初秋のハルザキヤマガラシ
                                    2015.10.03 

先月の9月15日に、ひさしぶりに藤原岳を訪ねた。 
4月・5月に抜き取りに精を出したハルザキヤマガラシの現在の状況を知りたくて、同行者一人と山頂部に向かった。

密生地各処のハルザキヤマガラシは、種を飛ばしたあとの白っぽい空きサヤの殻を天空にさらして枯れた茎を至るところに残していた。 また地表には、地中に残存している根茎から芽を出しはびこった緑濃い葉がりっぱに成長して張り付いていた。 これは実は専門家の論文によると、根から出たものばかりではなく茎基部から発生したロゼットによるものだと知った。 こうして、花からの種を飛ばして枯れ果てた春生えの草とは別に、秋は秋で害草はしっかりと緑の葉を地表に広げているのだ。
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種を出した後の白っぽい殻と枯れた茎を見せる春生えの密生地のハルザキヤマガラシ

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夏から秋に生育した花のない葉と根茎だけの害草    枯れた春生えと葉だけの秋生えの群生地


一方、抜き取ったあとの草の処理に我々は悩んだわけだったが、ビニール袋に収めて持ち帰りきれず、木の又や、岩上に放置してきた参加者たちの草は、伸びきった茎が木化し枯れた束になって風化していた。これはこれで結果的に良かったのだ。
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春に抜き取って岩の上などに放置されていたハルザキヤマガラシの残骸

赤布を四隅の樹木の枝に掛けて、徹底して害草を抜き取った実験の場所は、ご覧のとおり、幾本かの秋生えの草が出ていただけで、見かけのうえはきれいになっていた。 われわれは、その新しいハルザキヤマガラシをさらに抜き取って、岩の上に置き、石で抑えてきた。 来春、その実験地と岩の上の草の状態を観察したい。
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前回抜きとった実験地と、秋生えを取り除いた跡。 赤布が見える。


6月の種の成熟期まえの生殖繁殖の害草抜き取りに加えて、9・10月の花を摘けない秋生えの栄養繁殖の害草を抜くことを数年続ければ、その場所はハルザキヤマガラシの発生をかなりの程度防げるかもしれない。 このことは、数年間の観察を経てわかってくることで、即断はできない。
秋のハルザキヤマガラシは、葉を広げて栄養をたっぷりと根に蓄えているのかもしれない。
年に2回の抜き取りを実践することが、ハルザキヤマガラシ防除に効果があるような印象を今回は持った。 

当の山小屋周辺には、ハルザキヤマガラシの生育があちらこちらに散見された。 抜いていた方からは、新設のトイレ工事によって周囲が人為的に攪乱されたために害草が息を吹き返したのだという考えを伺ったが、私には、従来まったくハルザキヤマガラシの姿を見なかった小屋周辺にどのようにして害草が侵入しだしたかの側面を考えると、害草のまったくない展望丘までを往復する多くの登山者の靴などや工事の人為的攪乱もその原因ではなく、おびただしいシカの往来とか、密生地からの鳥による種子の伝播などが原因であり、根本の密集地が無理でも、少なくとも小屋に近い前衛地の絶えざる駆除を図らなければ、小屋周辺の害草の問題は解決しないのではないか、と思った。 小屋周辺だけに防除を限局したい気持ちはわかるが、孫太尾根上部の岩礫地にもハルザキヤマガラシは蔓延しだしていると聞く事実を想起してほしい。 あとで判明したが、これらも茎基部から発生したロゼットによる秋の栄養繁殖のハルザキヤマガラシであった。 
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小屋周辺の秋生えのハルザキヤマガラシ。 左写真の中央に2個、見られる。

だが、ハルザキヤマガラシは、セイヨウタンポポのように種の飛散が主因で蔓延するとも思えない。  りっぱな雨量計が新設されており、そこまで新しい車道が山頂に伸びてきている。 その道路の両側には早々とハルザキヤマガラシが根づいて葉を広げていた。 
そうかといって、ご覧のとおり、山頂部にはハルザキヤマガラシがひとつも見られない広大な空き地があちらこちらに見られる。イワヒメワラビもまったく侵入していない文字どおり不毛の地だ。 展望丘への登山道でも、小屋周辺ちかく以外にはまったく害草の姿がない。 私には全然理解できないような、なにか土地と草との間に謎にみちた〈相性の相違〉があるのだろうか。
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このような不毛の地がたくさんある      右は初秋の頂上部の風景


