるのかもしれません。
というのは、傾斜地から測定する場合には眼高が変化するために、木や滝の基部と頂部までの距離と、両者の仰角と俯角の和(θ)の数値が必要ですが、それらが測れれば、②の式、あるいは第1章の公式によって、
a0253180_10114571.jpg
これも計算器で樹高や滝の高さの数値を得ることができます。
最新のiPhoneがやっているのは、これらの理屈の応用だと私は想像しています。
右の図で、①の計算例を示してみましょう。
仮に、木までの距離(a) が14mで、最頂部までの距離が17.5mならば、
hの2乗=17.5×17.5-14×14=110.25 
110.25の平方根は10.5なので、樹高は1.5+10.5=12.0 で、12.0mです。

②の計算例もひとつ。
仮に、傾斜地から見て、木の基部までの距離aが14.5m、最頂部までの距離bが17.5m。
木の基部への俯角が7°、最頂部への仰角が33°と測定されますと、
H =14.5×14.5+17.5×17.5-2×14.5×17.5×Cos(7+33)°
=210.25+306.25-507.5×Cos40°
Cos40°=0.766なので、計算すると、樹高は127.755mの平方根、11.3mと出ました。
a0253180_959651.jpg
本図に基づいて①の例(H=1.5+h)を、②の公式でhをだす方法で計算してみます。
つまり、aが14m、bが17.5m、俯角0°と仰角33°の和が33°という設定です。
h =14×14+17.5×17.5-2×14×17.5×Cos33°
=196+306.25-490×Cos33° Cos33°=0.839なので、計算すると、
hは91.14の平方根9.55なので
求める樹高=1.5+9.55=11.05  
で、11.05mと計算されました。

もうひとつ、これを、H=L×(Tanα+Tanβ)の公式で計算してみます。
関数表によれば、Tan7°=0.123、
Tan33°=0.675、ですので
H=(a)×(Tan7°+Tan33°)
=14×(0.123+0.675)
=11.17で、
樹高=11.17mと計算されました。
4例のうち、最初のピタゴラスの定理の計算
だけが少々数値が多めにでましたが、これは
いずれも仮の数値の設定で生じたものですので
多少の相違はご了承ください。
a0253180_1002849.jpg
今度は、第5章の例3の図に基づいて、
樹高の計算をしてみましょう。
あのときは、比例計算の式で計算し、
樹高が12mとでましたね。

①の計算例でやってみます。
仮に、木までの距離(a) が18mで、最頂部
までの距離が21mならば、
21×21-18×18=117 の平方根は10.8なので、
樹高は1.5+10.8=12.3m とでました。


②の計算例ではどうでしょうか。仮に、傾斜地から見て、木の基部までの距離が18.3m、最頂部までの距離が21m。 木の基部への俯角が5°、最頂部への仰角が30°と測定されると、
18.3×18.3+21×21-2×18.3×21×Cos(5+30)°
=335+441-768.6×Cos35°
Cos35°=0.82なので、計算すると、樹高は146mの平方根、12.1mとでました。

この例を、H=L×(Tanα+Tanβ)の公式で計算してみます。
関数表によれば、Tan5°=0.088、 Tan30°=0.577、ですので
H=(a)×(Tan5°+Tan30°)=18×(0.088+0.577)=11.97で、
樹高=11.97m と計算されました。

以上、4例とも、どの方式によっても、樹高はきわめて似かよった数値で計算され、その結果の見事な符合には我ながら驚かざるをえませんでした。 算数はおもしろい。

                                 (第6話 おわり)


〈野外測定あそび その7〉 実践編                                      
実践 編
さて、手定規、ピッケル定規、45度固定式樹高器、仰角測定樹高器など各種簡易測定器を製作し、ひも計測や歩測も大丈夫になりましたから、いよいよ野外での実験です。

① 電信棒
測定した電信棒には全長16mと記してありましたから、地上部は13.3mです。 
私の簡易樹高計の精度はどうでしょうか。
電信棒の先端部を45度固定式三角定規樹高計でのぞき、下垂する錘が定規の垂線とぴったり一致する場所から、電柱までの距離を歩測で測ると、11.5m(8複歩+20cm)でした。  
距離11.5mに眼高1.5mを加えた結果、13mという高さが得られました。
きわめてピッタリの結果で、できすぎの感がします。 

② 住宅
写真の瀟洒な(?)住宅は、たて60cmのパネルが12枚貼ってあり、その他の部分を約1mとみて、高さは8.2mと判断しました。 
a0253180_11314341.jpg
腕を伸ばして手をひらいた縦巾(20cm)が家の全高と一致する地点の家からの距離は19mでした。 
さあ、あの「見ろよ(0.364)」の登場です。 
19×0.364=約7  
立っている場所が道路より50cmほど低いので眼高を1mとすると高さは8mとなり、今回もけっこういい線をいきました。 手巾測定法もあなどれませんよ。