すくなくとも、セイヨウタンポポがどの空き地にも飛散して暮らすのとは違って、ハルザキヤマガラシは、特定の人為的な荒れた場所だけを好むことは事実のようで、下界では荒れた河川敷でしか姿を目にしない。 展望丘の頂上部はその人臭さから、小屋周辺同様に次の格好の生育地になるのかもしれない。 いや、山頂部で、誰も寄りつかないようなひっそりした岩だらけの周辺にもハルザキヤマガラシがしっかりとはびこっている場所は多い。 いよいよ私にはわからなくなる。

すでに文中に触れてはいるが、植物を研究しておられる方から、橘雅明氏による「東北地方における帰化雑草ハルザキヤマガラシおよびカミツレ類の生態と防除について」(東北農研研報 2011)という論考を紹介された。
これを読み、生殖繁殖の一年生のハルザキヤマガラシから栄養繁殖の多年生のハルザキヤマガラシへの移行という、環境に対応して生き残ろうとする外来害草の生活史の変更という戦略の実態を知った。 また、花だけを摘むような草刈り的な方法は、かえってハルザキヤマガラシを多年生のしぶとい害草に変えてしまうまずい結果を生むということも知った。 東北地方の圃場や田という環境での観察と藤原岳山頂の環境での結果はまた違ってくるのかもしれない。 即断はできない。

次回に、橘氏の論文からの私の理解と要旨を列挙してご紹介したい。
(藤原昧々 記)




ハルザキヤマガラシ情報 - 4


橘氏の詳細な専門論文を、門外漢ではあるが、筆者が読んで、一応、ブログ読者の方に要約したかたちで文章化させていただき、私の感想を記した。 
まずは「東北地方における帰化雑草ハルザキヤマガラシおよびカミツレ類の生態と防除について」の要約と抜粋です。

ハルザキヤマガラシは、原産地ではサラダ菜として食用のため栽培されていたが、その種子が逸出し野生化していた。
畜産飼料として輸入された外国産の濃厚飼料にその雑草種子が混入して日本に移入された。 家畜が飼料を食べ、その糞から日本での生育が始まった。あるいは、家畜の堆厩肥を発酵未純なまま圃場に散布し、日本国内に定着したのであろう。
蔓延した理由は、対抗する病原菌、天敵、競争相手などが日本では完全に欠落していたからであろう。
ハルザキヤマガラシは、東北地方では4月中旬に花軸を抽だいし、5月上旬から下旬に開花し、6月中旬から7月上旬にかけて果実が成熟し、その後に種子を散布する。(筆者註:この生活史は藤原岳山頂でのハルザキヤマガラシのそれとほぼ同じである。)
ハルザキヤマガラシは、著しい耐水性をもつ。2年間水中保存したハルザキヤマガラシの種子の30%は発芽可能
種子の伝播には、水流の関与が大いに推定される。そのため、河川や用排水路の周辺に繁殖しやすい。
東北全県には、1990年代に爆発的に拡散し定着してしまった。
ハルザキヤマガラシは有性繁殖(長角果に種子を付け散布する)と無性繁殖(根から生じる不定芽、ロゼット葉の葉腋から生じる脇芽、茎上葉の葉腋に形成される茎上ロゼットの芽などからの発育)という多様な生活史を示す種として知られる。
春の発芽個体は有性繁殖であり、二年生として生育・繁茂する。
秋の発芽個体は栄養繁殖であり、冬性一年生として生育する。
茎が刈り取られたり、種子散布をした茎が枯れると、茎の基部につく新しい芽からロゼット葉を発達させる。 
刈り取りの損傷が、栄養生長から生殖生長への資源分配の変更を遮り、親個体からの再生を増加させる現象がみられる。 花の形成が妨げられると、生殖生長から栄養生長および新しいロゼットの形成に移行しやすい。 
そのため、刈り取りなどの人為的攪乱によって次年あるいはそれ以降に開花が延ばされると、ハルザキヤマガラシは多年生として生育する場合が多い。
だから、それぞれの個体が種子繁殖によるのか栄養繁殖によるのかを調査する必要がある。 すなわち、生活史の変動、および根の断片の生存能力を調査する必要がある。
茎を刈り取っても、半分以上のハルザキヤマガラシは、茎基部に新しいロゼット葉を形成する。
ハルザキヤマガラシは、主茎がなくなっても、ロゼットを複数年にわたって形成し、多年生の性質を示す。
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春に開花する有性繁殖のハルザキヤマガラシと、その秋の種子散布後の枯れた草