③ 桑名市太夫の大楠
この木は、説明の看板によると、樹高は27m、枝張りが26~28mという堂々たる巨木です。 
距離46mの位置から、分度器樹高計で仰角を測ると 27°とでました。 tan27°は、測定器貼付の表では、0.5095ですので23mとなり、眼高1.5mを加えて24.5mとなりました。
この数字を近いとみるか否か。 大木の計測は異同が生じやすく、とくに古い計測値は精度に問題が多いので、看板の27mの数値を絶対とみなさなければ、これでまあ良しといたしましょう。
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④ 走井山のイチョウ
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こんどは、まったく樹高がわかっていない公園のイチョウを三角定規樹高計で測ってみました。
広場があり、45°固定式でいけそうなので、のぞいて一致する位置と木までの距離を歩測すると10複歩(14m)とプラス1mでした。 
つまり、15mに眼高1.5mを加えて、樹高は16.5mとだしました。 
正解は不明。

⑤ 京都平安神宮の大鳥居
画家パウル・クレーの展覧会を見に京都にゆきました。 会場前は、平安神宮への入口にあたり、巨大な朱塗りの鳥居が広い道路と空間を圧してそびえていました。 
この鳥居の中央部の高さを私の分度器測高器で測ることにしました。 測る位置をどのあたりに決めるかですが、見上げるような近い位置か、あるいは、ある程度遠く離れた位置から角度をとるのが良いのか迷います。  
たとえば、仰角40°から45°のtan値の差は0.16に対して、仰角20°から25°のtan値の差は0.10と小さい。 歩測の誤差よりも角度測定による誤差のほうがはるかに大きいから、ある程度は離れた位置に決めた。 まず歩測で調べ、同時に30cm四方の舗石の数でも距離の正確さを担保する。 
距離は45m。 仰角は25°であった。
鳥居の高さ=45m×tan25°+眼高1.5m=45×0.466+1.5=22.5m
結局、22.5mとでました。

次に、自分の腕を前に突き出して手巾が鳥居の全高と一致する場所を決め、歩測しますと距離が55mありました。 
見ろよ(364)、20cmの手巾で遠き物」をつかいます。
鳥居の高さ=55m×tan20°=55×0.364=20.0m   結局、20m とでました。
ネットで、「平安神宮大鳥居」、を検索して高さを調べますと、24.2mと書いてありました。
実際よりも、私の測定値は小さかったわけですが、おそらく、せり上がった鳥居の両端の高さまでが全高とされているでしょうから、中央部よりも仮に2mほど加算すると、私の測定値はほとんど一致します。 すごいですよね。

⑥ 電柱
最後に、自宅ちかくの電柱の高さを、「簡易法(のり)面角度器」で測りました。
電柱からの距離を例の細ひもを使い、10mの位置を決めて、仰角を測りました。 計器の気泡の示す値が仰角です。 51度ありました。
電柱の高さ=10m×Tan51°+眼高1.5m=10×1.235+1.5=13.85m
電柱の標識には16の数字が記されているので、地上部の高さは16-2.5=13.5mのはずですが、私の計測はまずピッタリだったといえましょう。 めでたしめでたし。

                             (第7話 おわり) 2011.08.31 記

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                私の簡易計測用備品です。

補遺  
中学教科書から
2012年の夏、あるきっかけで、市内の中学生が使用する数学教科書を1年生から3年生まで3冊を勉強し直した。 その時、東京書籍「新しい数学③」の三角形の相似の条件とその利用のくだりに、今回の私のテーマに関係した記述(p.125)を見つけ、 大変興味深かったのでここに一部紹介をしておきたい。

おもしろいと思った方法は、日光による影の利用と、写真の応用であり、いずれも相似する図形の性質をうまく活用している。

例えば野原やホテルの広い芝生庭園に一本のヒマラヤシーダが植わっていたとする。 天気が良くて樹の影が地上にくっきりと映っていたならば、その影の長さを歩測や巻尺で計り、あわせて自分の背丈を映した影の長さも測定する。
〈自分の身長〉:〈背丈の影の長さ〉=〈樹の樹高〉:〈樹の影の長さ〉
の計算で実際の樹高を求めることができる。

すでに高さが判っている物の影を時をおかずに測定すれば良いわけで、人物の影の長さよりも、例えば先述の電柱(13.5m)の影の長さを測る方法のほうが比較対象の高さの比が小さく、より正確な結果が得られる。 ただ、山中では、求める樹の樹影を平らな地面で見ることはまず不可能に近く、万一得られてもそれを街中の電柱の影と比較することなどはナンセンスであろう。

写真の場合は、樹に並んで人を立たせ、両者を写しこんだ写真を撮れれば、出来た写真に定規をあてて両者の長さを正確に読み取れば、同じく比例計算で樹高は求められる。 ただし、樹の高さはほどほどまででないと良い結果は得ずらいでしょう。






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by mamorefujiwaraMT | 2013-08-05 10:23 | いっぷく亭