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無性繁殖の秋のハルザキヤマガラシと、抜き取った個体

したがって、草刈り回数が多いほど栄養繁殖を促し、生存率は高くなる。圃場での草刈りは、ハルザキヤマガラシの生育相を生殖生長から栄養生長に移行させ、同種を一年生から多年生植物に誘導し移行させて生存率を高め、生き残りしやすくする結果を生む。
圃場でのハルザキヤマガラシは、このように、ふたつの異なる管理作業(耕起と草刈り)に対応するため、種子繁殖と栄養繁殖とに生活相を変更して生き残る戦略をとる
根の断片の萌芽率は、乾燥と腐敗には弱い。 土壌が適度に湿った状態が最適である。
ハルザキヤマガラシの防除には、拡散経路を確定し、拡散経路の遮断を試みる必要がある。
                                (以上)

この論考を私に紹介してくださった、畏敬するある植物研究者は、こんな推論を私に語られたことがある。
藤原岳山頂で昭和の初期以前に、家畜の飼育がなされてはいなかったか。 輸入された飼料の使用が、山頂でのハルザキヤマガラシの発生をみたということはないのか。
ハルザキヤマガラシは、標高的に高いところから低い場所に蔓延した。
雨や雪解け水が、ハルザキヤマガラシの種子の伝播に関係しているようだ。

以下は筆者の私見です。
藤原岳山頂でかつて牛馬の飼育が行われたという事実は、現地古老の証言にはなかったし、外国産の濃厚飼料が日本に輸入されて使用されだしたのは、筆者の家業がかつて飼料商でもあったし、知るかぎりでは農家での使用は戦後のことなので、この点はあたらないと思う。
やはり、セメント鉱山の開発と採掘において車両のタイヤが媒介したとしか考えられない。
種子の拡散に、雪解け水の介在はおおいにあったと、指摘されてみて思いあたる。
雪解け水が残りそうな場所にハルザキヤマガラシは繁殖していそうであるし、何の植物も生育していない不毛の地は、周囲よりも小高い乾燥しやすい空き地のように思われる。ハルザキヤマガラシの根は乾燥に弱いし、荒地に生育し北部鈴鹿山系にも多いシダのイワヒメワラビも陽地から半陰地を生育の場とすると図鑑にあるが、乾燥し過ぎる場は避けるのかもしれない。
雨量計への新しい道路が山頂にできていたが、道路は周辺より低地になり、車両のタイヤも入ればハルザキヤマガラシの種子は容易に侵入する。

今のところ想定される私たちのハルザキヤマガラシの防除方法は、以下のようなものになるだろうか。 もっとも何年かの観察と試行錯誤がその前提になるのだが。

5月の開花期とあわせて10月ころの秋季にも再度、栄養繁殖のハルザキヤマガラシを根から抜き取ることが効果がありそうである。
蔓延されては非常に困る場所を特定し、そこへの侵入経路を抜き取り作業などで遮断する。
行政の方々は、登山者の目に入りやすい場所である、登山路や小屋周辺、休憩場所での繁殖を抑制したい意向なのかもしれない。 外見だけは大事にしたいお気持ちだろうか。
山荘の掲示ポスターには、作業する者の登山路以外への立ち入りを牽制したり、土地所有者にあらかじめ承諾を得よと無理難題が書かれている。 県が会社の承諾をとっておけば済むことである。
とは言っても、以前には山全体を蔽っていた美しい在来植物が激減か全滅してしまった藤原岳本体の現状を思うと、ハルザキヤマガラシの蔓延から藤原岳を守るべき貴重な自然はもう無いも等しいと言えるし、鉱区の拡張はどんどん進行するので、もう防除は無意味だと思っておられるのかもしれない。山頂は、下界と同じの、ドクダミ、オオバコ、イワヒメワラビ、ハルザキヤマガラシの広場に近いので、それも理解できる。

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山頂の小屋に掲示されているポスター(ダブルクリックで拡大)

県の同ポスターにも紹介されている、花だけを刈り取るという一つの方法は、ハルザキヤマガラシの多年生への変換をより促進し、害草をたくましくして、防除の手立てをより困難にするのかもしれない。

論考の著者も書かれているとおり、原産国での生育に関する知見だけでは防除は不可能であろう。東北地方の圃場とは異なる、藤原岳山頂という新しい環境でのハルザキヤマガラシの生育状況をもっと調査し皆で対策を講じあう必要がある。
(2015年10月05日 記)















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     藤原岳孫太尾根・三重RDB改訂版に記載された種
                             山脇和也


<はじめに> 藤原岳孫太尾根は太平洋セメントの開発からは野鳥の会の努力によりさけられたが、地元の土建業者による採石が進み、2015年までに標高500mまで西側斜面が削り取られることになっている。
それから先はまだ未定であるが、いなべ市は何らかの理由をつけて、許可をする可能性がある。
稜線の標高は600~800mなので以下の植物が大変な危機にさらされている。

CR種(10種)
 フキヤミツバ
 オオキヌタソウ
 ステゴビル(新)
 セリモドキ(新)
 シコクフクジュソウ(新)(alt600~700mに生育)
 アオスズラン(新)
 ヤセホタルサイコ(フジワラサイコ:芹沢仮称)(新)
 キンキマメザクラ
 ミノコバイモ
 チョウセンキンミズヒキ

EN種(8種)
 イチョウシダ
 ビッチュウヒカゲスゲ(新)
 イワツクバネウツギ
 ヒロハノアマナ
 イワタケソウ
 セツブンソウ
 ミスミソウ
 マルバサンキライ

VU種(12種)
 エダウチフクジュソウ(alt1000m以上に生育)  
 キクザキイチゲ
 シギンカラマツ
 ルイヨウボタン
 ヤマシャクヤク
 ヤブサンザシ
 イブキシモツケ
 ビワコエビラフジ
 ヒメフウロ
 トウゴクミツバツツジ
 イワザクラ
 アズマスゲ    
 ハシドイ   
 ツルガシワ

 以上、絶滅危惧種30種が孫太尾根の狭い地域に生育する。 CR種が10種も生育している特異な場所である。シカの食害や登山者の踏みつけにより多くの種が絶滅の危機にさらされている。一番の危機はいうまでもなく土建業者による採石であるが、この地域は是非とも特別保護区か特別地域に指定されなければならない。 しかし、地元いなべ市は全くの無関心。当の教育長は、藤原岳の自然のすばらしさを子供たちに伝えることもなく、「シカの食害や登山者の踏みつけを防ぐことは不可能だ。」という、よそごとのような回答しかしてこなかった。

 他に、孫太尾根にはイヌワシが営巣している。 また、日本で藤原岳南東部にしか生息していないカナマルマイマイという県指定の希少野生動植物種のカタツムリの仲間もいる。


 以下に孫太尾根を除いた藤原岳に生育する絶滅危惧種をあげておく。

CR種
ギョウジャニンニク、キバナノアマナ、ササバギンラン

EN種
アサダ、オヒョウ、タチハコベ、ヤマブキソウ(ホソバヤマブキソウ・セリバヤマブキを含めて)
 ヤマブキショウマ、コフウロ、マルミノウルシ、メグスリノキ、ヤマトグサ、カンボク、ホソバ
 ノアマナ、ヒロハテンナンショウ、ツクシイワヘゴ(いなべ市の低地、亀山市には群落あり)
 ヒメニラ(新)、ミヤマザクラ(新)、ミヤマチョウジザクラ(新)、サナギイチゴ(新)

VU種
エダウチフクジュソウ、アズマイチゲ、ミツバフウロ、テツカエデ、イワウチワ、サラサドウダン、タニジャコウソウ?、マネキグサ、レンプクソウ、タイミンガサ、ニシノヤマタイミンガサ、
 ムカゴツヅリ、ミヤマジュズスゲ、キヨズミオオクジャク(藤原町で記録あり)


                               2015.04.04 記











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# by mamorefujiwaraMT | 2015-10-02 15:22 | 会員 各種論稿
2015年4月下旬と5月上旬の花

藤原岳大貝戸道から山頂部までのあいだで、今年目にした草花の写真を紹介します。
花名は、順に下記のとおりです。 
もうすこし上手に花を写せないものか、という声が聞こえてきました。

4月26日撮影
カタクリ トウゴクサバノオ   シロバナネコノメソウ ヒトリシズカ   ニリンソウ ユリワサビ  
ミノコバイモ ヒロハアマナ 

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5月10日撮影
ギンラン コトウカンアオイ    イチリンソウ  エビネ

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# by mamorefujiwaraMT | 2015-05-13 18:08 | 花だより
          連休後のハルザキヤマガラシ

5月10日の作業の総括                       2015.05.13

〔経過〕
5月10日に今年第2回目の作業を行った。
現場へは、山荘から展望丘への登山路を凹部にいったん下がり、ゆるやかにまた少し上る地点から、左へけもの道をたどって入った。
私は、登山靴を脱ぎ、持参した運動靴にはきかえた。 晴天のもと、作業は約1時間半、総員5名でおこなった。
作業対象を、群落地と、丈低い半群落の場所の2箇所に決めて、それぞれに赤布を4本の樹木に付け、各約4~8m四方の内部をやってみた。
無数の芽だしをすべて抜き取り、丈のあるものは抜いてから極力根に付着した土を穴の部分に落として、土をならした。
地表には、ヒロハアマナやミノコバイモなど貴重在来種が散見されるなか、ドクダミやタチイヌノフグリなど下界の路傍にあるべき草花がびっしり隙間なくついていた。 ヒロハアマナは名のとおりおいしいのだろう。 丈が伸びるとシカが食べているようだ。 ハルザキヤマガラシは苦味がつよいのでまったく食べてくれない。 とは言え若葉は生でも食べられたし、熱さえ加えればかなりおいしい食材になるだろう。

前回4月26日に抜き取り、ビニール袋に詰め込んできた7袋を点検すると、内部の草ははやくも腐り溶けて量が半減していた。 参加者が、障害があったり高齢の女性だったため、後日他パーティーにゴミを降ろしてもらう予定で山荘の旧トイレ内に置いてきた。この件は、いなべ市教育委員会に話はつけておいた。
以下、当日得た感想を順不同で列記してみる。

〔注目点や感想〕
昨年の種子が周囲に落ちて発生したと思われる小さな芽だしが、この5月10日に無数に発生していた。 その数の夥しさをみると、花だけを摘みとる意義もそれなりに理解できる。 ふつう、群落の形成は、「花→種子生産→周囲への大量散布」の循環による結果と考えられるからだ。

これらの無数の小さい芽だしは、そのまま指で根もとをつかんでねじりぎみに引けば簡単に土も付かずに抜くことができる。すこし伸びたのはフォークの先で根のあたりを掻きながら抜くのも良い。 根の先まで完全に抜きとると同時に、根に付着する土を可能なかぎり少量にしたい。

ハルザキヤマガラシの根は土中に長く伸びており、その長い根の中途から続々と発芽している。根は、草丈の3-4倍もの長さで伸びていた。
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〔作業手順、方法〕
小さい芽だしは根から抜き、丈のたかい成長した株は花だけを摘み取る。

中央の広大な大患部はそっとしておき、山荘や登山道に近いところから、数年かけて実験的に作業するのが良いだろう。

抜き取り作業は、雪の消える4月初めから4月いっぱいまでの期間が良いようだ。草丈も低く起こす土も少量で済む。ゴミも量が少ない。 
5月に入って、ハルザキヤマガラシが成長してしまうと、根から抜くことによる土の穴も大きくなり、地表面の荒らされかたもひどくなる。地中で生きて待機していた種子がこれ幸いと出てくるかもしれない。だから5月ではもう遅いのではないか。 特に5月も中旬を過ぎると、抜けば土を大量に起こして地表を荒らしてしまう。抜かずに花だけを摘み取るべきだろう。
本体の根は残るから翌年にはまた生え出てくるが、少なくとも大量の種を生産して周辺に群落をつくることだけは防げる。花だけなら、ゴミも少量であり、女性グループでも下まで担ぎ下ろせる。

草の量が多い場合は、抜いた草を岩の上やビニールシートなどの上にいったん集めて枯らすのも一案。

害草を現地で焼却する方法を工夫したい。 会社が道路を使ってゴミを運搬する努力をしてくれると助かる。 
会社は、この害草の発生原因が会社の側にあることへの認識や理解がほとんど無いように思われる。

処理の方策が決まるまでは、基本的に、出たゴミは下まで持ち帰る。 
発生したゴミについては、当初は、袋内で草がどう変化するのか、現地での処理をどうしたらいいのか、を作業しながら模索する予定だったのだが、ゴミの一時放置(実験的でありずっと放置する心算はなかった)への強い批判を受け、方針を変更せざるを得なかった。

〔再度 感想〕
作業に係った様々な方々や中心の方々の情報と意見を、いなべ市の自然科学館か教育委員会などが主導して集約し、数年かけて実験的に作業し、藤原岳山頂部に適合する有効なハルザキヤマガラシ駆除の知見を関係者らが今後共有してゆくこと、これが最重要だ。
その場合、県や自治体の関係部署が慎重一点ばりの後ろ向きの規制をするのではなく、作業を実行して自らの意見や反省を得てきた者たちの発言に対し真摯に耳を傾ける姿勢を示して欲しいと願う。

私が最も疑問とすることは、なぜ一部山岳関係者や市・県の自然担当者たちが、私たちが呼びかける抜き取り作業に対して、反撥や規制、指導ばかりを優先するのか、ということだ。 
セメント会社が鉱山活動でカドミウム汚染を出したら、彼らは表向きには改善を会社に当然働きかけるだろう。  なのに、会社がハルザキヤマガラシ発生の元凶であることが明白であり、そのために国定公園の自然が台無しになっているというのに、なぜ彼らはその問題を会社に直接ぶつけないのだろか? ちいさなボランティアの活動を、国定公園が作業の結果、拡散汚染による害草蔓延のため破壊させられるという懸念ばかりをなぜ強調するのか? 大きい元凶の権威には沈黙し、気にいらない小さい団体の活動にばかり横槍を入れたがるのはなぜなのか? 釈然としない。

とにかく、こうした活動には、人間個人間、グループ間、部署間、地域間での違和、反撥、敬遠が信じられないほどつきまといがちである。 しかし、目標を見失ってはならない。 藤原岳の自然に脅威をもたらしている〈ハルザキヤマガラシ〉をどうするのかという共通目標一点に皆の目標をしぼって全員が協力していかなければならない。

〔今後への展望〕
山荘の北西周辺にまで害草は侵入しており、その拡がりは予想を越えるスピードだ。
驚きは山荘周辺だけではない。 孫太尾根上部にも点々と転移していると聞いた。 拡散が、数100mから1キロ以上も遠方に飛び越して現れるのは、いったいどういう種子の配布なのだろうか? 鳥や風による伝播なのか?  それにしても県下屈指の貴重植物の宝庫である孫太尾根までが帰化植物に汚染され始めているとは、問題の深刻さに絶句する。 

中央の広範な大患部には、手をつけることはやめる。 ここは、市・県なり国なりが国定公園の荒廃をどうくい止めるかの一定の方針を決め、予算と人出と期間を確保したうえで本格的に取り組むべき場所だ。
ボランティアのグループたちが対処できるのは、せいぜい前衛となる小患部や貴重な植物の集中した場所が対象となるべきだろう。

藤原岳山頂部がもしハルザキヤマガラシで全面的におおわれれば、この害草の運命もどうなるかわからない。抜き取りの作業活動そのものを非難された方の仰るとおり、蔓延した害草はいずれ絶滅し、のちに他の新しい多様な生態系が生まれるのかもしれない。ごくごくわずかな可能性で。

同じアブラナ科のセイヨウカラシナが、いなべ川や揖斐川の堤防や川原をおおうようになって久しい。全面黄色一色になる。しかし、セイヨウカラシナが自らの毒素で絶滅している例はまったく聞かない。
ただ、セイヨウカラシナのあとに、また順次、堤防の草花が現れては消え、堤防はいつも草花で多彩だ(帰化植物中心で)。 ハルザキヤマガラシも時期だけ咲いて、そのあとの期間は他のどんな草原植物が入れ替わり続けるのか? 既群落地での、夏、秋の季節の観察も必要だ。 どんな悪影響が出ているのかいないのかの調査だ。ハルザキヤマガラシは従来鉱区の周辺ですでに30年以上も大群落を誇って継続・繁栄してきた。いずれ周辺は下界の帰化植物が繁茂する多彩な外来植物園に化すだろう。藤原岳山頂部全体がおなじ〈外来種植物園〉になって良いはずがない。
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 ハルザキヤマガラシと有毒のバイケイソウ            付近図

                                       (記 藤原昧々)

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             連休まえのハルザキヤマガラシ

4月26日(日)に藤原岳山頂に登った。 晴天つづきで、気温も暖かかった。
同行9名。 半分は70歳代で、山頂への往復だけでそうとうな時間がかかった。
ハルザキヤマガラシは開花直前の蕾の状態で、連休ごろには黄色の花を咲かせだすだろう。

〔観察・反省・提言〕
日ごろから草花の生態に関心をもち、私は失格だが、草の微細な特徴や変化に目がゆく人でないと、この害草の全貌はとても把握できないであろう。 しかも何年もかけて観察をつづけないと。
ハルザキヤマガラシはいわば「悪魔」の害草だ。 駆除したと錯覚してもみごとにすりぬけて翌年にはまた変わらぬ状態で我々を嘲笑う。
小屋と登山道に近い、狭い場所を決めて、定期的にしっかりと実験し観察しながら継続しなければならない。昨年の我々の行動はゆきあたりばったりすぎて意味がなかった。 反省しきりだ。

大きな株の周囲に1cm以下の丈の無数の新芽が存在しているところがいくつかあった。昨年に種を落として新しく芽を出したものであり、その微小なものは手で抜けるので徹底的に抜きとった。

とかく大きな株のものは目につきやすくそれだけを抜き取りがちになるが、抜き取って基部の土を掘り荒らすよりも、花だけをちぎりとる方が良いかもしれない。 上部の花が無くなっても、成長するにつれ下部の葉のもとからまた新しい花が発生するので、後でふたたび次の花を摘み取る。 その株は根が残るので来年も出てはくるが、種子の大量伝播だけは防げるだろう。

ビニール袋に密閉することで、種子の生産と拡散は防げるが、そのゴミの山をどうするのか。
袋内の草はどの程度の期間でどのように変化をするのか。 現地のドラム缶で焼けるのかどうか、すべてが未知数であり経験してゆく対象である。

作業に人間が入ることで靴底に土中の種子がつき、ハルザキヤマガラシの拡散につながる心配は当然ありうるが、私はそこまで言うのならば、大量のシカ群による踏圧のほうがもっと可能性が高いと推測する。 シカはシカで同じようなルートを使って移動しているのだから、そのルートにそって害草が拡散するのは容易であり必至である。
一方、ハルザキヤマガラシが群生している近辺には、裸地そのものでありながらハルザキヤマガラシがまったく生育していない広大な場所がいくつもある。 そこはエサもなく、シカの通い道がないのかもしれない。 
作業者でない一般登山者が歩きやすくて気分のいい近辺の環境を歩き回ることはいくらでも想像できるが、この広場にハルザキヤマガラシはほとんど見られない。 人間の踏圧によりハルザキヤマガラシが著しく拡散するとは考えにくいが、作業にあたっては、十分な注意は必要だろう。

ハルザキヤマガラシの今の猛威は、セメント会社の車両のタイヤが元凶となって鉱区周辺にもたらされたものだが、その後の拡大には、ものすごいシカの群が関係している。 そのことを関係者も有識者もよく認識していながら、シカ害のほうにはとかくふれたがらない。

ハルザキヤマガラシの生態や駆除方法を実験的に把握するためには、まず適地をシカ防護柵で囲った上で、事細かく、抜いた害草と新たに出現した害草の数と状態を調べる必要があり、これはふつうの者の手にあまる高度な取組みになると思う。 できれば、新税の「環境税」を使って、地元の大学とか公共機関の専門家の指導のもとにやるのが望ましいだろう。

作業は、草が大型化しない4月中・下旬、せめて5月の連休期間までが適期ではないだろうか。
作業の労働量やゴミの量と、抜去にともなう土の荒れも大巾に軽減できるからだ。


〔作業上の注意点〕 ・・・ 前回投稿文と重複

私たちのわずかな体験と、26日当日入手できた複数の資料(下記から)を参考にして、以下のような注意事項を列挙してみた。

ただやみくもに作業をしても効果があがらないばかりか、むしろ逆効果をまねきかねない。
藤原岳山頂という他とは異なった場所での初めての暗中模索であり、適切な実験や経験と情報交換を重ねていかなければ手立ての真実はわからない。

小屋から最も手近な場所を決め、そこだけを毎年集中的にやってみる。
場所は小屋から見て展望丘への登山道より左側の丘。 小屋まえの広場から展望丘の左方の丘を見ると、前方にバイケイソウの緑の畑がはっきりと見えるが、その奥側の場所から。 
害草は南の三角点方向にかけて広くずっと蔓延しているが、まず手前で小屋への侵出をくい止めたい。 
展望丘への登山道を南へ下って少し上った地点から、在来の草を踏まないようにして丘に入り、登山道近くの繁殖地を選ぶ。
例えば、適当な木に布などで印をつけて半径10-20m範囲内などを共同作業場所に決め毎年やる。
その都度、作業をした位置と記録をとるのが望ましい。 結果を下記の「いなべ市教育委員会自然学習室」に後日ファックスなどで送る。

害草が集中している場所は、抜き取りをして地面を掘り荒らすよりも、むしろ花だけを切り取って袋に入れるほうが良いだろう。 ぽつんと単独に生えているのは根から抜き取ったほうがよい。 あとの土をならしておく。
採ったものはビニール袋(できればいなべ市指定のもの)に入れて密閉し、小屋近辺の指定場所に置く。 元気な人は下の駐車場まで持ち帰る。

在来の草花を踏みつけない。
靴底に付いた種を拡散させないために、あちらこちらへと移動しない。
靴の土などをきれいに落として帰途につく。 靴底カバー、スーパーのビニール袋などで靴を覆うか、靴を履きかえて作業をするのも一方法。

しかし、私は、限られた人数と回数の人間の踏みつけよりも、異常に殖えたシカ群の圧倒的な踏圧のほうがはるかに害草蔓延の原因をなしていると推測する。 シカ対策の遅れこそが蔓延の二次原因だ。 テントを張ったパーティーの話では夜間の間近なシカの跳梁跋扈に全員寝つけなかった程だという。 ただ人の踏み荒らしだけは極力避けるべきだ。


以下からの資料を参考にさせていただいた。
とくに藤原岳自然科学館館長安田喜正氏の報告書には学ぶことが多々あり、とても参考になった。大感謝。 

三重県農林水産部みどり共生推進課  Tel:059-224-2627  Fax:059-224-2070
いなべ市教育委員会自然学習室     Tel:0594-46-4311  Fax:0594-46-4312

                                                 藤原昧々 2015.04.28 記   





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